「ノミ」や「ダニ」をはじめとした「寄生虫」による病気や症状は様々なものがあり、寄生虫による被害を予防するためにも、知識や予防策を知ることが大事になります。今回は犬の寄生虫のひとつ「バベシア」による症状や予防法について解説します。

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寄生虫とは

「寄生虫」は、犬の世界でももちろん、人間界でも存在するもので、この寄生虫が体内や体に「寄生」することで、様々な悪影響を体に及ぼすものです。「ダニ」や「ノミ」など、この寄生虫には様々な種類が存在し、犬や人間にも様々な寄生虫を原因とした病気が存在します。

こうした寄生虫が、体のどこかを住処にするわけですが、そこは寄生虫にとっては食料の宝庫でもあり、繁殖の場でもあるわけですが、この寄生虫が増えていくことによって、やがて犬の体も衰弱していき、最悪の場合は命の危険も及ぼす影響を持ちます。

知れば知るほどに気持ちが悪くなるかもしれませんが、こうした寄生虫による悪影響を未然に防ぐためにも、しっかりとした知識を持ち、対策をとれるようになれば、寄生される心配もグッと減り、また万が一寄生された場合も、早期発見・早期治療を施すこともできます。

「バベシア症」とは


「バベシア」と呼ばれる原虫に感染している「マダニ」を媒介して、感染を拡げる「バベシア症」。かつては、西日本で猛威を振るい、亜熱帯地域で多く発生していましたが、現在では徐々に東日本以北でも感染が見られるようになってきています。

また、媒介するのがマダニという事もあり、自宅内で飼育していることが多い現代のペット事情では、日本全国どこで生活をしていても、気をつけなければいけない病気になりつつあるようです。

特にマダニが繁殖してしまいやすいような不衛生な環境下では、バベシア症に感染するリスクは高まるといえるでしょう。温暖化によって全国的に暖かくなってきている昨今ですので、地域差というのも少なくなってきているのが現状です。

バベシア症の症状

バベシア症の主な症状は「高熱」が特徴です。高熱といっても、40℃を超える発熱が認められ、命に関わる病気として知られています。

寄生虫は様々な部位に感染し、命を脅かす存在ですが、このバベシアという寄生虫は赤血球に寄生する寄生虫です。バベシアに感染されると、犬の赤血球が破壊されてしまい、やがて初期症状でもある貧血の症状がみられるようになります。

こうして貧血を起こすことで、連鎖的に今度は元気の減退や食欲の低下といった症状を引き起こし、高熱を発するようになるのです。また、腹部が膨満したり、尿の色が濃くなる・血尿がでたりといった症状も併発します。

貧血の状態がさらに進行していくと、最終的には肝臓や腎臓といった臓器の機能障害が起こり、やがて命を落とす結果となるのです。

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バベシアに感染するまで

マダニは「Q熱」や「ライム病」などを媒介する宿主としても知られますが、このバベシアも、マダニによって媒介され、犬の脅威となるのです。

バベシア症は前述のとおり、主にマダニに刺咬され、血を吸われる際に唾液と共にバベシアの原虫が体内へと送り込まれます。その後、バベシアの原虫は血液中の赤血球へと寄生、赤血球を破壊しながら増殖を繰り返していきます。こうした症状は、バベシアに感染してから約2〜3週間で発症しはじめます。

このようにして、バベシア症に感染してしまうと、体内の赤血球が急速に失われていき、貧血の症状を発症してしまうわけです。また、マダニに刺咬される以外にも、犬が傷を負った際に傷口から感染する場合と、母犬がバベシア症に感染していた場合、胎盤を介しての感染が認められる場合もあります。

バベシア症の検査について

バベシア症の感染が疑われる場合には、動物病院で検査を早急に受けることが大事です。バベシア症の検査に関しては血液検査で判定が行なうことができますが、バベシア症独特の尿の状態でも、ある程度の検討は付けることが出来ます。

ただし、血液検査を行わずに尿検査だけで判断するのは危険です。バベシア症と似た症状を表す「免疫介在性溶血性貧血」と呼ばれる病気も存在し、この病気に関してはバベシア症とは異なる治療法になります。

バベシア症と確実に判断するためには、血液検査を行い、確実にバベシア抗体を発見する必要があります。しかし、感染が初期である場合にはバベシア抗体も発見することが困難であるため、検査は複数回行われる場合もあります。

バベシア症の治療と予防策


バベシア症に有効な治療薬は、未だに作られておらず、完治させることは非常に難しいでしょう。そのため、抗生剤・抗菌剤を投与し、バベシアの繁殖を出来る限り押さえ込む方法が取られます。あとは、感染した犬の体力次第といったところですが、症状を緩和させることで、自然治癒を促し、体力を回復させていきます。

こうした治療が行われるため、早期発見・早期治療が望まれます。あまりに病状が進行してしまっていると、犬の体力も落ち、逆にバベシアの勢いが強くなってしまいます。

一刻も早い治療を行わなければ、多臓器不全等を引き起こし、最悪の事態になってしまいますので、発見しだい、すぐに診察をうけるようにしましょう。

バベシア症の治療費はどのくらい?

動物病院によっても費用は変わってきますが、バベシア症の治療費に関しては、おおよそ3万円前後ほどといったところです。

バベシア症の治療に関しては前述の通り、確実に有効である治療薬は存在していませんが、抗生剤注射をうち、飲み薬を数日分飲むことで、バベシア症の症状も緩和させられることが多いです。ただし、これも初期症状であれば安心ですが、症状が重篤化しているようですと、なかなか治療も難しくなってくるでしょう。

検査に関しては血液検査が行われ、先述の通りバベシアが検出されずに症状が見られる場合には、数回の血液検査が行われるため、数万円前後は覚悟しておいたほうが良いかもしれません。

バベシア症は早期発見が大事ですので、マダニに噛まれた恐れがある場合には、特に早急に検査を行うようにしましょう。

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完治することがないバベシア症

症状が一度落ち着き、治ったように見せても、バベシアを完全に死滅させられるわけではありません。症状をあらわさないまま体内に潜み、免疫力の低下や何かしらの原因で、バベシア症を再発させてしまうことも少なくありません。

バベシア症は完治させることが難しい感染症ですので、バベシア症の再発を防ぐためには、愛犬の食生活に十分配慮し、免疫力を下げないような生活を送らせることが大切です。

この他、当然ながらマダニが繁殖しないような飼育環境に努めましょう。不衛生な環境で飼育していると、マダニが繁殖し易いだけでなく、他の病気を引き起こす可能性も高いため、常に清潔な環境下で飼育することが大切となるのです。また、不衛生な環境は、愛犬だけでなく、飼い主さんの健康も損なうこととなるでしょう。

バベシア症は人にも感染する?

バベシア症は犬の命にも関わってくる、恐ろしい感染症です。一方、犬に感染したバベシア症は、人にも感染を拡げるのでしょうか。

犬に感染したバベシアは人に感染をすることはありません。しかしながら、その可能性もゼロではありません。犬からの感染が認められていないだけで、他の動物に感染したバベシア症が人へと感染を拡げた例は、アメリカで認められています。

日本では人に感染したバベシア症は確認されておらず、犬と同じくペットとして多く飼われる猫もバベシア症に感染した例は認められません。

とはいえ、着実にその観戦範囲を広げつつあるバベシア症ですので、どのような経路で感染が拡がるかはわかりません。こうした事態になる前に、マダニを繁殖させない、マダニに噛まれないような対処が大切となります。

バベシア症の予防するために


バベシア症を予防するには、しっかりとしたマダニ対策を行うことが肝心です。また、マダニに関する知識も備えるようにしましょう。

特に注意すべきは、マダニが多く潜んでいる山や川、森などです。公園の草むらにも注意が必要になるでしょう。マダニが活動的になるのは、気温が15℃以上の場合と言われています。春から秋にかけてのシーズンは、特に注意が必要ですので、外に遊びに出る際にはダニ駆除薬の投与をするなどして、しっかりとマダニ予防を心がけるようにしましょう。

また、万が一、犬の体にマダニがくっついているのを発見した場合には、絶対に取ろうとしないことです。既に噛み付いている場合に無理に取ると、頭だけが残り、より深刻な事態になってしまいますので、見つけた場合にはすぐに動物病院に駆け込むようにしましょう。

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