肥満細胞という細胞が腫瘍化して発症する肥満細胞腫。「うちの子は太っていないから大丈夫」と安心している飼い主さんがいたら大間違い!肥満細胞腫と言っても、肥満とは全く関係のないところで発症する腫瘍です。今回は肥満細胞腫について解説していきます。

スポンサーリンク

皮膚にできる腫瘍「肥満細胞腫」とは?

肥満とは言っても、肥満細胞腫の「肥満」は、体が太ってしまうことで起きる肥満とは別のもので、「肥満細胞」と呼ばれる細胞のことを指しています。

この肥満細胞と呼ばれる細胞は体中に存在している細胞で、主に「アレルギー」「炎症」といった症状に関係している細胞です。そして、この肥満細胞が腫瘍化してしまうことで、「肥満細胞腫」となってしまうのです。

肥満細胞が持つ物質の中でも、特に有名な物質が「ヒスタミン」と呼ばれる物質です。ヒスタミンは「血圧降下」や「平滑筋収縮」「血管透過性亢進」と言った、重要な働きをする物質でもありますが、肥満細胞腫を発症することで、逆にヒスタミンが様々な悪影響を引き起こしてしまいます。そのため、肥満細胞腫は「ヒスタミン誘発性腫瘍随伴症候群」と呼ばれる場合もあります。

「皮膚型」脂肪細胞腫とは?


肥満細胞腫には皮膚に脂肪細胞が発生する「皮膚型肥満細胞腫」と、内臓に脂肪細胞が発生する「内蔵型肥満細胞腫」の2つの種類にわけられます。

皮膚型肥満細胞腫は、真皮や皮下組織に発症する肥満細胞腫で、頭や首周りに脂肪細胞が発生していき、徐々に全身へと広がっていきます。猫の場合は、この皮膚型肥満細胞が多く、9歳から10歳の高齢期に入ってくると皮膚型肥満細胞腫を発症することが多いようです。

そして、同じ肥満細胞腫でも皮膚型肥満細胞腫の場合は、50%〜90%の確立で良性である場合が多く、単にしこりや脱毛といった症状が見られるだけで、徐々に脂肪細胞自体も消滅していく事が多いようです。一見すると虫刺されのようにも見える肥満細胞ですが、皮膚型の場合には悪性である確立も低いため、それほど心配する必要はないのです。

「内蔵型」肥満細胞腫とは?

50%〜90%が良性である皮膚型肥満細胞腫とは違い、内蔵型肥満細胞腫は悪性である可能性が高い肥満細胞であるため、注意が必要です。

内蔵型肥満細胞腫は、「脾臓」や「肝臓」「小腸」といった場所に発症する肥満細胞腫で、特に「脾臓」や「腸管」に肥満細胞ができると悪性である確立が高くなります。

内蔵型肥満細胞腫は内臓に肥満細胞ができるものですが、腹部に触れてみるとしこりがあるのがわかったりといったように、外見からも確認できる場合もあります。ですので、愛猫のちょっとした変化に気がつくためには、日頃からのスキンシップが大事なポイントとなるでしょう。

肥満細胞腫はこのように、肥満細胞が発生する場所によっても違いがあるのです。

肥満細胞腫の原因

2つのタイプに分けられる肥満細胞腫。皮膚や内臓と言ったように、肥満細胞が発生する場所は違えど、肥満細胞が発症すると言うことは共通しています。またそれぞれ、その見た目や発症部位、形態なども異なります。

実のところ肥満細胞腫を発症する原因は未だ解明されていませんが、基本的には高齢で発症することが多いようです。先述の通り9歳を越えてくると肥満細胞腫が発生する可能性も高くなるということが指摘されます。

また、肥満細胞腫の好発猫種には「シャム」が挙げられ、シャムは若齢で発症することもあることから、遺伝による要因もあるのではないかと考えられています。この他、「猫免疫不全ウイルス(FIV)」に感染していることでも、肥満細胞腫が発生すると考えられています。

スポンサードリンク

肥満細胞腫の症状

皮膚型肥満細胞腫の症状は、頭部や首の周りに、しこりや腫れといった症状が見られる他、脱毛や皮膚の炎症などが挙げられます。腫瘍が1ヶ所の場合がほとんどですが、体のあらゆるところに発症する場合もあります。

皮膚型肥満細胞腫は先述の通り、良性である場合が多く、転移などは認められず、時間が経つと自然消滅することが多いようです。

一方、内臓型肥満細胞腫は、初期の症状では下痢や嘔吐が見られますが、進行すると、食欲不振や元気消失、痩せてくるなどの症状が現れます。また、腹部を触るとしこりができていたり、痩せ細っているいるのに、腹部だけ膨らんでいるというような様子が見られます。

脾臓や腸管にできる肥満細胞腫は悪性である可能性が高く、転移することも多いため、早期発見が望まれます。

肥満細胞腫の治療について


肥満細胞腫の治療に関しては、腫瘍の悪性度のグレードによっても治療方法が変わっていきます。

3段階に分かれるグレードによっては、脂肪細胞種が転移する可能性も変わり、治療だけで済む場合もあれば、術後も治療を行う必要がある場合もあります。また、再発性も変わるため、早期に見つけることが出来るかで、完治できるか否かということにも関わっていきます。

悪性度が最も高い状態である場合、残念ながら再発の可能性は非常に高くなります。ほぼ確実に術後の抗がん剤治療を行う必要があり、こうした治療を行ったとしても完治することは難しいでしょう。

また、他の臓器などへと転移する可能性も高いため、脂肪細胞種以外の様々な病気を併発してしまうこともあります。

肥満細胞腫のステージと経過

肥満細胞腫は、その経過状態が3段階に別れると説明しましたが、経過の状態によって完治できるか出来ないかが大きく変わってきます。

悪性度が一番低い肥満細胞腫の段階では、他の場所へと転移する可能性も低く、肥満細胞腫が再発する可能性も少ないでしょう。また、治療に関しても外科手術を行うことで、ほぼ完治する見込みも高くなります。

肥満細胞腫の経過状態がもう1段悪性度が上がると、他の場所への転移の可能性も高くなってしまい、一度、肥満細胞腫を完治できたとしても、残念ながら再発の可能性も高くなってしまいます。治療に関しても、完治する場合もありますが、その多くは再発や転移によって進行してしまい、術後も治療を続けていく事が殆どとなってしまうのです。

経過状態が3段階目になると、先述の通り他の臓器への転移や、それに伴う病気の発生も起こってしまうため、予後としてはあまり良いとはいえないでしょう。

早期発見するための検査

猫にとっても、人間にとっても、腫瘍や癌は非常に恐ろしい病気です。病状が進行し、腫瘍が見つかってからでは遅いことも多いため、いかに早く腫瘍を見つけ、切除するかが大事になるでしょう。こうした事態を避けるためにも、最低でも年1回の健康診断を受けるようにしたいところです。

ついつい症状がでてから病院に連れていきがちではありますが、定期検診を行うことで、病気の予防にもなりますし、万が一の場合にも、かかりつけ医があるというのは、非常に安心出来るものです。1日でも多く、愛猫に長生きしてもらえるよう、日頃から健康チェックをする癖をつけましょう。

また、日頃からの愛猫とのスキンシップが非常に重要なポイントとなるのが肥満細胞腫です。しこりなど、ちょっとしたサインが見られるので、ちょっとした変化に気がつくことが出来れば、様子を見る前に検査を行なってみたほうが安心かもしれません。

スポンサードリンク

さいごに


肥満細胞腫に限らず、癌や腫瘍の症状を、いち早く見つけ、いち早く治療することが何よりも重要となります。ちょっとした変化がわかるよう、腫瘍に対しての知識を身に付けておくことが大切です。

腫瘍に対する知識をある程度もっていると、猫を触った時に「しこり」がある場合などは、悪性なのか良性なのかの判断は難しいものの、ある程度の状況判断はつくので、日頃の健康チェックに役立てられるでしょう。

飼い主さんがこうした知識・準備を身に着けておくことは、愛猫の健康管理にも大きな影響を与えることでしょう。どのような病気も早期発見・早期治療が重要となるので、こうした知識を身に着けつつ、日頃からのスキンシップを欠かさないようにしましょう。

スポンサーリンク