人間の病気でもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。犬にもヘルニアは存在しますが、いくつかの種類があるヘルニアのうち、今回は「鼠径(そけい)ヘルニア」の症状や原因、対応策について解説していきたいと思います。

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「ヘルニア」とは

人間の病気としてもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。犬の世界にもこのヘルニアは存在するのですが、一言でヘルニアと言っても「脱腸」の呼び名でも知られる「鼠径ヘルニア」や、「出べそ」とも呼ばれる「臍ヘルニア」など、様々です。

ヘルニアとは、通常であれば収まっているはずの臓器等が、体の「隙間」となる部分に押し出された状態になる病気で、これらのヘルニアの他にもいくつかの種類があります。

ヘルニアの症状は、臓器が飛び出してしまっているのが特徴なので、飼い主自身も見て取れる状態にあり、普段から愛犬とコミュニケーションを取っていれば気が付くことが出来ると思います。

一見すると平気そうにも見える事もありますが、ヘルニアの症状を放おっておいてしまうと、命の危険にもなりかねない状態になる事がありますので、注意が必要です。

「鼠径ヘルニア」とは


前述の通り、ヘルニアにはいくつかの種類があります。その内の一つ、鼠径ヘルニアの特徴は、足の付根の鼠径部(そけいぶ)と呼ばれる箇所にある隙間から、臓器が飛び出してしまうヘルニアで、症状が重症化することで腸閉塞などを引き起こす可能性もあるのです。

先天性・後天性いずれの原因が関係していますが、先天性である場合には遺伝が関係していると言われております。また、後天性である場合にも、鼠径部に何かしらの原因を持っている場合が多いようです。

また鼠径ヘルニアは、小型犬に多く見られるヘルニアのひとつで、特に子犬に多く見られる症状です。後述しますが、鼠径ヘルニアには鼠径部に何かしらの先天的な異常があるため引き起こされると考えられているため、成長段階にある子犬に多く見られるのです。

「腸閉塞」とは

鼠径ヘルニアの症状が悪化してしまうと「腸閉塞」といった症状を引き起こすようになります。腸閉塞とは、腸が塞がってしまった状態や、腸が狭くなってしまった状態になる症状の事を指します。

こうした症状を引き起こす要因には、鼠径ヘルニア等によるものや、腸内に腫瘍が出来てしまった場合など、何かしらの要因が関係しています。このほか、犬が異物を飲み込んでしまった場合にも、消化することが出来ずに腸内で留まってしまい、腸閉塞を引き起こしてしまいます。

腸閉塞の症状には、嘔吐を始め、食欲不振や下痢といった症状が見られます。しかし、症状が悪化してくると粘膜のうっ血が起き、血液が混じった下痢や嘔吐が見られるようになり、場合によっては命に関わってしまう自体にもなりかねません。

痛みを伴う膨らみ

鼠径ヘルニアを発症していると、犬の足の付け根あたりにしこりや、小さな膨らみが見られるようになります。この膨らみに触れると痛みがあるために、犬はこの膨らみに触れられるのを避けようとします。

ヘルニアは内臓が飛び出してしまう症状と前述しましたが、まさにこの膨らみが、犬の腸や膀胱・子宮といった内臓なのです。そのため、安易に押し込んでしまったりすると鼠径ヘルニアだけでなく、腸捻転などの重篤な症状を引き起こしてしまいますので、安易に押し込むようなことは避けましょう。

このように、鼠径ヘルニアの患部は内臓部が押し出され、垂れ下がってきている状態であるため、患部は痛みを伴うふくらみとして見られるようになります。

鼠径ヘルニアの症状

鼠径ヘルニアになってしまうと、便秘、もしくは下痢などの症状をはじめ、元気が無くなったり、すぐに休んでしまうといった様子が見られるようになります。また、食欲も落ちてしまい、嘔吐の症状なども引き起こされます。

しかし、こうした症状も原因となる鼠径部の隙間が小さければ、患部は腫れているものの、特に変わった症状が出ない場合もあります。この鼠径部の隙間が、症状の大小を左右していると言っても過言はありません。

とはいえ、症状が無いからと放おっておいてしまうのは危険です。やがては小腸などもヘルニアに入り込んでしまい、腸閉塞などを引き起こしてしまうのです。隙間が大きければ、よりこうした症状へと移行する可能性も大きくなるため、何かしらの対策が必要になるでしょう。

経過観察の診断も

鼠径ヘルニアの検査を行った所、経過観察と判断される場合もあります。この場合は、前述の通り鼠径部の隙間が小さかったため、経過観察を行なって症状が特にでなければ問題無しと判断される場合もあります。

特に子犬に多く見られる鼠径ヘルニアですが、子犬である場合では成長とともに鼠径部に筋力が付き、自然と内臓も押し返される形になり、自然と鼠径ヘルニアが無くなる場合もあります。

子犬が鼠径ヘルニアを持っている場合には、まずは慌てず、検査を行なってどの程度の隙間があるかを確認してもらうようにしましょう。また念のため、子犬を迎え入れる際にはヘルニアがあるか・ないかの確認を行ってみましょう。重篤なレベルでなければ問題はありませんので、まずは冷静に受け止めて検査を受けることが大切です。

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ヘルニアを引き起こす原因とは


では、なぜヘルニアの症状は引き起こされてしまうのでしょうか。その原因も様々あり、事故や強い衝撃、他の病気などによってダメージを受けてしまうことで裂けてしまう場合や、先天的な要因でヘルニアを引き起こしてしまう場合があります。

遺伝が関係しているとも言われる先天的な要因ですが、前述の通り、後天的である場合でも鼠径部に何かしらの原因や異常がみられる場合が多く、成長段階にある子犬が多く発症するのです。また、「ミニチュアダックスフンド」「ポメラニアン」「チワワ」「ミニチュアピンシャー」といった犬種に多く見られる病気でもあります。

とはいえ、成犬であっても腹部などに強いダメージを受けてしまうと、鼠径ヘルニアを発症する場合もありますので、高い場所から落ちた時や、何かしらのダメージを受けた後は、念のため検査を受けたほうが良いかもしれません。

鼠径ヘルニアの治療について

鼠径ヘルニアの治療に関してですが、患部の穴となる隙間が小さい場合には、様子を確認しながら、特別な治療を施さずに経過を観察していきます。症状が現れ始めている場合や、穴となる隙間が大きい場合には、外科手術が必要となります。遅かれ早かれ、症状も悪化してくるので、早い段階で手術を行ったほうが良いでしょう。

鼠径ヘルニアは、肥満になったり妊娠したりすると、ヘルニアも大きくなってしまう可能性があるため、将来的に繁殖を考えている場合には、早い段階での手術を考えたほうがよいでしょう。また、ヘルニアが小さく、経過観察を行っている場合も、肥満体型にならないような配慮が必要となります。

鼠径ヘルニアの治療費

鼠径ヘルニアの治療費に関しては、おおよそ5万〜10万程度と考えておきましょう。場合によっては数万円である場合もあるでしょう。

これは動物病院によっても変わりますが、鼠径ヘルニアの状態が軽度である場合には診察料で済む場合も出てきます。前述の通り、子犬であればなおさらに経過観察という診断が殆どとなりますので、何度か通院する必要はありますが、手術を行わなくてはならないレベルはそう多くはないでしょう。

とはいえ、鼠径部が縮まらない場合もありますので、その場合には手術が必要となります。また、手術を行う際に避妊手術を一緒にしてしまうという場合も多いので、獣医師とよく相談のもと、一度の手術で済むようにしていきましょう。

鼠径ヘルニアを予防するには


鼠径ヘルニアを予防する方法ですが、基本的には先天的に鼠径部の異常が問題となるため、予防策というものはありません。鼠径ヘルニアの予防というよりも、飼い主さんが鼠径ヘルニアについてしっかりと理解するようにし、ちょっとした異常にすぐに気がつくことが出来るようにするのが、理想的な予防策となるでしょう。

おなかがポコッと出ているので、すぐに気がつく症状ではありますが、気がついていないのと、気がついているのとでは大きな差もあります。特に子犬である場合には、迎え入れる元のペットショップでも説明がない場合もありますので、迎え入れる際にはある程度、飼い主さん側でも症状を把握できるようにしておきましょう。

場合によって手術が必要となる場合もあるので、気がつけるか気がつけないかの差は大きいでしょう。

まとめ

鼠径ヘルニアは、先天的な鼠径部の異常や、突発的なケガ等で発症するために予防することができない病気です。子犬を家族に迎え入れる際には、動物病院で一度検査を行うのが一番安心ではありますが、飼い主さんも子犬の体を確認するようにしましょう。その際に、しこりや膨らみが確認された場合には、再度、病院で検査するようにしましょう。

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