痒みや湿疹を伴う「アトピー性皮膚炎」。アレルゲンの特定が難しい病気の一つでもありますが、まずは症状の緩和を行うためにシャンプーによる洗浄を行うのがポイントとなります。今回はアトピー性皮膚炎の症状を緩和させる方法について解説していきます。

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原因の特定が難しい「アトピー性皮膚炎」


近年では犬のアレルギーも珍しいものではなくなってきており、その代表となるのが「食物アレルギー」による「アレルギー性皮膚炎」です。

主にドッグフードやおやつに含まれる、一部の原料に対してアレルギー反応を起こしてしまい、アレルギー性皮膚炎を引き起こしてしまうのですが、今回取り上げる「アトピー性皮膚炎」はまた少し違った原因になるものです。

犬のアトピー性皮膚炎は、「遺伝的な要因」である場合や「環境が原因」となるものなど、アトピー性皮膚炎を引き起こす要因は様々であるために、原因が特定できなければ早期の解決は見込めません。

環境が原因となる場合は特に突き止めるのが困難で、ストレスによるものもあれば、気温によるもの、また人間と同じように花粉によって引き起こされたりハウスダストが原因になる場合もあるのです。

症状を緩和させるために

アトピー性皮膚炎を引き起こすと、痒みと共に湿疹や乾燥肌を引き起こし、強いかゆみがあるためにかきむしってしまい、皮膚を傷つけてしまうといった連鎖が起きます。当然、かきむしってしまった患部は傷ついてしまいます。

アトピー性皮膚炎を引き起こす原因を突き止めなければ解決にはなりませんが、まずは症状に苦しむ愛犬を、少しでも楽な状態にしてあげるため、症状を緩和させる策が急がれます。そのひとつの手段がシャンプーを行うことです。

シャンプーを行うことで、体に付着しているアレルギー物質を洗い落とす効果や、皮膚の健康状態を維持するために、シャンプーに含まれる成分でバリアを張る効果などが見込めるため、アトピー性皮膚炎を発症してしまった際には、まずはシャンプーを行うことがおすすめの対応策となります。

とはいえ、どんなシャンプーでも良いというわけではありません。アトピー性皮膚炎を引き起こした際のシャンプー選びには、どのようなポイントをおさえておけばよいのか見てみましょう。

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選ぶのは「薬用シャンプー」


痒みを伴うような場合には、仕上がりが良いようなシャンプーではなく、「薬用シャンプー」と記載のあるものを選ぶようにしましょう。薬用シャンプーは、皮膚のトラブルを起こしている場合に、痒みを鎮めてくれる効果や、皮膚にバリアを張る効果に期待の持てる成分が配合されています。

動物病院で処方してもらうこともできますが、こうした薬用シャンプーは市販でも手に入りますので、愛犬の症状に合ったシャンプーであれば、問題なく効果を実感できることでしょう。

ただし、「合ったシャンプー」という書き方をしましたが、薬用シャンプーにもいくつかの商品が存在しており、中身の成分も各社様々な物が使用されています。愛犬の症状はどんな状態なのか、どのような成分が適しているのかを理解しておきましょう。

薬用シャンプーにも種類があります

愛犬の症状や体質に合った成分であれば、効果は期待できるものの、中には効果の感じられない薬用シャンプーもあるということは前述の通り。また、薬用シャンプーであれば問題は無いと思いますが、「低刺激」であるものを選択するのもポイントとなります。

特に、アトピー性皮膚炎に対して有効とされるのが「クロルヘキシジン」と呼ばれる成分。クロルヘキシジンは抗菌作用のある成分で、荒れてしまっている皮膚に対しても低刺激で、菌が繁殖しがちな荒れた皮膚でも使用しやすい薬用シャンプーです。

多くの製品は0.5%の濃度が通常とされており、低濃度であっても効果は十分にあるものですが、症状によっては更に高濃度な製品もありますので、症状によって使い分けるようにしましょう。

アトピー性皮膚炎とマラセチア症

アトピー性皮膚炎を患っていると、どうしても皮膚の抵抗力が低下していってしまい、治療の状態によってはどんどん症状も悪化していってしまいます。こうして症状を悪化させる要因となるのが、マラセチアと呼ばれる真菌の存在です。

マラセチア自体は本来、犬の体に住んでいる菌ではありますが、アトピー性皮膚炎などで抵抗力が低下していると、皮膚が極端に皮脂を分泌し、マラセチアが異常繁殖してしまい、アトピー性皮膚炎をより悪化させる手伝いをしていってしまうのです。

結果としてマラセチア症を引き起こすと、痒みや赤みが強くなり、より状態が悪くなると皮膚が黒ずんできます。また、皮膚はベタベタとした状態になり、臭いも強くなってきます。

マラセチア症には「マラセブシャンプー」

マラセチア症を引き起こすと、どんどんと症状も悪化していってしまうため、マラセチア症に対しての治療が必要となってきます。また、同時に根本となるアトピー性皮膚炎に対しても治療を行う必要があります。

マラセチア症に対して効果的なのが「マラセブシャンプー」と呼ばれる製品。マラセブシャンプーには、マラセチアに対して有効的なミコナゾール硝酸塩と呼ばれる成分と、クロルヘキシジングルコン酸塩と呼ばれる成分が配合されており、増殖してしまった菌を減らす効果を持ちます。

皮膚の状態が悪い犬は皮膚も荒れてしまっているため、マラセブシャンプーを利用する際には通常のシャンプーのように洗うのではなく、泡立てた泡を10分間ほど付けた状態にし、殺菌を行うシャンプーになっています。

薬用シャンプー「ノルバサン」

薬用シャンプーとして有名なのが「ノルバサンシャンプー」と呼ばれる製品です。市販で売られている製品で、「ノルバサンシャンプー0.5」という商品名で販売されています。

ノルバサンシャンプーは酢酸クロルヘキシジンを配合したシャンプーで、製品名にある「0.5」というのは、前述の通り酢酸クロルヘキシジンの濃度が0.5%という意味。

ノルバサンシャンプーは抗菌作用があるので、皮膚の荒れてしまっている犬に対して有効的なシャンプーで、子犬にも使用できる低刺激性のシャンプーとなっており、動物病院やトリミングサロンでも利用されることの多いシャンプーです。

日常的に使うことはできますが、あくまでも皮膚炎に対しての対処療法として考え、使用頻度に関しては、一度動物病院などで相談してみると良いでしょう。

「膿皮症」は状態によっても処置が変わります

アトピー性皮膚炎からマラセチア症を引き起こすこともありますが、「膿皮症」と呼ばれる皮膚病を引き起こす場合もあります。

膿皮症は発疹を伴う皮膚病の一つで、強いかゆみがあり、発疹を掻いてしまうことでさらに症状が悪化し、治療が長引いてしまうため、一度引き起こすとやや面倒な皮膚病ではあります。

膿皮症に対しても、前述のような薬用シャンプーが痒みを和らげてくれるため、有効的な治療法となりますが、膿皮症の症状が重症化してしまっている場合には、シャンプーのしすぎが逆効果となる場合もあるので注意が必要です。

場合によっては、シャンプー後の乾かし方が不十分である場合もあるので、シャンプーしただけで安心せず、最後までしっかりとしたケアを行うようにしましょう。

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お湯の温度やシャンプー後のケアにも気を使いましょう

実際に薬用シャンプーで洗浄する際には、お湯の温度にも気を使う必要があります。痒みを伴っている愛犬の皮膚は、非常に敏感になっているため、ちょっとした刺激に対しても反応してしまいます。そのため、おすすめの温度は25℃程度、高くても30℃以下にしましょう。

あまりに温かい温度のお湯を使用すると、刺激が強いだけでなく、かえって痒みが引き起こされるため、シャンプー時の温度調整は意外と重要な要素となります。特に冬場は寒暖差も激しいため、適切な温度が求められます。

また、シャンプーを行った後も注意が必要です。しっかりと乾燥を行ない、乾燥肌になっているようであれば保湿剤などで皮膚の保護を行ないましょう。シャンプーを行ってそのままにしていると、また状態が悪化しかねません。しっかりと最後までケアを行うようにしましょう。

薬用シャンプーはあくまでも緩和措置


こうして薬用シャンプーを使用し、保湿ローションなどでケアを行うのを、おおよそ2週間に1回のペースで行うようにします。また、シャンプーだけでは完治させることは難しいので、食事の面からも免疫力や皮膚の健康維持を行ない、内からも抵抗力を上げていく事が大事です。

この間にアトピー性皮膚炎を引き起こしている原因を追求し、必要に応じて動物病院などで薬を処方してもらうなどの対策を講じます。薬用シャンプーは一時的な緩和措置でしかありませんので、出来る限り愛犬が苦しまないよう、また症状が出にくくなるようにする事が目的となるのです。

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