「耳血腫」と呼ばれる病気をご存知でしょうか。見た目にもすぐにわかりますが、耳の中側が腫れ上がってしまい、耳がいびつな形になってしまう病気です。今回はこの、耳血腫の症状と原因について解説していきたいと思います。
「耳血腫」と呼ばれる病気
犬の耳の病気「耳血腫(じけっしゅ)」。この病気の症状は、犬の耳の「耳介(じかい)」と呼ばれる部分が腫れ上がってしまう病気です。犬が頻繁に耳をかいていたり、頭を振るような仕草が多く見られる場合には、注意が必要かもしれません。
耳血腫は、この耳介の軟骨が何かしらの影響を受けてしまうことで、耳介の中で出血が起きてしまい、中に血液が溜まってしまうことで腫れ上がるようになってしまいます。命に関わるとまではいきませんが、放置しておくと様々な病気を引き起こす要因にもなりかねませんので、治療が急がれます。
耳血腫の原因とは
前述の通り、耳血腫は様々な要因によって引き起こされる病気です。一つとして考えられるのが、耳に対するダメージを受けた場合です。どこかに耳を強打してしまった場合に、耳の皮膚の内部で出血してしまい、耳血腫となってしまうこともあります。
また、他の犬や猫などと遊んだり喧嘩をしている最中に、耳に傷を負ってしまい、その傷口から細菌などが入り込み、炎症を起こしてしまうことでも耳血腫となる場合や、外耳炎などの病気を発症している場合にも、耳血腫となる場合があります。
頭を振る様子と前述しましたが、外耳炎などの病気を発症している場合には、耳の違和感から頭を振る様子が見られるようになります。その際に、あまりに頭を振っていると耳血腫を引き起こす場合も考えられるのです。
この他にも、血小板減少症などのような疾患を持っている場合、血が止まらない状態になり、血が溜まって耳介の一部が大きく腫れ上がってしまうことがあります。
耳血腫の症状について
耳血腫は、耳に傷を負うことでも発症しますが、上記の通り、外傷がない場合でも発症するものです。これは、耳介の軟骨が折れてしまうことで、軟骨の隙間から血液が混ざった漿液(しょうえき)が溜まってしまうためです。
耳血腫になって耳が腫れ上がってしまうと、犬は耳が気になるために触れられるのを嫌がるようになるでしょう。また、耳の内側がぶよぶよとした皮膚が盛り上がるようになり、見た目にも痛々しい感じになってしまいます。
とはいえ、痛み自体はそれほど強いものではないようです。しかし、耳に液体がたまった状態になっているため、耳、頭は重くなり、しきりに頭を振り続けてしまうのです。
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耳血腫を放置してしまうとどうなるか
耳血腫の症状を発症しているのに放置してしまうと、おおよそ3週間ほどで耳の中に溜まった血液の混ざった漿液が石灰化していきます。そして、耳介の軟骨がどんどん変形してしまうようになり、完治しても耳の形そのものが変形し、耳が非常にいびつな形状になってしまう場合もあります。
命にかかわるわけではないにしても、完治した時には耳が変形してしまう恐れもあり、また、変形してしまった形状によっては、別の病気を引き起こす結果にもなりかねません。
この別の病気というのも、耳の変形によって耳の入口が狭くなってしまい、結果として耳の中が蒸れやすくなってしまったりするため、外耳炎などの病気を引き起こしてしまうのです。
状態が悪化してしまった耳血腫は外科手術を行なっても、耳の形が変形してしまうため、耳血腫は早期に発見し、早期に治療しなければならないのです。
耳血腫は弱い痛みを伴う病気
耳血腫は前述の通り、弱い痛みを伴う病気です。強い痛みを伴うものであればすぐに気がつくことも出来ますが、犬はちょっとした痛み程度であれば我慢してしまいます。耳の形が変形してくるとすぐにわかりますが、初期症状で発見するには、飼い主さんの優れた観察眼が必要になってきます。
しきりに首を振っていたり、むやみに耳を掻きむしっているといった様子が見られるようであれば、念のため耳の病気を疑ってみても良いかもしれません。まずは、耳に触れても嫌がるか嫌がらないかを確かめるようにしましょう。
放置するつもりはなくても、初期の耳血腫であれば飼い主さんも発見が遅れてしまう場合もあるので、日頃からしっかりと愛犬の様子やスキンシップをはかり、異変がないかを確認するようにしましょう。
耳血腫の治療について
耳血腫を発症してしまった場合には、まず耳血腫になってしまった要因を解明しなければいけません。原因がわからなければ、耳血腫も回復していきませんので、耳血腫を引き起こしている要因を特定し、元となる原因を治療することが重要になってきます。
また同時に、耳血腫の症状を緩和するための治療も行われます。中に溜まってしまっている血液や漿液を取り除くため、注射器を利用して液体を吸い出す治療や、耳の変形を修正するために外科手術が行われる場合もあるでしょう。また、炎症や感染が拡がっている場合も多いので、抗生物質などの投与も行われます。
耳血腫の術後は、再び耳をかきむしってしまったりすることがないよう、エリザベスカラー等を装着し、傷口が完治するまで安静にさせる必要があります。
耳血腫のインターフェロン治療について
耳血腫の治療を行なう上で、インターフェロンを用いた治療を行う場合もあります。インターフェロンによる治療は外科手術を行わずに治療が施せる反面、治療法自体は時間の掛かるものとなります。獣医師からの説明もあると思いますが、愛犬の負担を考えると、インターフェロン治療を選択するのが良い場合もあるでしょう。
インターフェロンによる治療は、患部に直接インターフェロン注射をし、自己免疫力を上げながら治療していきます。治療は3週間〜4週間ほどを要しますが、患部の状態をきれいに治すことができる場合も多く、犬への負担も少ないので、時間をかけてでも行なうメリットは十分にあります。
なお、インターフェロンを注射するタイミングは、約1週間に1回ほどの間隔となります。
耳血腫の治療費について
耳血腫の治療に関してですが、外科手術を行う場合には、おおよそ5万円前後ほどの治療費がかかってきます。一方、血液を抜くと言った治療になると数千円〜数万円ほどの治療費となります。
耳血腫の症状や状態、要因によっても治療法は異なりますが、あまりに状態がひどいようであれば外科手術を行わなくてはならなくなるため、費用面もそれなりの金額を覚悟しなければいけないでしょう。
早期に発見できれば抗生剤や注射による治療で住む場合もありますので、1万円以内で収まる場合もありそうです。
耳血腫の治療費に合わせ、併発している病気の治療費も加味する必要がありますが、その多くは数千円で収まるものでしょう。出来る限り早く発見し、すぐに治療を行うことが、犬にとっても飼い主さんにとっても助かりますね。
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耳血腫は完治した後も注意
耳血腫の治療に関しては外科手術以外にも、インターフェロン注射による治療などもありますが、最も大事になるのは耳血腫を引き起こした要因を発見することです。
先述の通り、元となる要因を治療しなければ耳血腫がまた再発してしまう可能性が高いため、いずれかの治療を行ったところで要因の特定ができていなければ、耳血腫を完治させても意味がなくなってきます。
耳血腫を引き起こした初期段階であっても、耳血腫を治療した後であっても、原因を特定し、その病気に対して早期治療を行なうことが重要なポイントとなります。完治したからといって安心せず、耳血腫を引き起こした要因が再び発生することのないよう、しっかりと注意するようにしましょう。
耳血腫を予防するために
耳血腫があまりに進行していれば、見ただけでその症状もわかるため、見落とすということはないと思いますが、初期の状態であれば、もしかするとすぐに気が付けない場合もあるかもしれません。あまりに耳を掻いている、耳をこすりつけている、頭をしきりに振っているといった行動は、普段の生活ではあまり見られない行動です。
普段の生活から、このような愛犬の病気のサインを見逃さないようにすることも大事でしょう。また、耳血腫にかぎらず、耳ダニや外耳炎、内耳炎といったように、耳の病気は耳血腫だけではありません。こうした耳の病気を発症している時にも、同じような行動が見られるでしょう。
愛犬の耳のケアをこまめに行うようにし、また、愛犬のちょっとした行動の変化にも気がつけるようになることが望ましいですが、なかなか耳掃除をさせてくれないといった子は、定期的に動物病院などに診察しに行き、耳掃除や他の部位の健康チェックも行うようにしましょう。
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