盲導犬や警察犬、また、シープドッグと呼ばれる牧羊犬など、犬は私達の仕事や生活に、おおきく貢献をしてくれる存在でもあり、頼もしいパートナーでもあります。今回は、広大な草原で羊の群れを率いる牧羊犬について考えてみましょう。
牧羊犬とは
牧羊犬の歴史は古く、紀元前4000年くらい前から、トルキスタンや古代エジプトでは地層の中から、羊の骨と共に牧羊犬と見られる犬の骨が発見されてるようです。
牧羊犬(牧畜犬)は、元々は放牧されている羊や牛などの家畜を、オオカミや熊などの肉食獣や泥棒から守る見張り役を担うため、力の強い大型犬の方が需要がありました。しかし、時代と共に野生のオオカミが減少したり、家畜の管理体制が良くなったことで外敵からの被害が減ったため、散らばった羊の群れを誘導する時に、機敏に動けるような中型犬や小型犬が活躍するようになりました。
今では、羊の群れの見張りや外敵から守る力の強い大型犬は、「ガーディングドッグ(またはガードドッグ)」、羊の群れを集めて誘導する機敏さを活かした中型犬や小型犬のような牧羊犬を「ハーディングドッグ」と呼ばれています。
どんな犬が牧羊犬になれる?
牧羊犬は、一人前になると1頭で約600頭の羊の群れを率いることができるようになります。広大な草原で、600頭の羊の誘導を任された牧羊犬は、必然的に600頭もの羊の群れの周りを走ることになり、少なくても牧羊犬は、羊の2倍の距離を走らなければいけないため、相当な体力が必要になります。
また、羊はとても臆病な生き物ですが、中には牧羊犬に刃向かって来る羊や、無視する羊もおり、羊に無視されることで自信を喪失してしまう牧羊犬もいるようです。そうならないように、手のかかるワガママな羊に対しても、勇敢に立ち向かうことができる気の強さが牧羊犬には必要なのです。
そして、群れからはぐれて一人ぼっちになっている羊には、驚かしてパニックにならないよう、ゆっくりと羊に近付き、群れに戻るように誘導するのです。牧羊犬には、この咄嗟の判断と、冷静さが必要になるのです。
この条件を満たした犬を牧羊犬にするには、半年から1年ほどかかるようです。
牧羊犬に活躍している犬種
・ボーダー・コリー
・シェットランド・シープ・ドッグ(シェルティ)
・ジャーマン・シェパード
・オーストラリアン・ケルピー
・ウェルシュ・コーギー
・オーストラリアン・キャトル・ドッグ
牧羊犬と言えば、誰もが思い浮かぶのが、マルチな才能を発揮するボーダー・コリーでしょう。牧羊犬に必要な持久力と瞬発力を兼ね備えています。また、腰を落として睨みを利かしながら羊を操る技を持つ子もいるようです。
オーストラリアン・ケルピーは、羊の背中を駆け抜けながら羊の群れを誘導する「バッキング」と呼ばれる方法で羊を操ります。
ウェルシュ・コーギーやオーストラリアン・キャトル・ドッグは牧畜犬として、牛の踵(かかと)に噛み付きながら、牛を追い込む仕事をします。
ウェルシュ・コーギーが短足な理由は、牛の踵に噛み付きやすくするためであり、また、尻尾が短いのは、牛に踏まれないようにするためと言われています。
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牧羊犬の習性を理解する
牧羊犬は、知力だけでなく、肉体的にも精神的にもタフな犬種が多く、仕事を与えると忠実に、そして貪欲に働きます。しかし、逆を返せば、暇や退屈を嫌うため、高い運動能力や知的欲求を満たしてあげないと、ストレスがかかり、無駄吠えや噛み癖、破壊行動や車や自転車を追うなど、牧羊犬としての習性から、このような問題行動を引き起こす犬が多いのです。
「頭が良い犬は飼いやすい」と思われる方が多いと思いますが、牧羊犬が持つ頭脳や精神力よりも上回る知力やアグレッシブさが飼い主さんにないと、これらのような犬種を上手にコントロールできないのです。牧羊犬は、まさに「切れる刃物」ということでしょう。扱い方を間違えると大ケガをしてしまいます。
牧羊犬種を飼育するうえで気を付けること
牧羊犬種は、羊を守ってきたという習性から、神経質で警戒心が強い犬種が多く、見知らぬ人や犬などに対してよく吠えるということがあります。幼少期のうちから、色々な場所に連れて行き、あらゆる人や犬に会わせましょう。また、車や自転車が走るようなところでも、落ち着いて歩けるように慣れさせることが必要です。
運動能力の高さは、運動欲求の高さに繋がります。また、運動欲求の他にも、知力欲求も満たしてあげないと、ストレスから問題行動を引き起こすこともあるため、普段の近所の散歩やドッグランで走らせるだけでは、肉体的な運動欲求を満たすことができても、知的欲求は満たされません。そのため、広い敷地内で飼い主さんも一緒になってフリスビーで遊んだり、アジリティのようなドッグスポーツをするなど、身体も脳も刺激になるような運動を取り入れましょう。
また、牧羊犬種は知力が高い犬種が多く、訓練やしつけなどの吸収は早いのですが、反面、いたずらなどの悪いこともすぐ覚えてしまいます。幼少期から「良いこと」と「悪いこと」をしっかり教える必要があるでしょう。また、悪いことをしたからと、乱暴に扱ったり、威圧的な態度で接すると、神経質になったり、攻撃的な犬になることもあります。
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