雌犬が発症してしまう「乳腺炎」という病気。乳腺が腫れてしまったり、しこりができてしまったりといった症状で、痛みも伴う病気です。子育て中の母犬は特に注意が必要な病気ですので、事前に乳腺炎の症状や原因を理解しておきましょう。
犬の乳腺炎とは?
雌犬が発症する病気に「乳腺炎」と呼ばれる病気が存在します。乳腺炎は雌犬の乳房にしこりがあったり、腫れてしまったりといった症状が見られるようになり、乳腺炎を患ってしまっている場合には、乳腺に痛みを感じているために、授乳するのを嫌がったりといった様子も見られるようになります。
また、子育てをしていない雌犬も乳腺炎を患う場合があり、妊娠していないのに乳が出てきたり、乳腺が張ったりといった症状もみられます。こうした症状の他にも、元気が無くなったり食欲が落ちてしまったりといった症状も見られるようになります。
犬の乳腺
犬が喜ぶと寝転がって仰向けになったりするので、雌犬であればすぐにお乳が確認できるかと思いますが、このお乳が犬の「乳腺」になります。
この乳腺は雌犬の前足の付け根の下辺りから後ろ脚の付け根辺りまで、左右5箇所ずつ、合わせて10箇所付いています。また、必ずしも左右対称に乳腺が付いているわけではありません。
痛みを伴う乳腺炎の症状
雌犬に多く見られる病気でもある乳腺炎。雌犬が乳腺炎を発症すると、元気の減退、食欲の低下などの症状が見られるようになります。
乳腺炎の基本的な症状は、熱や痛みを伴い、乳房が腫れてしまうといったもの。乳腺自体が腫れてしまうため、乳房は熱を持ちながらも腫れ上がり、乳腺に痛みが生じてしまいます。
授乳をしている母犬は乳腺炎で乳房が痛むために、授乳を嫌がるようになったりもするので、子犬への影響も出始めることになるでしょう。そのため、授乳中の母犬は特に注意したい病気です。
そんな乳腺炎ですが、症状が現れ始めると犬の様子からもわかるだけでなく、乳房や乳腺にしこりも確認されるようになるでしょう。さらには、乳腺も張って乳が出てきますが、その乳は黄色い乳汁として分泌されるなどの症状も見られます。
「しこり」を見つけたら乳腺炎の疑いも
乳腺炎を発症し始めると、犬の乳房は痛々しく腫れ上がるだけでなく、しこりも確認されるようになります。見ただけで直ぐに判断がつきますが、前述の通り乳腺炎は痛みを伴うため、犬も触られるのを嫌がるようになります。
犬が乳腺炎を発症してしまう原因には、授乳中に傷がついてしまうことが一つの要因となります。母犬が子犬に授乳を行なう際に、何らかの理由で乳房に傷がついてしまい、その傷口から細菌に感染してしまったり、乳汁が詰まってしまったりといった事が多くの原因となります。
こうしてみると乳腺炎の原因は授乳によるものかと思えますが、乳腺炎は前述の通り、妊娠していても妊娠していなくても発症するリスクがある病気なのです。その原因が想像妊娠tも呼ばれる「偽妊娠」によるものです。
乳腺炎の原因について
母犬はどうしても子犬への授乳が必要になるため、少なからず乳腺炎のリスクが有ると考えたほうが良いでしょう。また、乳腺炎を引き起こしてしまう原因には他にも「偽妊娠」と呼ばれる、ホルモンが原因になる雌犬特有の病気も乳腺炎を引き起こす要因となる場合があります。
この偽妊娠は、人間で言うところの想像妊娠と近いものになりますが、犬の偽妊娠はホルモンの分泌が正常に働かなかった為に引き起こされる、ホルモンの病気のひとつです。偽妊娠を引き起こすことで、乳汁が溜まってしまい、結果として乳腺炎も引き起こす原因となってしまうのです。
このように、乳腺炎は妊娠していないのにも関わらず発症してしまう場合もあるため、雌犬は特に気を付けなければいけない病気でもあります。
「偽妊娠」とは
約60日間ほど続く発情後期の間、メス犬の体には、黄体ホルモンと呼ばれるホルモンの分泌が続きます。この黄体ホルモンは、受精卵が着床しやすくするためのホルモンですが、偽妊娠は黄体ホルモンが出続けてしまうことで引き起こされます。
本来であればメス犬の体は、妊娠しなかった場合には黄体ホルモンの減少とともに、通常に戻っていくのですが、黄体ホルモンが分泌されている間には、メス犬の体も妊娠を受け入れる態勢のままなのです。そのため、黄体ホルモンが出続けてしまうと、メス犬の体は妊娠していると勘違いを起こしてしまい、偽妊娠を発症してしまうのです。
メス犬が偽妊娠を引き起こすと、乳腺が張ってきたり、お乳が出てきたりと言った症状が見られるようになり、本能的に子犬を産む準備をしようと、落ち着ける場所で巣作りを行ったり、ぬいぐるみ等を相手にして、子育てを行うなどの行動が見られる場合もあります。
偽妊娠の治療に関しては、特に何もしなくとも通常の状態に戻っていくため、特に治療を施さないといけないと言うわけではありませんが、毎回のヒートの度に偽妊娠を繰り返すようであれば、一度検査を行ったほうが良いかもしれません。
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「乳腺腫瘍」とは
乳腺炎は乳腺にしこりが出来ることでも判断できますが、同じく乳腺の病気で知られる「乳腺腫瘍」もまた、しこりができるのが特徴となる病気です。
乳腺炎は乳汁の詰まりや傷によるものが原因となりますが、乳腺腫瘍はその原因ははっきりとしていません。しかし、乳腺炎と乳腺腫瘍との大きな違いは「腫瘍」が出来てしまうという点です。
乳腺腫瘍の場合、悪性と良性の確立は50%程度。悪性である場合には残念ながら転移してしまう場合が多いため、乳腺を摘出するなどの手術が行われます。乳腺腫瘍は犬に出来る腫瘍の中でも、2番めに多いと言われる病気ですので、乳腺腫瘍や乳腺炎にかかわらず、しこりが見つかった場合にはすぐに検査を行うようにしましょう。
乳腺炎が悪化してしまうと
乳腺炎に関しては、乳腺腫瘍のように命のリスクが高いとは言えない病気ですが、症状が悪化してしまうと乳頭が壊疽を起こしてしまったり、乳頭の切除手術を行う必要もあるため、決して油断はできません。
また、母犬が乳腺炎を患ってしまうと、母乳に細菌が含まれる可能性が高くなるため、子犬に授乳させることも出来ませんので、飼い主さんが哺乳させなければいけません。しかし、子犬の頃に出る母乳は非常に重要な母乳ですので、出来る限り母乳で育てたいところです。
悪化して壊疽を起こしてしまうような事態にならないよう、しこりが見つかればすぐに検査を行う事や、授乳中の母犬ではこまめに乳房やしこりのチェックを行うなど、しっかりとしたケアを行うようにしましょう。
乳腺炎の治療について
犬が乳腺炎を発症してしまった場合には、軽度であれば乳房・乳腺を冷やして、炎症を少しでも抑えるといった処置が可能です。
しかし、すでに炎症を起こしてしまっている場合には、子犬への授乳は避けるようにしましょう。患部が悪化してしまうことに加え、子犬にも細菌が移ってしまいますので、こうした場合には人工哺乳を行うようにしましょう。
また、動物病院では投薬による抗炎症剤やホルモン剤の投与といった処置が行われます。前述の通り、すでに乳房に膿が溜まってしまうなど、症状が重いようであれば外科手術が必要になる場合があります。
外科手術では、患部の切除を行うことになるでしょう。こうした状態になる前に、早めの処置を心がけたいところです。
乳腺炎の治療費は
乳腺炎の治療費に関しては、その症状によっても変わってくるでしょう。軽度である場合には、検査料だけで住む場合もあるかもしれませんが、症状が悪化してしまい、手術を行う必要があれば、10万円〜といった金額が発生してくるでしょう。
手術代に加え、入院費用も発生してくる可能性もあります。また、しこりが乳腺腫瘍であった場合、さらにその腫瘍が悪性であった場合にはさらに治療費が膨らむことでしょう。
乳腺炎は放おっておけば治るものではありませんので、赤く腫れ上がっていたり、しこりがある場合、犬がなかなか触らせようとしないなど、いつもの様子と違うなと感じたのであれば、念のため乳腺炎などの病気を疑ったほうが良いでしょう。早期発見・早期治療に繋げられるよう、早めに検査を行うようにしましょう。
乳腺炎を予防するために
乳腺炎を予防するには、常に清潔な環境を保つように心がけることです。これは、妊娠している・していないに関わらず大事なことです。授乳中の雌犬は、子犬によって乳房が傷ついてしまう心配がありますが、妊娠していない犬も何かしらの原因で乳房が傷ついてしまったり、偽妊娠を引き起こす可能性もありますので、常に清潔な環境を維持することは大事なことです。
また、授乳中の雌犬の場合には、子犬の動きや母犬の行動をしっかりと確認するようにしましょう。授乳を嫌がっていないか、子犬はしっかりと乳を飲めているか等、こうしたチェックも母犬のみならず、子犬にとっても大事なことです。母犬に何か会った場合を想定して、予め粉ミルクを用意しておくと言うのも大事なことかもしれません。
雌犬が引き起こすこうした病気は、避妊手術を行うことでも発症のリスクは減らすことができますが、子犬を授かりたい場合にはそうにも行きません。こういった病気の存在を知っておき、すぐに対処できるように理解を深めておくようにしましょう。
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