「ノミ」や「ダニ」をはじめとした「寄生虫」による病気や症状は様々なものがあり、寄生虫による被害を予防するためにも、知識や予防策を知ることが大事になります。今回は猫の寄生虫のひとつ「フィラリア」による症状や予防法について解説します。

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「猫フィラリア症」とは

犬のイメージも強い「フィラリア症」ですが、猫にもフィラリアは寄生します。ちなみに、犬のフィラリア症の場合は「犬フィラリア症」と呼ばれ、猫の場合は「猫フィラリア症」と呼ばれます。
この「フィラリア」という寄生虫は「犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)」とも呼ばれており、成虫で約10〜15cm程の大きさになります。名前からもわかるように、犬が宿主となる寄生虫ですが、蚊を媒介して猫にも寄生することがわかっています。

また、フィラリアに感染しているかを確認するために「抗原検査」が行われます。しかし、猫フィラリア症の場合、抗原検査にかけても発見することが非常に困難なのです。犬に感染した場合はフィラリアが増殖するために、抗原検査で90%以上の確率でフィラリアを発見することが可能となりますが、猫に寄生するフィラリアは1匹前後と、非常に少なく、抗原検査を行っても、1匹前後となると、発見することが非常に困難となります。

このように、フィラリアと聞くと犬のイメージが強いですが、猫の場合は感染しても無症状、もしくは突然死してしまうという場合もあるため、犬に比べ発見が遅れる・発見することができない事が多いために、あまり理解が広がっていないのかもしれません。

犬とは異なる感染の症状

猫と犬のフィラリアが違う点のひとつは、フィラリアの成虫の寿命です。犬の場合は5〜6年なのですが、猫の場合は2〜4年と犬に比べ短いのです。一見すると、寿命も短くて影響も少ないように感じるかもしれませんが、猫のフィラリア症が恐ろしいのは、死滅したフィラリアの成虫による影響です。

この死滅したフィラリアの成虫によって、肺動脈を詰まらせて呼吸困難に陥ったり、虫体に対してアナフィラキシーショックを起こす場合があり、たとえ1匹のフィラリアに対しても、同様の症状を起こす可能性があるのです。犬の症状も悲惨ですが、猫の場合も急激に症状が現れる場合があるので、犬にとっても猫にとっても、非常に危険な寄生虫なのです。

また、猫の場合には、本来フィラリアが寄生する肺動脈以外にも寄生する事があります。これも犬とは異なる点ですが、猫の中枢神経系に寄生することがあり、神経症状を起こす場合もあります。

さらに、犬に寄生した場合はフィラリアが増殖するのに対し、猫では増殖ができないのも特徴です。しかし、たとえ1匹のフィラリアでも、猫の心臓や肺は犬に比べて小さく、十分に致命傷を与えることができるので、猫にとってフィラリア症が、いかに危険な寄生虫であるかがわかります。

フィラリアに感染するまで

フィラリアに感染するまでの経路には、犬を宿主としたフィラリアがミクロフィラリアを産むことから始まります。
フィラリアに感染している犬の体内で、フィラリアの成虫が幼虫を産むことで、やがて犬の血液中へと幼虫が浮遊するようになります。この幼虫が「ミクロフィラリア」です。そして、蚊がこの血液を吸うことで、ミクロフィラリアは蚊の体内へと活動の場を移します。

蚊の体内で成長するミクロフィラリアは、10日程で脱皮をし、感染幼虫へと変わります。そして、感染幼虫を持つ蚊が猫の血を吸う事により、今度は蚊の体内から猫の体内へと移動・感染し、猫フィラリア感染が発生するのです。

その後、寄生してから肺動脈へと到達するのに、おおよそ3〜4ヶ月を要します。この期間には、初期症状となる咳や下痢・嘔吐が見られます。また、「HARD(犬糸状虫随伴呼吸器疾患)」と呼ばれる症状があらわれはじめ、呼吸器以外の循環器にも影響を与えるようになります。

感染したフィラリアは、猫の肺動脈へと寄生しますが、その多くは肺動脈の末端部で死滅します。この時点で死滅したフィラリアは約5cm程度に成長しています。「HARD」が発症する原因も、死滅したフィラリアによるものです。

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猫フィラリア症の症状とは

そのほとんどが死滅するフィラリアですが、そのまま生き残り、肺動脈・心臓まで移動したフィラリアはここで成虫となります。この状態になると、猫は「慢性呼吸器疾患」を患うようになり、フィラリアの寿命となる2〜4年をほぼ無症状のまま過ごします。

そして、前述の通り、寿命とともに死滅したフィラリアの成虫は、肺動脈を詰まらせる原因となり、突如として呼吸困難やアナフィラキシーショックといった症状を発症、命を落とす結果となるのです。

万が一、フィラリアの予防薬を投与しておらず、また、猫の住んでいる状況にはよりますが、一般的には蚊が活動的になる春〜夏の時期にフィラリアへの感染が増えますので、このタイミングに加え、急な咳や嘔吐・嘔吐の仕草、食欲の減退が見られる場合は、フィラリア症を疑うべきかもしれません。

フィラリアの治療と予防策

猫フィラリア症を発症してしまった時の治療法は、フィラリア症の症状となる咳などの対症療法となります。犬の場合はフィラリアの駆虫薬投与がなされますが、猫の場合はアナフィラキシーショックを発症する場合も考えられるため、駆虫薬を使用しての治療はまれとなります。また、猫フィラリア症は、投薬による治療が難しいため、状態によっては外科手術をすることもあります。

フィラリア症は、手遅れの状態になる前に「フィラリア予防薬」によって未然に防ぐことができる寄生虫です。犬のフィラリア予防薬の摂取は、もはや当たり前のものになっていますが、猫への認知度はまだまだ低いように思えます。

フィラリア症の予防薬は、蚊が活発になるタイミングに合わせて毎月投与する形になりますが、住んでいる地域によってもその時期は変わります。かかりつけの病院があれば、毎年はがき等が送られてきますし、かかりつけ医がいなければ、近くの病院に行って摂取タイミングを確認してみましょう。

私達も室内で寝ている時に蚊に刺されるように、たとえ、自宅内にいても夏場は安心ができません。外に遊びに出さないからと行って、安心ができないのがフィラリア症ですので、猫を危険な目に合わせないためにも、こうした予防策は忘れずに取るようにしましょう。

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