人間の病気でもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。猫にもヘルニアは存在しますが、いくつかの種類があるヘルニアのうち、今回は猫に多く見られる「横隔膜ヘルニア」の症状や原因、対応策について解説していきたいと思います。

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「ヘルニア」とは

人間の病気としてもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。猫の世界にもこのヘルニアは存在するのですが、一言でヘルニアと言っても「鼠径ヘルニア」や「臍ヘルニア」など、他にもいくつかの種類があります。

幸い、猫がヘルニアになる確立は、犬のヘルニアに比べると低いと言われていますが、このいくつか種類のあるヘルニアの中でも、猫が特に発症しやすいと言われているのが「横隔膜ヘルニア」と呼ばれるヘルニアです。

このヘルニアと呼ばれる病気は、通常であれば収まっているはずの臓器等が、体の「隙間」となる部分に押し出された状態になる病気で、「出べそ」とも呼ばれる臍ヘルニアや、「脱腸」で知られる鼠径ヘルニアなどに見られるように、臓器が飛び出してしまっているのが特徴となる病気です。

猫に多く見られる「横隔膜ヘルニア」とは


ヘルニアの症状は、飼い主自身も見て取れる状態になるので、普段から愛猫とコミュニケーションを取っていれば気が付くことが出来るとおもいますが、ヘルニアの症状を放おっておいてしまうと、命の危険にもなりかねない状態になる事があります。

前述の通り、ヘルニアにはいくつかの種類があります。その内の一つの横隔膜ヘルニアの特徴は、横隔膜が裂けてしまい、腹部に収まっている臓器が胸腔内へと押し出されるヘルニアです。

猫の体内では、「胸腔(きょうくう)」と呼ばれる肺や心臓を収めている部分と、「腹腔(ふっくう)」と呼ばれる胃や腸が収まっている部分があります。そして、この胸腔と腹腔を筋肉の膜で隔てているのが「横隔膜」と呼ばれるものです。横隔膜ヘルニアは、この横隔膜が裂けてしまうことで発症するのです。

呼吸が苦しくなる症状

横隔膜が裂けてしまい、臓器が胸腔内へと内臓が押し出されてしまうと、他の臓器を圧迫してしまう事になります。呼吸するのにも欠かせない臓器のひとつに肺が挙げられますが、この肺にも圧迫が加わってしまうこととなり、思うように呼吸をすることが出来ず、呼吸が苦しくなる等の症状が見られるようになります。

肺が圧迫されているために呼吸も苦しく、思うように体に酸素を取り込めなくなってしまうため、必要以上に動くのを嫌がったりといった様子も見られるようになるでしょう。子猫の段階であまりに活動的でない場合には、横隔膜ヘルニアを疑ってみても良いかもしれません。

こうした症状に加え、子猫である場合には発達障害といった症状も見られるようになります。

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横隔膜ヘルニアの症状

猫の横隔膜ヘルニアの症状ですが、上記に挙げたような呼吸が苦しいと言った症状の他にも、食欲の減退や体重の減少、さらには下痢や嘔吐といった症状も見られる場合もあります。

横隔膜ヘルニアは、横隔膜の裂け具合によっても症状が変わり、わずかに裂けている程度であれば無症状の場合もあります。しかし、あまりにも穴が大きく開いており、臓器への圧迫が強くなることで、その症状も重症化してしまいます。

具体的には上記に挙げられた症状以外にも、神経症状を伴う場合やショック症状、場合によっては心肺停止に陥る可能性も否めません。このように、横隔膜ヘルニアは穴の大きさによっても、その症状の大小が変わってくるため、十分に注意する必要があります。

ヘルニアを引き起こす原因とは


では、なぜヘルニアの症状は引き起こされてしまうのでしょうか。その原因も様々あり、事故や強い衝撃、他の病気などによってダメージを受けてしまうことで裂けてしまう場合や、先天的な要因でヘルニアを引き起こしてしまう場合があります。

中でも、猫に多く見られるのが外傷によるヘルニアで、1歳未満のやんちゃ盛りの猫が活発に遊んでいる時や、高い所に登って落下してしまった際にダメージを受けるなど、元気に遊び回るがゆえに、事故が起きてしまうケースが多く見られるようです。

先天的な要因による横隔膜ヘルニアには、ヒマラヤン等の長毛種の猫に多く見られると言われており、遺伝的な疾患が懸念されています。なお、長毛種の猫が持っているケースが多い事は言えますが、猫種が全てではありませんので、どの猫種でも起こり得るという事を意識しておくようにしましょう。

横隔膜ヘルニアの治療について

横隔膜ヘルニアの治療に関してですが、前述の通り、ヘルニア部分が小さく症状が無いような状態であれば、特別な措置を取らずに、様子を見ていくといった措置になります。実際にヘルニアに対する措置が取られる場合には、明らかに呼吸が苦しそうといったように、症状を発している場合に行われます。

特に、ヘルニア部分が大きかったり、症状が重症である場合や、猫が弱年齢である場合には、外科手術によって横隔膜を修復させる手術が行われます。また、ケガをしてすぐの状態や、命に関わるような状態に置かれている場合には、猫の救命措置を優先的に行い、猫が安定してきた時に横隔膜を修復させる手術を行います。

手術しない内科治療は?

手術に抵抗がある場合には、内科治療という方法もありますが、先天的なヘルニアである場合がほとんどとなるでしょう。さらに、症状が見られないようであれば経過観察となる場合が多く、内科治療を施すとなると症状が現れ始めている場合に行われることとなります。

ただし、こうして内科治療を施しても状態が変わらないようであれば、外科手術によって治療を行う必要があります。この場合の状態はあまり良いとは言えませんので、早急に処置する必要があるでしょう。

また、外傷性ヘルニアである場合では、症状が見られてからすぐに手術を行なうのは危険と考えられており、1週間以上開けてから、ある程度症状が落ち着いてからの手術が行われます。これは死亡率に関係しているためで、手術の影響が大きいと、猫が耐えられない場合が多いと考えられています。

ただし、1年以上開けるのも危険と言われており、この場合には臓器同士が癒着してしまうため、手術の成功率が下がってしまうことで死亡率が上がってしまう事が原因となります。

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横隔膜ヘルニアの手術に係る費用は?

猫の横隔膜ヘルニアを治療する際には、手術になるとおおよそ20万〜30万円前後ほどの費用が発生してくるでしょう。もちろん、動物病院よっても違いはありますし、症状によっても価格の前後は発生してきますので、あくまでも参考値として考えて下さい。

また、症状があまり重くはなく、経過観察で済むようであれば、検査費用だけで住む場合もあり、高くても数万円程度で済むでしょう。手術となると、手術費用に加え、入院に係る費用も発生し、術後の通院費用も発生してきます。

先天的な要因である場合には、ある程度は仕方もありませんが、外傷性ヘルニアである場合には、家庭内で同じような事態にならないよう、十分に気をつけるようにしましょう。

まとめ


特に猫に多く見られる横隔膜ヘルニア。猫の行動を考えてみると、なるほどと思ってしまう原因が挙げられますが、愛猫が横隔膜ヘルニアになってしまわないよう、こうした事故などが自宅内で起きないような環境作りをすることが大事になります。

とはいえ、猫は色々な場所へと移動しようと挑戦してしまいがち。そのため、本当に危なそうな部分へは入れないようにする工夫や、着地する床に絨毯などを敷いて、少しでも衝撃を和らげるなどの工夫が必要になるでしょう。

先天的な原因である場合には、避けることはできませんが、日頃からしっかりと愛猫とコミュニケーションを取っていれば、ちょっとした様子の変化にも気が付くことができる可能性もありますので、日頃から愛猫の健康チェックも兼ねて、スキンシップを計るようにしてみましょう。

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