犬の健康な体を維持するのに欠かせない「ホルモン」。このホルモンのバランスが崩れることで、犬の体に異常をきたしてしまうのがホルモンの病気ですが、その中のひとつ、「甲状腺機能亢進症」の特徴と症状、予防策について見てみましょう。
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症とは、気管の両脇にある甲状腺から分泌される、新陳代謝を促すために必要な「甲状腺ホルモン」の分泌量が異常に活発になる、または持続的に過剰分泌されることで引き起こされます。甲状腺機能亢進症を発症すると、食欲があるのに痩せたり、活発になるなどの様子が見られます。
病気の名称がよく似たものに「甲状腺機能低下症」が挙げられますが、犬の場合では甲状腺機能低下症を発症する方が圧倒的に多く、猫では甲状腺機能亢進症を発症することが多いと言われています。
いずれの病気もホルモンバランスが崩れることで発症する病気となりますが、微妙に症状も違いますので、それぞれの特徴や症状を理解しておくことが大事です。
甲状腺機能低下症とは
「甲状腺機能亢進症」が食欲の低下と体が痩せてくるほかに「活発になる」といった症状が見られるのに対し、「甲状腺機能低下症」は食欲が無いのに痩せてくるといった同じ症状の他に、「何となく元気が無くなる」という症状が特徴となる病気です。
また、「甲状腺機能亢進症」は甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になることで発症する病気ですが、「甲状腺機能低下症」は甲状腺ホルモンの分泌量が減少することで引き起こされる病気です。
甲状腺機能低下症の場合には脱毛や常にぼんやりとした様子が見られるようになりますので、甲状腺機能亢進症よりも病気の発症に気が付きやすい病気と言えるでしょう。このように、甲状腺ホルモンの病気には名前は似ていても、その原因や症状も異なるものとなっています。
甲状腺機能亢進症の症状
甲状腺機能亢進症の症状は、先述したように、「食欲の増加」が見られるのに「体重が減少」していくことや、「水を異常に飲む」「おしっこの量が多い」などの症状、さらには「嘔吐」「下痢」といった症状の他、尾の先端が脱毛し、ネズミのような尻尾になってしまう、「ラットテイル」という皮膚に症状が現れることもあります。
甲状腺機能亢進症を発症することで特徴的なのは、「活動的になる」ことや「落ち着きがなくなる」といった様子も見られ、時には「攻撃的になる」こともあります。また、「眼球の突出」であったり、「微熱」や「頻脈」というような症状も見られます。
さらに病気が進行していくと「食欲不振」「活動の低下」へと症状が変化したり、心臓にも負担がかかり、心不全や過呼吸症候群なども併発する可能性もあるため、場合によっては生命に危険が及ぶ病気でもあります。
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甲状腺機能亢進症の原因
甲状腺機能亢進症は、喉にある甲状腺が肥大したり、良性腫瘍・悪性腫瘍が甲状腺にできてしまい、甲状腺ホルモンが過剰分泌されることで引き起こされることが原因となります。
腫瘍と聞くと「癌」がイメージされがちですが、こうした腫瘍が癌腫瘍である確率は低く、実は良性腫瘍である場合の方が多いようです。また、甲状腺機能低下症の治療のために投与した甲状腺ホルモン剤が過剰だったために、甲状腺機能亢進症を引き起こすこともあります。
特に犬の場合には、甲状腺機能低下症を発症することが多いため、治療の段階で症状が一変したと感じた際は、この甲状腺機能亢進症を疑っても良いかもしれません。
高齢犬に多い甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は主に高齢犬に多く見られる病気でもあります。愛犬が高齢なのに、最近やけに活発だなと感じた時や、体重が急激に減っているなと感じた場合は、もしかすると何かしらの変化が起きているのかもしれません。
元気でいるのは喜ばしいことではありますが、それまでとは様子が違うと感じたのであれば、もしかすると甲状腺機能亢進症も疑われますので、早めに診断を受けたほうが良いでしょう。
病院での診察は、血液検査で甲状腺ホルモンの数値を確認する内容となります。検査自体はリクスは高いものではありませんが、外科手術が必要な状態ですと全身麻酔のリスクも高くなりますので、できるだけ早い対応が大切になってきます。日頃からの観察が大切ですね。
甲状腺機能亢進症の手術による治療方法
甲状腺機能亢進症を治療するには、内科療法もしくは外科療法による治療となります。
甲状腺に腫瘍がある場合は直接、甲状腺の切除による外科治療が行われることもありますが、動脈や食道、気管などへ転移している可能性や、部位によって切除が困難な時は外科手術を行うのが難しくなるため、放射線治療などの方法で治療を行い、腫瘍の縮小化を図ります。
また、甲状腺の切除を行った際は、その後は一生涯に渡って甲状腺ホルモン剤を与え続ける必要があります。この点がデメリットにはなりますが、予後を考え、切除が望ましい場合もあるのです。
なお甲状腺の腫瘍が良性腫瘍の場合には、気管の両脇にある甲状腺ですが、どちらか一方だけ切除する場合もあります。
甲状腺機能亢進症の内科療法による治療方法
甲状腺機能亢進症の内科療法による治療を行う場合は「甲状腺ホルモン剤」の投与による治療が一般的となります。ただし、甲状腺ホルモン剤の投薬は一生涯与え続けることになり、さらに投薬によって甲状腺ホルモンが低下しすぎるのを防ぐため、定期的なホルモン数値の測定が必要になります。
また、甲状腺機能低下症の治療により、甲状腺ホルモン剤が過剰に投与されて甲状腺機能亢進症を起こした場合は、そのホルモン剤の量を調整することで治ることがあります。
基本的に甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモン剤による治療となりますが、この投薬によって副作用が出てしまった場合には、外科療法での治療に切り替えなければならない場合があるようです。
甲状腺機能亢進症の食事療法も
甲状腺機能亢進症を発症した場合、自宅では高カロリーでビタミンやカルシウム、リンがバランス良く配合した食事を与えることが大切です。また、最近では、ヨウ素を制限した処方食を与える治療も行われてきてるようです。
特に高齢犬が甲状腺機能亢進症を発症した際には外科手術のリスクが高いですので、点滴療法を行いつつ、食事療法で症状の緩和を行う方法が行われるでしょう。
また、甲状腺機能亢進症の治療に関しては腎不全を起こしていないか、薬の副作用はないか、投薬での症状の緩和が見られるか等、状態によって治療方法が変わってきます。
他にも認可外の治療方法が存在しますが、日本においては未だ認可されていない治療方法になりますので、残念ながら現状の治療方法で対処するしかなさそうです。
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甲状腺機能亢進症の手術による治療方法
甲状腺機能亢進症の症状は、食欲旺盛だったり、活発だったりと、毎日一緒に過ごしている飼い主さんでも、一見元気だと勘違いしてしまい、発見が遅れがちになります。これが高齢犬であれば、最近若返ったのかな?の勘違いを起こしてしまうケースも多いでしょう。
本当に元気であれば喜ばしいことですが、食欲旺盛なのに痩せてきている、最近やたら水を飲む、尿の量が多いなどの症状が出たり、脱毛が見られる場合は注意が必要です。こうした症状が見られる場合には、すぐに病院で検査を行うことをおすすめします。
また、腫瘍となる「しこり」が、甲状腺がある喉のあたりに発症することがありますので、毎日注意深く観察することやスキンシップを取ることが早期発見にも繋がります。
まとめ
甲状腺機能亢進症は、早期発見で早期に治療を施すことができれば、症状を未然に防ぐことや症状の悪化を抑えることもできます。甲状腺ホルモン剤は一生涯に渡り投与する場合もありますが、このホルモン剤を投与したり、ホルモン数値を定期的に測定することで通常の生活に戻ることも可能でしょう。
甲状腺機能亢進症だけでなく、他の病気に関しても同じことが言えますが、病気の早期発見をするためには、日頃の健康管理はもちろんのこと、ちょっとした異常に気がつけるように愛犬の観察は欠かせません。
日々の観察の中、ちょっとした異変を感じた場合は早めに診察することが大切です。日頃からの積み重ねがなければ異変にも気がつくことが出来ませんので、改めて愛犬とのスキンシップをしっかり行うように心がけてみましょう。
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