猫の病気の「てんかん」ってご存じですか?突然、愛猫が激しい痙攣を起こしたり、口から泡を吹いたりするのを目の当たりにした時、飼い主さんはどのように対処したら良いのでしょう。今回は、猫の脳や神経の病気「てんかん」について考えてみましょう。
てんかんとは
てんかんとは、脳の神経細胞に異常が起きることにより、てんかん発作を繰り返し起こす脳の病気のことです。てんかんは、大きく2つに分けられており、「症候性てんかん」と「特発性てんかん」があります。
症候性てんかんは、過去に脳にダメージを受けるような病気(脳腫瘍、脳炎など)やケガ(以前に抱っこをしていて頭から落としていまったなど)、脳の奇形などが原因でてんかんを引き起こします。また、老猫になってから初めててんかんを発症した場合、脳腫瘍であることが比較的多く見られるようです。
特発性てんかんは、動物病院でMRIやCTで脳の検査をしても異常が認められないため、原因は遺伝が関係していると考えられています。
高い音にも関係がある?!
2015年に行われた、猫のてんかんの研究で、「高齢猫においては高い音が引き金となって、てんかんを起こしやすい」という可能性が示唆されているようです。
例えば、「スプーンでセラミックの器を叩く」「グラスをチーンと鳴らす」「アルミホイルやビニール袋、紙をしわくちゃにする」「硬貨や鍵をジャラジャラ鳴らす」「舌打ちをする」「キーボードを叩く」「マウスをクリックする」などです。
まだ詳しいメカニズムは分かっていませんが、この種類のてんかんは、今後「FARS(猫聴源反射性発作)」という名称で分類される可能性があるようです。
てんかんの症状
てんかんの症状は、繰り返し痙攣発作を起こすのが特徴で、「部分発作」と「全般発作」があります。
部分発作は、猫自身の意識があり、顔の一部や四肢など身体の一部分が痙攣します。全般発作は、身体全体がガチガチに強張り、激しく痙攣するもので、失禁したり、口から泡を吹いたり、意識が無くなることがあります。
てんかんは、夜眠っている時や早朝に起こることが多く、発作は数秒から数分で治まることがほとんどですが、稀に1時間ほど発作が続く場合もあります。発作が治まった後は、まるで何も無かったかのように普段通りの様子に戻ります。
こうした症状が見られる場合には「てんかん」と判断されますが、中には通常のてんかんとは違うタイプのてんかんと判断される場合があります。その具体的な症状について見てみましょう。
頻度でも変わるてんかんのタイプ
てんかんの症状が30分間以上続いたり、1回の発作が完全に終える前に次の発作が連続して起きる場合は「てんかん重積」と呼ばれます。また、1日に2回以上、もしくは24時間に3回以上のてんかんが起きる場合には「群発発作」と呼ばれ、それぞれは通常のてんかんとは別の症状として診断されます。
てんかん重積や群発発作の症状が見られる場合には、何かしらの中毒症状である場合や脳への外傷、もしくは脳ヘルニアといった重篤な病気を引き起こしていることも考えられます。こうしたてんかんの症状が見られた場合には、早急に獣医さんに診察してもらう必要があります。
こうしたてんかんの様子は、飼い主さんがしっかりと観察し、てんかんの症状や回数を把握する必要があります。必ず時間や回数、動画を取るなどの方法で記録を残すようにし、動物病院に行く際に状況を正確に伝えられるようにしましょう。
てんかんの予兆はある?
てんかんは、前述の通り突然起きてしまう症状ですので、てんかんが起きそうな予兆を掴むのは難しいでしょう。
しかし、てんかんを引き起こしている要因さえ掴むことが出来れば、てんかんを予兆することは可能となるでしょう。
その要因を追求することが難しいのですが、先にも触れた「音」であったり、部屋の「気温」が関係していたり、愛猫の「体温の変化」が関係していたりと、何か予兆を掴むヒントがあるかもしれません。
また、てんかんが起きる前の愛猫の行動も思い出してみましょう。いつもよりも甘えてきてはいなかったでしょうか、いつもより元気が無いような雰囲気はなかったでしょうか。てんかんの予兆を掴むのは非常に難しいですが、愛猫の様子やその他の要因をしっかりと観察することで、もしかすると予兆を掴むことが出来るかもしれません。
てんかんが始まった時の対処法は?
てんかんの発作が始まった時、愛猫の様子があまりにも辛そうなので、飼い主さんも驚いてパニックになることもあると思いますが、ここは落ち着いて愛猫に優しく声をかけて、身体を撫でてあげましょう。
もし、高い場所に登っている時にてんかんを発症した際は、落ちないように支えてあげるなどの工夫も必要です。決して、無理に抱っこをしたり、強く揺さぶったりしないようにして下さい。
また、愛猫が何度かてんかんを起こしている間、てんかんを起こした日にちや時間、どのくらいの時間(何秒、何分など)発作があったか、発作中の様子(意識の有無など)、発作が起きる前や、発作が治まった後の様子などをメモしておきましょう。
そして、てんかんを起こしている間、嘔吐などの症状が見られる時は、嘔吐物で気道が詰まることがありますので、呼吸困難にならないように、異物を取り除くなどの気道の確保が必要になります。しかし、てんかんを起こしている間は興奮状態にありますので、口に指を入れると噛まれることもありますので注意しましょう。
てんかんの治療
症候性てんかんの場合は、てんかんの原因となっている病気に対する治療を行い、特発性てんかんの場合は、抗てんかん薬を用いて治療を行います。また、てんかん重積を起こしている場合は、痙攣を止めるための緊急治療を行います。
ここで気を付けなければいけないことは、てんかん用の抗てんかん薬は副作用があるかもしれないということを認識しておきましょう。副作用としては、初期段階では、動きが鈍くなったり、ふらついたり、異常に食欲が出るという症状があります。そのうち、肥満になったり、尿失禁などの副作用が見られます。
抗てんかん薬にはこのような副作用があるため、愛猫が具合悪くなるのを目の当たりにすると、飼い主さんは投薬を止めた方が良いのではないかと思うでしょう。しかし、投薬を止めると、発作の間隔が短くなったり、発作の回数が増えるなど、愛猫の身体に負担をかけてしまいますので、獣医さんと相談して、愛猫に合った薬を見つけていきましょう。
てんかんの治療費はどのくらい?
いざ、猫がてんかんを発症してしまった場合、どのくらいの治療費が必要になってくるのでしょうか。
前述のとおり、猫のてんかんといっても症状の大小や、てんかん以外の症状である場合もあります。主に検査では血液検査が行われますが、場合によっては血液検査だけでなく、MRIを使用した検査が行われる場合もあります。
症状が軽度であれば、治療にかかる費用も数万円程度で済む場合もありますが、逆に症状が重篤であれば、簡単に数十万円の治療費が発生する場合もあります。
実際に動物病院で検査を行わなければ、その重度もはっきりとはわかりませんので、まずは様子がおかしいと感じた時に、動物病院で検査だけでも行なうのが大事です。様子を見すぎて行動が遅れてしまうと、症状も重くなってしまうでしょう。
てんかんに備えて保険の加入も
猫のてんかんを予防するのは難しいため、症状が見られた場合にはすぐに動物病院に行って検査・治療を行なうのがベストです。そこで必要になってくるのがペット保険です。
ペット保険にも色々なプランがありますが、てんかんに備えておくのであれば「通院・入院・手術」を補償できるプランがおすすめです。ペット保険には手術のみといった格安のプランもあるのですが、いざてんかんのような症状が見られても、通院に対しては補償外となり、てんかんの手術が発生しなければ保険金が下りることはありません。
てんかんは出来るだけ早くの処置や治療が大事です。そのためには、気になった時にすぐに動物病院に行けるような態勢を整えておくことが大事です。通院や入院の補償があれば、ちょっと気になるといった時にも動物病院に行きやすいでしょう。
てんかんを予防するために
てんかんは原因も掴めなければ予防するのは難しいですが、てんかんを起こさないために様々な予防策を講じる事も必要です。薬だけに頼るのは、愛猫の体にも負担がかかります。出来る限り、てんかんが起きないように生活を送らせるようにするのが理想と言えます。
方法としては、前述でも取り上げた「予兆」を掴むことが出来れば、すぐに予防策を取ることが出来ます。また、食事の管理や温度管理、飼育環境を整えるといった行動も、予防策になる可能性もあります。
てんかんは予防が出来ない分、上手に付き合っていくしかありません。愛猫のてんかんに目をそむけたり、病院任せにするのではなく、愛猫と共にてんかんと戦っていくような気持ちが必要となるでしょう。
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