未だ衰えを知らないペットブームの裏側で、これまでに沢山の猫たちが飼育放棄されているという辛い現実をご存じでしょうか。目を背けたくなるような話ですが、猫の飼育放棄について、原因や対策など、今一度考えなければいけないのかもしれません。

スポンサーリンク

高齢者による飼育放棄

犬猫を引き取っている全国の自治体を対象に、犬猫を引き取る理由について調査した結果、2014年に「飼育者が高齢・病気・入院・死亡」という理由の割合が、犬で56自治体、猫が26自治体で1番多かったことが分かりました。これは飼育放棄をする飼い主が高齢である可能性が高いということかもしれません。また、過去の飼育放棄理由と比較すると、「飼育者が高齢・病気・入院・死亡」が理由で遺棄された件数が、犬も猫も両方とも75%の割合で増加しています。

高齢者によると見られる犬猫の飼育放棄の割合が、2014年度に68%に達した東京都も、「高齢者による飼育放棄の増加傾向に、強い問題意識を持っている」として、東京都で収容した犬猫の里親の年齢を、上限60歳と設定しました。しかし、結局は、里親になることを断られた高齢者が、子犬・子猫を求めてペットショップで購入するという悪循環が起きているようです。

猫を飼い始める前に、猫の一生は10~15年程であることを再認識し、ご自身の寿命と照らし合わせてみる必要があるのではないでしょうか。「寂しいから」「老後の生きがい」と、ご自身の身勝手な都合で猫の将来を振り回すことだけは避けなくてはいけません。

その他の飼育放棄理由とは

その他の猫の飼育放棄の理由としては、引っ越し先がペット不可であるという理由が挙げられます。そもそも猫を飼っているのなら、ペットの飼育不可の家へ引っ越すということを、最初から諦めるべきではないでしょうか。愛猫のこれからの人生を考えると、「家賃が高くなるから」「駅から遠くなるのが嫌」などの理由は、それに代え難いものでしょうか。

また、飼い主の妊娠や出産で飼育放棄をされることがあります。赤ちゃんを傷付けるかもしれないと思うのなら、しばらくは赤ちゃんと猫を、別部屋で隔離して飼育することをお勧めします。その間に、猫に赤ちゃんのよだれ掛けや肌着の匂いなどを嗅がせ、赤ちゃんの存在を覚えてもらうと、赤ちゃんと会わせた時、拒否反応が起こりにくいようです。どんな動物もいきなり会わせると、警戒心から攻撃的になることがありますので、猫のペースを見ながら、少しずつ慣らせてあげましょう。

そして、猫が病気になったから、高齢になったからという理由で飼育放棄されることも多いようです。確かに、病気や高齢により痴呆になった猫を介護するということは、並大抵の苦労ではありません。介護にかかる労力や時間、経済的や精神的にも負担はかかるでしょう。でも、あともう少しだけ一緒に寄り添ってあげることはできませんか。その苦労、ずっとは続かないんですよ。

猫の望まない妊娠や出産

個体差もありますが、猫は1年間に2~3回出産し、1回に5頭ほど産まれます。去勢や避妊手術をしていない場合、1年間に10~15頭に増えてしまいます。多頭飼育している場合、その数はどうなるのか安易に想像がつくでしょう。

このように望まれずに産まれた子猫を、愛護センターに持ち込む飼い主が後を絶ちません。また、野良猫にエサを与えていた人が、産まれて増えてしまった目も開いていないような子猫を、袋に入れて川に流すという行為を、幾度と繰り返していたという残酷な事件もあったようです。

「可哀想だからエサをやっていた」「健康な身体にメスを入れるのが可哀想だから手術はしない」
「生きたい」と産まれてきた命を、「望まないから」と捨てるという行為は、川に流すことも愛護センターに持ち込むことも、やっていることは同じではないでしょうか。

スポンサードリンク

どうしたら飼育放棄を減らせるのか

ペットショップには可愛い子犬や子猫がずらりと並んでいます。気に入った子が小さい体でヨチヨチ歩み寄ってくる姿を見れば、「連れて帰りたい!」という気持ちになるのも分かりますが、服や靴を衝動買いするのとは訳が違います。

命あるものを飼育するには金銭面だけでなく、病気や老化、猫の問題行動など、様々な面でも精神的に負担がかかります。飼おうと思う前にもう一度踏み止まって、その子の将来10~15年先まで見据え、最後まで責任を持って飼育できるのか、きちんと考える必要があるでしょう。

複数猫を多頭飼育している人は、去勢や避妊手術をすることで、望まない妊娠や出産を防ぐことができます。最近、「多頭飼育崩壊」という言葉をよく耳にします。最初は2~3頭くらいの犬猫を飼育しているのですが、妊娠・出産で30頭、50頭と数が増え、家の中は糞尿にまみれて不衛生になり、その臭いから近所から苦情が来たりなど、結局手に負えなくなって、行政や保護団体が引き取ることになってしまうのです。最初から、去勢・避妊手術を済ましておけば起こらなかったことでしょう。

また、愛護センターに子猫を持ち込むということは「猫を殺すこと」になることをきちんと認識しましょう。「愛護センター」という言葉から、「愛護してくれるはず」「施設で楽しく過ごすのかな」と勘違いしている人が多くいるようですが、実際は、ガス室に送られて殺処分されます。そして、愛護センターに持ち込んだ飼い主も、この殺処分に加担しているということを、もう一度考える必要があるのではないでしょうか。

スポンサーリンク