犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。「ブル・マスティフ」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。

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ブル・マスティフとは

マスティフが60%、ブルドッグが40%の掛け合わせが理想と考えられているブル・マスティフ。

力強く怖い物知らずのマスティフと、一度噛み付いたら離さないという強靱な顎を持つブルドッグを祖先に持ち、両犬とも闘犬として名を馳せた歴史もあります。

そんなブル・マスティフは、護衛犬や番犬、戦時中では軍用犬として活躍していました。それだけ聞くととても獰猛な犬種と思ってしまうかもしれませんが、ブル・マスティフは顔に似合わず、温厚で優しい性格の持ち主です。

それでは、ブル・マスティフのルーツや一緒に暮らすための秘訣などを解説していきましょう。

ブル・マスティフのルーツ


19世紀の初め頃、イギリスでは暗闇の中、狩猟地を荒らす密猟者が続出しており、このような密猟者には重い刑罰が科せられていたので、密猟者は狩猟地の管理人を撃ち殺すことがしばしばありました。そこで作出されたのが、マスティフの力強さと、ブルドッグの獰猛さや強靱な顎を兼ね備えたブル・マスティフでした。

ブル・マスティフは、密猟者が近付いて来るのを静かに待ち伏せ、主人の指示によって襲いかかり、密猟者を殺傷することなく、主人が来るまで決して逃がさず、確保することが使命とされていました。この頃は、暗闇に溶け込めるように、ブリンドル(黒のまだら)の毛色が多かったようです。

その後、密猟者が減っていくことで、警護をする必要がなくなったので、温厚な性格に改良が重ねられ、家庭犬としての人気を博し、優しい色のフォーンやレッドのような毛色が増えていったようです。

1924年にはイギリスの愛犬家団体「KC(ケネルクラブ)」で公認され、1933年にはアメリカの愛犬家団体「AKC」で公認されました。

ブル・マスティフ以外のマスティフの種類

「マスティフ」には、ブル・マスティフを始めとした種類が幾つか存在しています。中でも単に「マスティフ」と呼ぶ際には「イングリッシュ・マスティフ」を指す場合が多く、マスティフの中でも最も知られたマスティフ種となっています。

また、日本産の闘犬と言えば「土佐犬」ですが、土佐犬を作出する際ににはイングリッシュ・マスティフも交配に使用されていたため、「ジャパニーズマスティフ」と呼ばれることもあります。

このほか、イタリア原産の「ナポリタン・マスティフ」やベルギー原産の「ベルジアン・マスティフ」、チベット原産の大型の「チベタン・マスティフ」など、マスティフにはいくつかの種類が存在しているのです。また、いずれも護衛犬や警備を役割としてきているのも、この犬種の特徴です。

ブル・マスティフの性格


ブル・マスティフは、普段はとても従順で温和、愛情深い性格を持ちますが、怖い物知らずで防衛本能が強いところもありますので、いざ自分の家族に身の危険が及んだ際は、過度なまでに家族を守ろうとするため、番犬や護衛犬に適しています。

見た目は強面で怖いイメージのブル・マスティフですが、家族に対しては優しく、献身的な性格も持ち合わせているので、子供の面倒も安心して任せられる犬種です。しかし、あくまでも従順で忠実なのは、飼い主さんや家族だけなので、第三者の命令に関しては聞き入れないところもあります。

ブル・マスティフは、一度信頼関係を築いた飼い主さんや家族に対しては、絶対的な忠誠心を持ちます。普段からアイコンタクトしながらコミュニケーションを取ると、従順な良い家庭犬になるでしょう。心を許した飼い主さんにしか見せない甘えん坊な姿は格別可愛いですよ。

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ブル・マスティフの被毛

ブル・マスティフは、「ダブルコート」の被毛を持ち、硬く短い毛の「オーバーコート(上毛)」と柔らかく密生した「アンダーコート(下毛)」の2種類の被毛で覆われています。
被毛のカラーは、「フォーン」「レッド」「ブリンドル」があり、いずれの場合も、ブラックのマズル(鼻先から口にかけた部分のこと)は必須になります。

被毛の手入れは比較的簡単で、汚れた時は、固く絞ったタオルで拭く程度で良いでしょう。また、年に2回の換毛期があり、その間は沢山の毛が抜けるため、犬アレルギーの人がいる家での飼育はあまりお勧めできません。

定期的なブラッシングをすることが望ましいですが、換毛期を迎えた時には、よりこまめにブラッシングをするようにし、常に清潔な体を維持させるようにしましょう。

ブル・マスティフがかかりやすい病気

【股関節形成不全】
股関節形成不全は、股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす大型犬に多い骨の病気です。
肥満体型は股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。

【胃捻転】
胃捻転とは、胃の内容物が発酵し、発生したガスで胃がパンパンになり、その胃が捻転してしまう病気で、大型犬に多く見られ、致死率も高い病気です。ついさっきまで元気にしていると思ったら、急にぐったりとするなど、早急に処置をしないと、最悪の場合死に至る病気です。
予防としては、食事の後しばらくは安静にさせることや、水のがぶ飲みは避けること、早食いさせない事など、十分に気を付けてあげましょう。

【進行性網膜萎縮】
進行性網膜萎縮とは、網膜が萎縮して正常に働かなくなる遺伝子の病気です。まず、視力が低下して夜に目が見えなくなり、そのうち日中も見えなくなり、最終的には失明します。
ブル・マスティフは、他にも「目瞼内反症」など、あらゆる眼科疾患にかかりやすいと言われているので、日頃から目のケアは欠かさず行いましょう。

短吻種のブル・マスティフ

ブル・マスティフを飼う上で気をつけなければならないのが、ブル・マスティフの特徴でもある「短吻種(目の前から口までの長さが短い犬のこと)」と言うことです。短吻種の犬種は、体の構造的に呼吸器の機能が弱く、麻酔を行う場合は若干リスクが高くなるので配慮が必要です。

また、短吻種の犬種は「体温調整が苦手」な犬種でもありますので、熱中症には十分気を付けましょう。そして、熱や気圧の変化にも弱いことから、飛行機での輸送を断られる場合があるので、飛行機を利用して旅行へ行く際は、予め航空会社で確認するようにしましょう。

ブル・マスティフは室内で飼いやすい?

ブル・マスティフの大きさは体重が50kg前後、体高は61cm〜68cmほどの大型犬。当然、大型犬種ですので室内にいるとその存在感の大きさで圧倒されてしまいますが、ブル・マスティフはあまり孤独な環境を好む方ではありませんので、飼育する際には家庭内で飼育することをおすすめします。

ただし、ダブルコートの被毛ですので抜け毛は発生します。前述の通り、犬アレルギーを持つ方は飼うことが難しいでしょう。また、こまめに掃除を行い、抜け毛をブラッシングで取り除く事も必要ですので、こうしたお手入れがおっくうだというかたも不向きです。

体も大きく、番犬としての悠々さを求めるのも良いですが、しっかりとこまめなお手入れを行えなければ、ブル・マスティフを飼育することは難しいのです。

ブル・マスティフの平均寿命は?

ブル・マスティフの平均寿命は、おおよそ8歳〜10歳ほど。寿命を全うさせるためには、幼少期から健康的な生活を送らせる必要があります。食事の管理はもちろん、適切な運動量、ストレスのない生活が大切です。

また、ブル・マスティフはオスですと60kg近くになる個体もいます。高齢期になって寝たきりになってくると、体を動かすのにも大変な思いをします。将来的にこうしたシチュエーションも考えて、しっかりとブル・マスティフの介護も行える人員や環境を整えることも大事です。

また、ブル・マスティフを動物病院へと運ぶためには、ある程度のサイズの車も必要になってくるでしょう。寝たきりの状態になってくると、クレートなどで運ぶことも容易ではなくなるため、ある程度スペースの取れる車があると良いでしょう。

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ブル・マスティフの飼い方のポイント

マスティフもブルドッグも、本来闘犬として長い間使用されていた歴史を持ちますので、それらの犬種を祖先に持つブル・マスティフも番犬として従事していたので、穏やかで大人しい性格に改良されたとは言え、攻撃性が全くないというわけではありません。

成犬になると、力の強さは成人男性でも手に負えなくなりますので、幼少期から徹底した服従訓練が必要になります。力に自信のない方、あまり気が強くないという方の飼育はお勧めできません

また、ブル・マスティフは警戒心が強いので、幼少期から家族以外の人間や外の環境などに慣れさせるようにし、社交性をつけてあげると、必要以上に怯えたり、吠えることも少なくなるでしょう。ペットとして飼育する際には、フレンドリーさを伸ばして上げる必要があります。

ブル・マスティフの値段はどのくらい?


ブルマスティフはペットショップなどでも見かける機会はほぼない犬種です。比較的マイナーな犬種ということもありますが、どちらかと言うと初心者向きの犬種ではありませんので、一般的なペットとしては飼育が難しいという理由も挙げられます。

そのため、ブル・マスティフを迎え入れる際にはブリーダーからの直販という形で迎え入れることになるでしょう。相場の価格としては、おおよそ25万円前後といったところです。高い個体でも40万を越えることはそう無いとは思います。

ブル・マスティフは一般的とはいえない犬種ですので、ブル・マスティフについて相談ができるブリーダーから迎え入れるのが理想的です。しつけ教室など、相談できる場所は必ず作っておくようにしましょう。

ブル・マスティフと暮らすために

ブル・マスティフは、見た目が格好いいからと、連れて歩けば自慢になるからと、安易な気持ちで飼育すると、後に大事故になってしまうケースもあります。

ミーハーな気持ちでブル・マスティフを迎え入れると、後々大変な思いをしてしまう事も考えられますので、十分にブル・マスティフの飼育方法や飼育環境、犬の性格なども理解した上で迎え入れるようにしましょう。

本来のブル・マスティフは、とても愛情深く、温厚な性格の持ち主です。しっかりしつけをして、愛犬と飼い主さんとの信頼関係を築けば、家族を守る頼もしい相棒となってくれるでしょう。逆に、しっかりとしたしつけが行えなければ、犬も人も不幸な状態になりますので、迎え入れる際には十分にしつけを行うようにしましょう。

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