「ペットフードの歴史」ってご存じですか?実は、犬や猫の歴史は古いものの、ペットフードが開発されてからまだそんなに日が経っていないのです。では、それまで何を食糧にしていたのでしょうか。今回は、ドッグフードの歴史について調べてみました。
昔の犬の食糧事情
ドッグフードの歴史ってご存じでしょうか。今でこそ、「プレミアムフード」や「グレインフリー」、「無添加」や「オーガニック」などという、ドッグフードにまつわる言葉が数多く出てきていますが、昔の日本では、犬も猫もペットを外飼いしている家庭が多く、ご飯に味噌汁をかける「ぶっかけご飯(ねこまんま)」や、家で食べた残り物が主流だった時代がありました。ペットは家族の一員となった現代では信じられない話ですよね。
実は、犬や猫も歴史こそは古いものの、ペットフードの歴史は意外と浅いようです。かつて狩猟が全盛期だった時代は、狩猟の獲物となった動物を、人間のおこぼれを貰いながら食べていたとも言われています。
その後、人々の生計が狩猟から農業へと移ると、肉だけでなく、農作物として獲れた野菜や穀物、果物や魚などを食べるようになり、犬は肉食から雑食へと変化していきました。
犬が必要とする栄養素
このように、長年に渡って人間と同じものを食べてきた犬たちですが、犬はそもそも人間と体の作りが違い、人間と同じものを食べ続けることによって、様々なリスクが発生します。
人間にとっては栄養のある食事も、犬にとっては必要な栄養素が得られないため、栄養失調になる原因になるとも考えられています。今でこそ、「グレインフリー(穀物不使用)」のドッグフードが当たり前となっていますが、犬にとって穀物は消化にも悪く、あまり必要のない栄養分と知られています。
しかし、人間にとっての穀物は、炭水化物として貴重なエネルギー源となりますよね。これが犬にとっては動物性タンパク質であり、穀物類はそんなに必要とはしていないのです。
では、ドッグフードはいつ頃開発されたのでしょうか。その歴史について解説していきましょう。
世界初のドッグフードとは
ドッグフードが初めて世に出てきたのは、今から150年ほど前に遡ります。
当時、ヨーロッパとアメリカでの間を行き来していた船乗りたちにとって、食糧の確保は何よりも大切で、その頃長期で保存ができるようなビスケットは、いつも航海をする際は船に持ち込まれていたようです。
しかし、そのビスケットはとても硬くて、あまり美味しいと言えるものではなかったようです。その証拠に、航海が終わると食糧として持ち込んでいたビスケットは波止場に捨てられていました。
しかし、それに群がる野良犬たちがビスケットを美味しそうに食べるのを見て、これは何かに利用できないかと考えた人がいたのです。それが、後にドッグフードを開発するアメリカ出身の「ジェームズ・スプラット」でした。
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初のドッグフードから、穀物主体のドッグフードへ
波止場に捨てられたビスケットに群がる犬たちから、犬用のご飯を作ることを思いついたジェームズは、1860年にイギリスで世界初のドッグフードを開発。ドッグフードを商品に事業化したのでした。
しかしながら、ドッグフードと言っても、当時は小麦に野菜と牛の血を混ぜてビスケットにしたものでした。10年後の1870年にアメリカに進出したスプラットは、「スプラット・オブ・アメリカ」を設立しました。
その後は、アメリカを中心にペットフード産業は発展していき、1907年にミルクビスケット、1922年には馬肉が主原料となった缶詰が登場し、ドライフードが発売になったのは1927年のことでした。
この後の1929年頃、アメリカで世界恐慌が起こることにより、人々は大不況に陥り、ドッグフードを安価にするため、原材料の生肉を減らし、穀物を増やしたドッグフードが販売されるようになりました。
日本での最初のドッグフードとは
初めて日本がドッグフードの存在を知るようになったのは、第二次世界大戦後、アメリカ軍がドッグフードを日本へ持ち込んだのがきっかけだと言われていますが、ただでさえ戦後の混乱で、人間用の食糧を確保するのもやっとの時代です。
日本で犬用のドッグフードが開発されるようになったのは、1960年になってからで、イギリスでペットフードの開発が始まってから100年も経った後のことでした。
それが、皆さんも御存知の現在の「ビタワン」。当時は協同飼料社から日本で初めてのドッグフードである「ビタワン」が発売されるようになったのです。
また、当時はホームセンターやペットショップもなかったこの時代、ビタワンが販売されていたのは、米穀屋だったと言われています。昔はお米屋さんの店先にビタワンの看板が掲げられていたそうです。
キャットフードは1970年代から
1960年代にようやく開発されはじめた日本のドッグフード。その後、高度成長期の煽りを受け、日本でもやっと競い合うようにペット産業が発展していきました。それまで残飯ばかりを食べていた犬たちは、ようやく犬用のご飯となるドッグフードを与えられ始めるようになったのです。
ちなみに、猫に関しては犬よりも発展が少し遅れており、昔は犬用のドッグフードを猫に与えていたようですが、そもそも猫に必要な栄養素が犬とは違っていることが分かり、1970年になってから初めて日本でもキャットフードが販売されるようになりました。
現在では犬と猫の必要栄養素が違うことが当たり前にわかっていますが、当時はまだまだ研究も進んでおらず、同じ動物というくくりで考えられていたのかもしれませんね。
現在のドッグフード事情
現在では、「犬種別」のものや、パピーやシニアなど年齢ごとに分けられる「ライフステージ別」、ダイエット用やアレルギー対応しているものや、原材料にこだわった「グレインフリー(穀物不使用)」、合成添加物を使用しない「無添加」など、ドッグフードはどんどん多様化しています。
また、2009年に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」が施行されてからは、ドッグフードは「量」より「質」や「安全性」が重視されるようになり、愛犬にとって健康機能を損なうようなドッグフードは取扱できなくなりました。
さらには、全てではないですが、使用されている原材料や添加物、原産国などをドッグフードに記載されるようにもなったのです。
ペットが家族の一員となった今、飼い主さんがドッグフードを吟味して選ぶようなった意識の変化が、このようにペットフード業界を変化させていったのでしょうね。
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ヒューマングレード
日本で初めてドッグフードが作られるようになった1960年代からおおよそ60年。今では「ヒューマングレード」と呼ばれる原材料が、やや主流になり始めてきています。
ヒューマングレードとは、人間が食べられる同程度の品質を使った原材料のこと。昔ながらの考え方で行くと、犬が人間と同等の物を食べるなんて考えられないかもしれませんね。
しかし、ドッグフードに利用されてきた「肉類」には、様々な問題も抱えており、とても食用としては利用できないレベルの「肉」が使われているケースも発生しています。
もはや、残飯のレベルを超えて、病気になってしまうような品質であるため、今ではしっかりと人間が食べられる品質の原材料を使っていることが、犬にとっての食の安全基準となりつつあるのです。
合成添加物を使用しないドッグフードへ
ヒューマングレード以外にも、犬にとっての安全基準が注目されるのが「合成添加物」を利用していないということ。
合成添加物には、着色料や酸化防止剤、保存料といった添加物が挙げられますが、これらは犬にとって栄養になるわけではなく、むしろ健康被害を引き起こす要因になるものも含まれるのです。
現に、アレルギーを引き起こす要因になるとの指摘もあり、現在では合成添加物を使用しないドッグフードが当たり前になりつつあります。
しかし、合成添加物を使用しない場合、どうしてもコスト増にもつながるために、日本ではまだまだ切り替えが進んでるとは言えない状況ですが、着実にその考えは広がりつつあります。今一度、愛犬のドッグフードの原材料を確認し、合成添加物が利用されていないかを確認してみるようにしましょう。
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