愛犬が名前を呼ばれてもボーっとしてる、用もないのに同じ所をグルグル回っているなど、人間と同様に犬も痴呆または認知症になることがあります。今回は、その老化の一つでもある、「痴呆」または「認知症」について考えてみましょう。

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老化による痴呆や認知症


近年では、犬の長寿化が進み、昔に比べると長生きをするワンちゃんが増えてきました。これは、家の中で家族同然として共に暮らす子が増えたため、それに伴い愛犬の体調の変化にも気付きやすくなったとも考えられます。

しかし、平均寿命が延びた一方で、愛犬の老化に対する対策も必要になってきたのも事実です。その中の痴呆や認知症というものは、犬の老化や脳梗塞、脳出血や栄養障害などによって脳神経細胞や自律神経が機能しなくなることで引き起こされると言われています。

痴呆や認知症になると、初めのうちはゆっくり進行しますが、飼育環境の変化や病気など、何らかが原因となって急激に悪化することもあります。認知症は早期発見であればある程、進行を遅らせたり軽減することができ、老化を迎えても普段と変わらない生活を送ることができるため、日頃から愛犬の体調のチェックが必要になります。

徘徊する

徘徊とは、愛犬が意味もなく同じところを歩き回ってみたり、右方向もしくは左方向に、円を描くようにグルグルと歩き回ることを言います。足腰が弱っているため、トボトボとしか歩くことができないのですが、放って置くといつまでも前へ進み続けます。

また、方向転換や後ろに下がることができないので、何かの拍子に家具の隙間に入ってしまうと、抜け出すことができず、挟まったまま身動きが取れずにいることも度々あります。

一度徘徊が始まると、飼い主さんが制止をしてもまたすぐに徘徊が始まるか、大きな声で鳴くこともあるため、本人の気の済むまで歩かせてあげましょう。

この時、家具にぶつかってもケガをしないように、家具の角にスポンジなどを貼り付けたり、家具の隙間を作らないようにしてあげることをおすすめします。

移動する場所を把握しましょう

愛犬の徘徊がはじまったら、考えてあげてほしいのが歩くコースです。愛犬の目線に立ってコースを回ってみましょう。

目に当たりそうな部分は無いでしょうか。足を引っ掛けそうな部分はないでしょうか。実際に目線を落としてみることで、違う発見もできる可能性がありますので、念の為見てみましょう。

また、可能であればコースを作ってしまうというのも一つです。家具の配置を変えてみて、出来るだけ危険のないような状態にしてあげるのも一つのケアとなります。特に机の角などに当たらないようにするか、当たっても問題のないようにしてあげましょう。

家庭内で使用する愛犬用の「柵」や「ゲート」「サークル」も販売されていますので、危険なので入らないようにしたい場所にはこうしたゲートを設置してあげましょう。

留守中はサークルが安全です

愛犬の徘徊が始まると、困るのが留守番をさせなければならないときです。

常に誰か人がいるのであればまだしも、全く人がいなくなるような場合は、少し部屋に細工を加えてあげなければ事故が起きてしまう可能性もありますので注意が必要です。

愛犬を一人で留守にさせる際は、大きめのサークルを用意し、内側にお風呂マットのような柔らかい素材のようなものを貼り付けて、愛犬をサークルの中に入れて置けば、サークルの中でグルグル回ってもケガをすることはありません。

また、床には大きめのペットシーツを敷き詰めておくようにし、躓いてしまうような段差を極力減らしてあげましょう。老犬になると、トイレトレーのようなちょっとした段差でも足を引っ掛けてしまう場合がありますので、可能な限りフラットな状態にしてあげましょう。

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昼夜逆転するようになる


認知症が進むと、昼夜逆転することがあり、昼間に長い時間睡眠を取り、夜に活動するようになります。そのため、夜中に家中を徘徊したり、夜鳴きをすることがあります。飼い主さんが止めてもやめることなく、愛犬が夜中にずっと歩き回ったり、吠え続けていると、飼い主さんも極度の寝不足が続き、心身に大きな負担がかかるでしょう。また、夜鳴きは近所迷惑にもなります。

愛犬が昼夜逆転しているなら、なるべく昼間に体を動かしてあげることです。こまめに声を掛けて寝かせないようにしたり、少しでも外へ連れ出して散歩をさせたり、日光浴をさせたりして、体内時計を正常に戻してあげましょう。外の匂いを嗅いだり、他のワンちゃんとの交流ができる散歩は、脳に刺激を与えるため、痴呆対策に有効的です。

今までできていた事ができなくなる

痴呆になると、色々なことを忘れてしまったり、今まで学習できていたことができなくなります。悲しいですが、飼い主さんの顔を忘れることがあったり、愛犬が自分の名前を忘れてしまったために、名前を呼んでもボーッとすることがあります。

そうなる前に、日頃から愛犬に名前を呼んであげることや話し掛けてあげることが大事です。犬は、聴覚と臭覚に優れた動物なので、これらを刺激してあげることによって、脳に刺激を与え、痴呆の症状が起こりづらくなります。

また、今までできていたトイレも失敗することが多くなります。老犬になると、若い頃より膀胱が小さくなったり、お尻が緩むため、排泄が思うようにうまくいかなくなることもあるのです。

痴呆による排泄の失敗

痴呆の症状が強くなり、愛犬が排泄の失敗を繰り返すようであれば、すこし飼育環境や散歩のペースも考えなければなりません。

愛犬もわざと失敗しているわけではありません。そんな時は、飼い主さんの指示も理解できない愛犬自身も辛いと思いますので、決して叱らないで接してあげましょう。頻繁に粗相をしてしまう場合は、ペット用オムツなどもありますので、活用すると良いでしょう。

愛犬用のオムツにも様々なサイズがありますので、愛犬の腰回りなどを計ることは大事ですが、実際のところサイズが合っていても愛犬の体型に合わないというケースも少なくありません。

おむつもたくさん入っている方がお得なのですが、最初はしっかりとサイズや体格に合うかどうかを確認するために、念の為少量サイズの物を買ったほうが良いです。

オムツのサイズ選びは慎重に

おむつのサイズが合わないと、単に装着することが出来ないのではなく、歩いている時に脱げてきてしまったり、尻尾を出す位置が合わなかったり、うんちをしても漏れてしまったりという事もあります。

ペット用オムツを販売しているメーカーもたくさんあるので、念の為いくつか種類を試してみることをおすすめします。各社サイズ感も違うのですが、良い点・悪い点もはっきりと違いがあったりもします。

色々試している間に愛犬の方もオムツを履くことに慣れてきますので、使いにくいオムツを我慢して使わずに、愛犬がより動きやすく快適なオムツを探してあげるようにしましょう。

また、どうしても脱げてしまうという場合は洋服の下に履かせるという方法もあります。汚れ物が増えてしまいますが、あまりに使い勝手が悪いようであれば、洋服としてしっかり履かせたほうが愛犬も動きやすいでしょう。

喜怒哀楽が激しくなる

認知症になると、感情のコントロールが付かなくなり、喜怒哀楽が激しくなり、極端に甘えん坊になったり、攻撃的になることがあります。

寂しさや不安から甘えん坊になった時は、愛犬の傍に寄り添い、優しく声を掛けてあげたり、夜に眠る際は添い寝をして安心させてあげましょう。添い寝が難しい時は、飼い主さんの匂いが付いた衣服などを置いてあげるのも良いでしょう。

また、認知症により、飼い主さんと認識できなくなって攻撃的になった場合、愛犬の目の前に手を出したりすると、飼い主さんでも急に怒ったり、噛まれることがありますので、優しく声を掛けながら愛犬に触れるように注意が必要です。怖がって愛犬と距離を置くのではなく、優しく包み込んであげて下さい。

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認知症の症状を軽くするには


認知症は、放って置くとどんどん進行が進み、残念ながら今の医学でも治すことが難しいのですが、症状を軽くしたり、遅らせることはある程度可能であると言われています。

認知症に効果があるのは、脳に刺激を与えることが大切であり、毎日外へ散歩に行くことは、愛犬の心や脳を刺激するだけでなく、足腰の運動機能を維持することにも役立ちます。

さらに、毎回同じ散歩コースではなく、違うルートに変えると、愛犬の好奇心や探究心が刺激されてさらに効果的です。

認知症は、飼い主さんが仕事などで忙しくて、愛犬とのコミュニケーションが少なかったり、普段の生活が単調な子がなりやすいとも言われているため、普段から愛犬に話しかけたり、沢山スキンシップを取ってあげることで、愛犬にとって脳に刺激が与えられ、痴呆予防にもなるのです。

食事でも認知症予防が可能

また、毎日の食事にカボチャやほうれん草、ニンジンやリンゴ、小松菜やブルーベリーなど、抗酸化栄養素を含んだ食事に切り替えたり、EPAやDHAなどのサプリメントを与えることも認知症を予防したり、症状を軽減する役割があると言われています。

特にかぼちゃやさつまいもは素材そのものも甘みがありますので、食べ過ぎはよくありませんが、老犬にもおすすめの野菜です。蒸してすりつぶしたものや、ミキサーに掛けてスープのようにしてあげることで、食欲の増進や認知症予防にも効果が期待できます。

また、DHAやEPAのサプリメントも良いですが、フィッシュベースのドッグフードもおすすめです。好みはあるかもしれませんが、栄養にこだわった食事を与えるようにしましょう。

さいごに

老犬を介護をしていると、不安になったり、イライラが募り、「もういい加減にして!」と怒鳴ってしまったことで自己嫌悪に陥ってしまったり、「この先、こんな生活がいつまで続くんだろう」と、終わりが見えない介護に、時間がとてつもなく長く感じることもあると思います。

でも、愛犬も分からない事やできない事が増えて、飼い主さんと同じように不安な気持ちを抱えているはずです。

今まで愛犬と一緒に暮らしてきて、愛犬から沢山の愛情や思い出を貰った恩返しをする期間だと思って割り切ってみましょう。認知症を迎えた愛犬を受け入れ、お互いにストレスを軽減できるような介護を見つけていけたら良いですね。

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