猫に必要不可欠な栄養素の1つに「ビタミンK」と呼ばれるビタミンがあります。このビタミンKは、血液を健康に保つ働きと、骨の強化にはかかせないビタミンのひとつです。今回はこの「ビタミンK」について調べてみましょう。
ビタミンの脂溶性と水溶性の違い
「タンパク質」「脂質」「ビタミン」「炭水化物」「ミネラル」の5つが挙げられますが、これらに加えて必要な栄養素「水」を入れることで、6大栄養素とも言われます。6大栄養素は、生命を維持するために必要不可欠なもので、人でも猫でも同じ6大栄養素が必要となります。
6大栄養素の中のひとつ、「ビタミン」は猫の生命を維持するために必要な栄養素でもあり、猫の成長のためにも欠かせないものです。このビタミンは、脂に溶ける性質を持つ「脂溶性ビタミン」と、水に溶けて尿と共に排出される「水溶性ビタミン」の2つに分類されます。
ビタミンC等に代表される「水溶性ビタミン」であれば、水分に溶けるために猫が大量に摂取しても、尿とともに排出されるので、ビタミン過剰となることはありません。
しかし、ビタミンAなどの「脂溶性ビタミン」に関しては、尿と共に排出されることはなく脂に溶けるため、体内に蓄積される性質を持ち、ビタミンの過剰摂取となる場合もあります。
健康な血液を守る「ビタミンK」
脂溶性ビタミンの一つで、血液を健康に保つためには欠かせないビタミンが「ビタミンK」です。ビタミンKには3つの種類があり、以下の3種がビタミンKには存在します。
・ビタミンK1(フィロキノン)・・・主に緑黄色野菜などに含まれる
・ビタミンK2(メナキノン)・・・体内の微生物が作り出す
・ビタミンK3(メナジオン)・・・人工的に合成されたもの
このビタミンKの最大の役割には、血液の「凝固」に関わる働きがあります。その例となるのが、怪我を負ってしまい傷口から血液が流れてしまった時に、ビタミンKは止血を行うために血液を凝固させる働きをするのです。
一方、血液中では血栓などの症状を引き起こさないように、血液の凝固を抑えるという働きもしているのです。
天然のビタミンKとは
このように、ビタミンKは血液の循環を促すためにも、また流血してしまった時には血液の必要以上な流出を防ぐためにも、非常に重要な役割を担っている、健康な血液をコントロールするためのビタミンなのです。
ビタミンKには3つの種類があると説明しましたが、「天然」から得られるビタミンKは、野菜や海藻に含まれる「ビタミンK1(フィロキノン)」と、魚の脂に含まれる「ビタミンK2(メナキノン)」。
そして「ビタミンK3(メナジオン)」は天然には存在していないビタミンで、人工的に作られたビタミンKとなります。ビタミンK1、ビタミンK2よりも豊富にビタミンKを摂取できるビタミンK3ですが、過剰摂取は体に悪影響をもたらすため、避けなければいけません。
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骨にも大きな関わりをもつビタミンK
ビタミンKの働きは、血液に関するものだけではありません。それは、カルシウムやリン、様々なビタミンの働きから作られる骨の健康を守る働きをも行っているのです。
骨がカルシウムに沈着するためには、活性化されたタンパク質が必要になりますが、このタンパク質を活性化させるための1つに、ビタミンKが関係しています。また、骨からカルシウムが排出してしまわないように、逆にカルシウムが骨に沈着する際にも、ビタミンKが大きな役割を担っているのです。
血液にも関係があり、骨にも関係のあるビタミンK。まさに猫の体を支えるためには欠かせないビタミンだということがわかりますね。
ビタミンKが過剰になると?
ビタミンKは脂溶性ビタミンではありますが、過剰摂取に対する耐性が高いために、必要以上に過剰摂取の心配はしなくてもよいでしょう。ただし、これは冒頭で紹介したビタミンKの種類によるものです。
「ビタミンK1」「ビタミンK2」に関しては上記に述べた通り、過剰摂取の心配はありませんが、「ビタミンK3」に関しては、人工的に合成されたもので、他の2種よりも高いビタミンKを摂取することができます。
しかしその半面、過剰にビタミンK3を摂取してしまうと溶血性貧血の原因にもなりかねませんので、摂取量には注意が必要です。
一方、ビタミンKが不足してしまうと血液凝固の役割を持つビタミンのため、出血が止まらなくなるなどの影響がでてしまいます。
ビタミンKの欠乏症とは
ビタミンKが不足してしまうと、血液の凝固に関する働きが失われてしまうため、消化管や鼻、皮膚、脳など、様々な部位に出血を起こす要因となってしまいます。こうした状態が続いてしまうと、貧血を引き起こしてしまう要因にもなるため、油断はできません。
また万が一、猫が傷を負ってしまった場合にも、血液が凝固するまでには長い時間を要す事にもなり、場合によっては出血多量といった事態にもなりかねないのです。
ビタミンK欠乏症の症状はこれだけにとどまらず、カルシウムのコントロールもできなくなるといった悪影響も見られます。ビタミンKが不足すると、カルシウムが骨から排出してしまうこととなり、結果として骨がもろくなるといった状態を引き起こしてしまうのです。
抗生物質によって破壊されるビタミンK
上記でも説明したとおり、ビタミンKが不足してしまうと猫の体には様々な悪影響が及んでしまうことになりますが、ビタミンKは猫の腸内で合成(ビタミンK2)されるため、よほどの不健康な状態でなければ欠乏を引き起こすことはないでしょう。
しかし、ビタミンKは抗生物質によって破壊されてしまうという性質があるため、愛猫が薬などを服用していて抗生物質を摂取している場合には、食べ物からビタミンKを積極的に摂取する必要があるでしょう。
合成されるビタミンKの量は僅かなものではありますので、適度に食事から摂取する事が推奨されますが、上記のように日頃から抗生物質等を与えていないのであれば、そこまで神経質になる必要は無いかもしれません。
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ビタミンKを多く含む食品
ビタミンKを含む食べ物には、「小松菜」「ほうれん草」「キャベツ」などが挙げられます。また、「納豆」にもビタミンKが豊富に含まれることで知られますが、納豆は大豆ですので、大豆アレルギーを持っていない場合に限り、有効な食べ物と言えます。
ペットが必要とする1日分の栄養素の推奨摂取量を公開している「AAFCO」では、1日に摂取するべき推奨量には体重1kgに対し、ビタミンKが0.1mg以上を推奨とされています。
とはいえ、猫の体内で合成されるビタミンKでも十分とされる研究もありますので、抗生物質を含む食事や猫が不健康な状態にある場合に限っては、普段の食事に少量ずつ混ぜるなどして、適量を摂取するようにしましょう。
サプリでビタミンKを摂取
先述のとおり、ビタミンK3は人工的に作られたビタミンKで、ビタミンK1・ビタミンK2と比較しても、高いビタミンKを摂取できるビタミンです。しかし、ビタミンKの過剰摂取は説明してきたとおり、溶血性貧血を引き起こす可能性が高いため、注意が必要です。
上記でも触れたとおり、猫にビタミンKを積極的に摂取させる必要はそこまでありませんので、サプリメントでも、特別なことが無ければ心配する必要はないでしょう。また、キャットフードには色々なビタミンも含まれますが、ビタミンKを含むキャットフードはかなり限られたものとなっています。
なぜなら、猫が必要とするビタミンKの量も僅かであるため、食事をすることで腸内微生物による腸内合成にたよるだけで十分であると考えられているためです。
魚がベースのキャットフード
念のため確認しておいたほうが良いのが、「魚」をベースとしたキャットフードを与えている場合です。多くのキャットフードはビタミンKを含まず、猫の腸内での合成を想定されたものとなっていますが、魚の脂から得られるビタミンK2はビタミンK2の素となるものです。
そのため、フィッシュベースのキャットフードにはビタミンKが含まれているはずなのですが、念のためキャットフードのパッケージを確認し、成分について確認するようにしましょう。
因みに、プレミアムフードで知られるアカナの「パシフィカ」では、ビタミンKの含有量が1.50mg/kg、一方「ワイルドプレイリー」ではビタミンKの含有量が0.30mg/kgという内容です。
ほぼ、欠乏症になる心配のないビタミンKですが、このようにして、念のため成分表記を確認して見るようにしましょう。
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