クッシング症候群は犬の病気ですが、どのような事で起こるのでしょうか?犬の健康な体を維持するのに欠かせない「ホルモン」ですが、このホルモンのバランスが崩れることで、犬の体に異常をきたしてしまうのがホルモンの病気ですが、その中のひとつ、「クッシング症候群」の特徴と症状、予防策について見てみましょう。

スポンサーリンク

ホルモンバランスが崩れることで見られる症状とは


クッシング症候群の原因を理解するためには、まずはホルモンと内分泌器官について理解することが必要となります。

聞き馴染みもあるこの「ホルモン」と呼ばれる物質は「内分泌器官」という場所で作られている「内分泌」のことを指します。

「内分泌の分泌量が崩れる=ホルモンバランスが崩れる」という事になりますが、ホルモンバランスはご存知の通り、健康な体を維持するのに重要なものであり、ホルモンバランスが崩れることによって、犬の体には様々な悪影響が見られ始めます。

そして、内分泌を作るこの内分泌器官と呼ばれる部位は「膵臓」や「甲状腺」「副腎」「卵巣」「精巣」など、体の様々な部分にあり、それぞれが大切な役割を果たしています。

甲状腺も病気の原因に

一見して非常にわかりにくい、このホルモンバランスの状態。ホルモンバランスが崩れだすと、主に「脱毛」といった症状や、「太る・痩せる」といった症状が見られ始めます。また、「水を多く飲む」「おしっこの量が多い」など、普段から注意してみていれば気づくことができそうな症状も見られます。

これらの症状は、ホルモンバランスが崩れたことによって、ホルモンが過剰に分泌されている、もしくは分泌が過剰に減っている事で引き起こされている症状で、犬の体にこのような状態が見られる時には、内分泌器官の異常が疑われます。

それが甲状腺であれば「甲状腺機能亢進症」といったように、その内分泌器官の箇所によって、病状や病名、対処法も変わってきます。

ホルモンバランスが原因で発症するクッシング症候群とは


ホルモンバランスが崩れていることによって引き起こされる病気に「クッシング症候群」という病気があります。

このクッシング症候群は「副腎皮質機能亢進症」とも呼ばれ、副腎皮質と呼ばれる場所が作るホルモンのひとつ「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」の過剰分泌によって起きるホルモンの病気です。

クッシング症候群の症状

ホルモンの病気の代表格とも言える「糖尿病」ですが、クッシング症候群にも似た症状が現れます。

ホルモンが原因となる病気の特徴でもある「水を異常に飲む」「おしっこの量が多い」という症状に加え、御飯の量は通常通り食べていても、どんどん痩せていってしまう症状や、今までとは違って活動的でなくなるといった症状もクッシング症候群を引き起こすことで見られるようになります。

この他にも皮膚に症状が見られる場合もあり、「皮膚が黒ずむ」「脂っぽくなる」「皮膚が薄くなる」といった症状が現れる場合もあります。皮膚がところどころ黒ずんでいたり、シミのようにも見えるのが特徴的です。

中でも、クッシング症候群の症状で特徴的なのが、「脱毛していく」事と「お腹が膨らむ」症状です。

下垂体性は90%の確率

クッシング症候群は大きく2つの種類に分けられます。

一つは「下垂体依存性副腎皮質機能亢進症」と呼ばれるクッシング症候群で、単に「下垂体性」とも呼ばれることもあります。下垂体性のクッシング症候群の主な原因として自然に発症するという点が特徴となり、クッシング症候群を発症する犬の90%は、この下垂体性のクッシング症候群となります。

もう一つが「副腎腫瘍」を原因としたクッシング症候群で、副腎が腫瘍化してしまったために引き起こされるクッシング症候群です。おおよそ10%はこの副腎腫瘍が原因となっているクッシング症候群です。

クッシング症候群を発症した90%の割合が下垂体性のクッシング症候群ということですが、クッシング症候群に至るまでには、何かしらのサインが出されているため、飼い主さんとしても注意深く観察しておかなければなりません。

医原性のクッシング症候群も

種類に分けるまでではありませんが、何かしらの病気で治療を行った結果、クッシング症候群を患ってしまう医原性のクッシング症候群もあります。

例えば、アトピー性皮膚炎などの治療を行うために、長期間に渡ってステロイド剤を使用していた犬が急に使用を止めた場合に、ステロイド剤の副作用で「医原性」のクッシング症候群を引き起こしてしまうといったケースです。

このケースでは「医原性クッシング症候群」と呼ばれ、ステロイド剤の使用を徐々に減らしていくといった治療・予防策が必要となります。

一つの病気を治療するために、他の病気を引き起こす結果となってしまうため、飼い主さんとしてもある程度、羅患している病気に対しての知識も持たなければいけない例と言えるでしょう。

スポンサードリンク

食事の管理をしても変わらない場合も


クッシング症候群の特徴的な症状である脱毛は、頭と尻尾を除いて左右対称に脱毛していくといった、特徴的な症状が見られます。

また、「お腹が膨れる」状態は、脂肪と肝臓にできた腫瘍が大きくなることで、あきらかにお腹だけがぽっこりと膨らんでしまう状態が見られますので、見ただけでもすぐにわかるでしょう。

クッシング症候群の症状では食欲の増加も見られるケースもあることから、肥満体型になってしまったと勘違いしてしまう場合もあります。給餌量でコントロールをしてもなかなか効果が見られなかったり、フードをあれこれと変えて試しても効果が見られない場合、クッシング症候群を疑ってみても良いかもしれません。

このように、普段からしっかりと健康管理をしていても、ホルモンバランスの乱れだとなかなか発見がしにくい症状なのが、クッシング症候群の特徴でもあります。

合併症を起こす事も

クッシング症候群のこうした症状に加え、免疫力が低下してしまうことで感染症を併発し、「白内障」や「皮膚炎」、「膀胱炎」などを発症する場合もあり、場合によっては「糖尿病」も併発してしまいます。

こうした病気を併発することで、さらに病状が悪化し、治療が遅れていってしまうと最悪の場合、命にかかわる事態になってしまいます。どの病気にも言えることですが、初期症状の段階で見つけられる事が、とても大事になってきます。

クッシング症候群の原因と予防策とは?

クッシング症候群の原因は、「炎症の制御・免疫の反応」や「炭水化物を代謝する」など、体の様々な部分に影響を与えている「副腎皮質ホルモン」の過剰分泌によって引き起こされることが原因となっています。

残念ながらクッシング症候群に有効な予防策はなく、投薬による治療がメインとなります。

早期発見・早期治療が一番の対抗策となりますが、年齢も高齢になるにしたがってクッシング症候群を発症する場合が多いので、「高齢による脱毛」や「高齢による皮膚の異常」と思ってしまう場合や、先にも挙げた食欲の増進による「お腹の膨らみ」と思ってしまう場合などと、非常に判断がしにくいので、それぞれの症状に当てはまるようであれば、一度、病院で検査をしてみても良いかもしれません。

検査と治療方法は?

しっかりとした措置が取られれば、命を落としてしまうということは心配しなくてもよいですが、糖尿病なども併発する場合が多い病気なので、長期間に渡っての投薬治療になる場合など、一生付き合っていかなければいけない病気にもなりえます。

クッシング症候群の一般的な検査方法は、血液検査による副腎皮質ホルモン値の測定になりますが、腫瘍が見られる場合は外科手術や放射線治療になる場合もあるようです。

発見が遅れがちなホルモンの病気

今回ご紹介したクッシング症候群など、ホルモンバランスの異常で発症してしまう病気を未然に防ぐには、日頃の健康管理はもちろんのこと、ちょっとした異常に気がつけるように愛犬の観察も欠かせません。

ただし、日頃からしっかりと愛犬を観察している飼い主さんでも、発見が遅れてしまう場合も少なくないのがこのホルモンの病気の見極めの難しさなのです。往々にして高齢の犬に関しては、年齢のせいかもと勘違いされることも多いようです。

ホルモンの病気を未然に防ぐためにも、日頃の食生活の管理はとても大事な要素になりますので、栄養バランスの取れた食生活を送り、ストレスの少ない環境を作る事を第一に考えましょう。また、ホルモンに関する知識を高めて、できるだけ早くに病気のサインを発見できるようにしましょう。

まとめ

ホルモン異常が原因で引き起こされるクッシング症候群。クッシング症候群に関わらず、病気にはなかなか初期症状が判断しにくい病気も多数あります。毎日のように散歩に行き、ご飯を与えていても、やはり気が付くことは難しいものです。

こうした発見のしにくい病気を未然に防ぐ溜めにも、最低でも年1回の健康診断が重要になってくるでしょう。狂犬病の予防接種やフィラリアの予防を行う際に健康診断を行っても良いでしょう。

病気も早期に発見できれば、すぐに処置して完治させることも可能です。

病気はいつ何時発症するかはわかりません。いつ発症するかわからない病気のためにも、常に飼い主さんが病気に対して油断せず、しっかりと健康診断を行うなどして予防線を張るようにしましょう。

スポンサーリンク