「進行性網膜萎縮」とは、徐々に愛犬の視力が落ちて、やがては失明してしまうという、遺伝によって起こる目の病気です。今回は、あなたの愛犬も他人事ではない、「進行性網膜萎縮」について、症状や治療法、予防や対策などを調べてみましょう。

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進行性網膜萎縮とは

進行性網膜萎縮とは、網膜の異常から視覚障害を引き起こし、徐々に視力が落ちて、最終的には失明して完全に目が見えなくなるという遺伝性の病気です。
発症する時期や進行具合は個体差がありますが、平均的に6歳前後で発症することが多いようで、早い犬で1歳未満で発症します。

残念ながら、この病気に治療法はなく、発症した場合は失明してしまいます。しかし、症状を遅らせることはできるようなので、飼い主さんの早期発見が重要なカギとなるでしょう。

進行性網膜萎縮の症状


進行性網膜萎縮の症状は、初期の段階では、暗いところで目が見えにくくなるため、大好きだった散歩なのに、夕暮れや夜間の場合は嫌がるようになったり、物につまずくなどの視覚障害や、溝に落ちたり真っ直ぐ歩けなくなるなどの歩行障害があります。

この症状は段々と進行して、最終的には明るい場所や日中でも目が見えなくなるため、不安がるようになり、行動することに消極的になったり、動作が遅くなったり、壁づたいに歩くようなります。見知らぬ場所では、尚更こうした行動が見られるでしょう。

また、視力は突然無くなるのではなく、徐々に悪化するのですが、目が見えなくなっていく過程で犬は「鼻」や「耳」に頼るようになり、犬自体が見えなくなることに順応していきます。そのため、飼い主さんもなかなか進行性網膜萎縮の症状に気付かない場合も多いようです。

進行性網膜萎縮に痛みは伴うのか

幸いにも進行性網膜萎縮は、身体に痛みなどの苦痛を伴うことがない病気です。しかし、痛みを伴わない反面、飼い主さんが症状に気が付きにくいというデメリットもあるため、発見が遅れてしまうと考えられます。

このように、進行性網膜萎縮は痛みもなく、「見えにくい」という状況に対して順応していくために、どんどんと発見が遅れてしまうのです。日頃からこまめに愛犬の目をチェックしていれば変化に気がつくことも出来ますが、進行性網膜萎縮の症状についてしっかりと理解しておかなければ、すぐにピンとは来ないでしょう。

こうして発見が遅れていくと症状はどんどんと悪化の一途をたどり、二次的に「白内障」を併発することもありますので、日頃の愛犬の健康管理を怠らないことが大切です。

白内障とは

「白内障」とは、先天的・もしくは外傷や病気の併発による後天的な理由によって引き起こされ、眼球内にある水晶体が白く濁ってしまう目の病気です。白内障を発症することで、視力の低下や、場合によっては失明してしまう場合があります。

白内障を発症すると、目のレンズの役割を果たす水晶体が白く濁るため、見た目にも目が白く濁って見えます。また、視力の低下がみられ、急な物音に驚くといった行動や、壁伝いに歩いたり、物にぶつかって歩くといった行動も見られるようになるでしょう。

進行性網膜萎縮同様に、白内障も発見が遅れてしまうと、最終的には視力を失うまでに至ってしまいますので、早い段階で発見して治療することが有効的です。

進行性網膜萎縮の好発犬種とは


進行性網膜萎縮にかかりやすい犬種は、「チワワ」「パピヨン」「ミニチュア・ダックス」「トイ・プードル」などの小型犬の他、「ラブラドール・レトリバー」「ゴールデン・レトリバー」「アイリッシュ・セター」「コリー」「シェルティ」「スタンダード・プードル」「ミニチュア・プードル」「コッカー・スパニエル」など、世界中でも80種類の犬種が発症しやすいと言われています。

遺伝的に発症してしまう病気ですので、上記に挙げられた犬種以外にも血統で進行性網膜萎縮を発症したことがある場合には、発症のリスクが高いといえるでしょう。そのため、進行性網膜萎縮を回避するには、発症した犬を交配させないなどの対応が大切となります。

進行性網膜萎縮の検査について

進行性網膜萎縮の検査については、「視覚検査」「眼底検査」を行い、検査されます。

検査した時点で、進行性網膜萎縮の進行状態なども把握できるようになりますが、飼い主さんが愛犬の様子がおかしいと感じた日や、どのような症状であったか、その後の様子はどうであったかなどを伝えられると、よりしっかりとした検査や判断材料にもなるでしょう。

白内障を併発するものの、進行性網膜萎縮が軽症である場合でも、重症である場合でも、外見的な変化はありませんので、しっかりとした検査に加え、日頃の状態や様子を確認しておくことが大事になります。

非常にわかりにくく、判断のしにくい病気ですので、毎日しっかりとコミュニケーションを取っている飼い主さんでも、進行性網膜萎縮を早期に発見するのは難しいのです。

進行性網膜萎縮の治療について

先述でも触れた通り、残念ながら進行性網膜萎縮に対する治療薬や手術などは確立されていません。

しかし、1980年代にビタミンE欠乏による網膜変性が多く報告されているということから、「ビタミンE」や「アスタキサンチン」などの抗酸化剤やサプリメントは、網膜組織の酸化を防ぐことで、網膜の変性を遅らせることができると考えられています。

今では、世界各地でも網膜疾患に対し、様々なビタミンE含有動物用抗酸化剤が使用されています。

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進行性網膜萎縮の予防

これも残念ながら、進行性網膜萎縮は遺伝性の病気であるため、予防することができません。好発犬種に該当する犬種を飼育している場合は、先述したようなビタミンEを含むサプリメントなどを摂取すると良いでしょう。

また、この病気は発症していても、気付かれないことが多いため、愛犬が普段の散歩と様子が違うことはないか、それを見落とさないようにすること、そして、病院で定期的な健康診断を受診することで、早期発見に繋がり、この病気の進行を遅らせることができるでしょう。

進行性網膜萎縮を発症した時の対策


愛犬が進行性網膜萎縮と診断されたら、愛犬がなるべく不安やストレスを抱えず、普段通りの生活が送れるように、飼い主さんが気を付けてあげる必要があります。

例えば、愛犬が部屋の中で迷ったりしないように、トイレや水飲み場を変えたり、家具の配置換えをしないことが大切です。また、愛犬が物にぶつかったりしないよう、床に物をあまり置かないようにしましょう。

そして、愛犬を留守番させる際、室内にストーブなど危ないものがある場合は、愛犬をケージやサークルに入れておく必要があります。

散歩では、愛犬が歩く前を注意して、障害物をどけたり、転びそうな場所は歩かないことや、人通りが多いコースを避け、静かなコースをゆっくり歩くようにしましょう。外は室内に比べて、危険が沢山ありますので、愛犬から目を離さないということが大切です。

失明をできるだけ遅らせるために

上記に挙げられたような対策を行うことで、愛犬も比較的不安やストレスを抱えずに生活できるのかもしれません。人間にとって「失明」するということは大変なことですが、犬にとっては、視力よりも臭覚が大切だと考えられています。

支障がないとは言いませんが、犬にとっての「視覚」は人間ほど執着するものでもないかもしれませんね。大切なことは、飼い主さんが愛犬の傍で代わりに目となって、愛犬を守ってあげることでしょう。

残念ながら完治も見込めず、発症してしまうと進行を食い止めることが出来ない病気ですが、出来る限り失明してしまう事態を送らせるようにし、併発する病気に対してもすぐに対処していけるよう、愛犬と2人3脚で取り組むようにしましょう。

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