人間の病気でもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。犬にもヘルニアは存在しますが、いくつかの種類があるヘルニアのうち、今回は「臍(さい)ヘルニア」の症状や原因、対応策について解説していきたいと思います。

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「ヘルニア」とは

人間の病気としてもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。犬の世界にもこのヘルニアは存在するのですが、一言でヘルニアと言っても「鼠径ヘルニア」や「臍ヘルニア」など、他にもいくつかの種類があります。

このヘルニアと呼ばれる病気は、通常であれば収まっているはずの臓器等が、体の「隙間」となる部分に押し出された状態になる病気で、「出べそ」とも呼ばれる臍ヘルニアや、「脱腸」で知られる鼠径ヘルニアなどに見られるように、臓器が飛び出してしまっているのが特徴となる病気です。

ヘルニアの症状は、飼い主自身も見て取れる状態になるので、普段から愛犬とコミュニケーションを取っていれば気が付くことが出来るとおもいますが、ヘルニアの症状を放おっておいてしまうと、命の危険にもなりかねない状態になる事があります。

「でべそ」で知られる「臍ヘルニア」


「でべそ」の呼称で知られる臍ヘルニア(さいへるにあ)。ちょうどへその辺りが膨らむことから、こうした呼び名で呼ばれる病気ですが、実は症状が悪化してしまうことで腸閉塞などの症状を引き起こす病気です。

子犬は、生まれる前には胎盤で臍帯(さいたい)と呼ばれるものにつながれており、出産時にはこの臍帯がちぎれて誕生してきます。通常であれば出産後、1ヶ月ほどで子犬の成長とともにこの臍帯につながれていた穴は閉じていきます。この穴が「臍(へそ)」です。

でべその状態は、この穴が閉じずに、脂肪や腹膜が飛び出している状態になりますが、これが臍ヘルニアと呼ばれる状態なのです。また、生後半年程度まで塞がらない場合もありますが、これは特別異常なことではありません。

臍ヘルニアは小さい犬がなりやすい?

このように、臍ヘルニアは先天的な要因でのみ発症する症状ですが、臍ヘルニアになる原因は不明のままです。また、臍ヘルニアになりやすいと言われる犬種には、「シーズー」「ペキニーズ」「キャバリア」などの犬種が挙げられますが、比較的に小さい犬が臍ヘルニアを起こしやすいのでしょうか。

実はそのあたりもはっきりと分かってはおらず、臍ヘルニアの好発犬種には他にも「秋田犬」「アメリカンコッカースパニエル」「バセンジー」「エアデール・テリア」といったように、中型犬や大型犬なども挙げられます。ただし、あくまで好発犬種ですので、この限りではありません。

臍ヘルニアはどの犬種にも起こりうる症状であり、予防や気を付けなければいけないポイントというのもありません。

臍ヘルニアの症状

臍ヘルニアの症状は、穴が小さければ無症状である場合が多いです。とはいえ、出べその状態ではあります。しかし、この穴が大きければ脂肪や腹膜だけではなく、腸管が飛び出す場合もあります。

腸管がヘルニアから飛び出してしまうと、触診等で膨らみを押して戻したりという処置もできるのですが、元に戻らなかったり、すぐに出てきてしまうような状態であれば、腸管が締め付けられてしまうため、腸閉塞を引き起こしてしまいます。

さらに状態が悪いと、血行が塞がれてしまうためにショック状態を引き起こしてしまう場合もあるので、非常に危険です。

こうした状態になるまでには、元気の減退や食欲の減退といった様子が見られるようになり、腹痛や嘔吐の症状もあらわれはじめます。こうした状態になる前に、一度病菌へ診察に行き、臍ヘルニアの状態を確認してもらうようにしましょう。

経過観察という判断の場合も多い

前述の通り、臍ヘルニアは成長とともに穴が塞がれていく場合もありますので、幼少期の犬であれば触診で押し戻したりといった処置を施し、しばらくは経過観察を行う場合が多いです。生後半年未満であれば、特にこうした処置となるでしょう。

このように、臍ヘルニアに関しては特に心配しすぎる症状ではありませんので、万が一愛犬に臍ヘルニアのような症状が見られても、まずは落ち着いて動物病院で診察を受けるようにしましょう。

年齢によっては手術が必要であったりもしますが、基本的にはこのように経過観察を行い、年齢とともに患部が塞がるのを待つ事が多いのです。念のために、激しすぎる運動は避けたほうが良いですが、手術を行うリスクを考えるのであれば、少しずつ塞がるのを待つほうが賢明です。

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臍ヘルニアの治療について


臍ヘルニアの治療に関しては、患部を押し込んだりする処置が行われますが、こうして処置を行っても穴が塞がっていかない場合や、すでに腸閉塞の症状が現れている場合には外科手術を行い、臍ヘルニアを処置する必要があります。

臍ヘルニアは外科手術を行うことでしか完治することは出来ませんので、1歳を迎えても押し戻していたり、穴が塞がっていかないようであれば、外科手術を行う必要があるかもしれません。ただし、ヘルニアの大きさにもより、小さい穴であれば経過観察と言われる場合もあります。

後述しますが、臍ヘルニアの外科手術を行なったからと言って安心するのは少々早いです。手術を行い、抜糸するまでは安静にするようにしましょう。しっかりと傷口が塞がらなければ、別のヘルニアを発症してしまう場合もあります。

臍ヘルニアの治療費について

臍ヘルニアの手術には、おおよそ10万円程の治療費が発生してくることでしょう。動物病院にもよりますが、外科手術の他にも入院費も発生してきますので、10万円〜20万円ほどを予定しておいたほうが良いかもしれません。

また診察に関しては、何らかの処置が行われれば数万円の治療費が発生しますが、経過観察であればレントゲン代や診察料だけで住む場合も多く、1万円程度を予定しておいても良いかもしれません。

ただし、実際に診断を受けてみなければいけませんので、飼い主さんの判断で診断を止めたりせず、念のためにすぐに診断してみるようにしましょう。年齢が若ければ特に後回しにしてしまいそうですが、なんらかのはずみで重症化してしまう恐れもありますので、独自の判断は危険です。

臍ヘルニア以外にも注意

臍ヘルニア以外にも注意したい「ヘルニア」の症状があります。その一つが、何かしらの開腹手術を行なった後に、縫い目がしっかりと閉鎖しなかったことによるヘルニアの症状です。

この場合には「腹壁ヘルニア」と呼ばれますが、臍ヘルニア同様の処置や診断が行われるでしょう。術後はしっかりと安定するまでは激しい運動を避けるようにし、しっかりと縫い目が閉じきるのを確認するようにしましょう。

ヘルニアには緊急を要する場合のものもありますので、前述の通り、飼い主さんの判断でヘルニアの症状を見極めるのは危険です。腸閉塞などになれば、ショック状態になる事も十分考えられますので、まずは病院でどういう状態化を把握する必要があります。

避妊手術も兼ねた手術も

実は意外と少なくない臍ヘルニア。ペットショップ等で子犬を迎え入れる際には、一度確認をした方が良いかもしれません。通常であれば、店員側から臍ヘルニアであることを告げられると思いますが、年齢とともに塞がっていく場合が多いため、特に伝えられないという事もあるでしょう。

また、臍ヘルニアの手術を行う際には、同時に避妊・去勢手術を行う場合も多いようです。

これはあくまでも飼い主さんの判断になりますが、臍ヘルニアが幼少期に発症する症状という事もあり、また、避妊・去勢を行うのも早いほうが良いと言う考えから、一度の開腹で済ませてしまおうという事です。

犬にとっては1度の手術、1度の麻酔も体には負担がかかるものです。できるだけ手術の回数は減らしたほうが、犬のためにも良いでしょう。

まとめ


いかがでしたでしょうか。臍ヘルニアは決して珍しいものではありませんので、万が一、臍ヘルニアになっていても、驚きすぎないようにしましょう。

筆者の愛犬も臍ヘルニアを持っていた子がいましたが、後半は押し戻してもすぐに出てきてしまう状態でした。その後は臍ヘルニアの手術を行いましたが、のんびり屋と思っていたのが、術後は走り回るようになりました。これも臍ヘルニアの症状の一つである元気の減退だったのだと感じました。

なんとなく気になってるという飼い主さんは、一度、しっかりと病院で診察してもらい、状態を把握してみてはいかがでしょうか。

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