犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は「アイリッシュ・セター」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。

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アイリッシュ・セターのルーツ

1800年前後にアイルランドのハンターたちは、仕事に貪欲で、鼻がよく利き、狩りをしながら遠くでも見つけやすい大型の狩猟犬を必要としていました。

そこで目をつけたのが、アイルランドに渡ったスパニエル種の、「ポインター」や「イングリッシュ・セター」「ゴードン・セター」等の犬種でした。

これらの犬種は狩猟犬として活躍していましたが、さらにこれらの犬種を交配させることで、条件を満たす犬を誕生させたと考えられています。それが赤と白のセターで、「アイリッシュ・レッド・アンド・ホワイト・セター」です。

その後、この犬種から時々生まれる赤毛の犬を元に作られたのが「アイリッシュ・セター」になるのですが、当時は「アイリッシュ・レッド・セター」と呼ばれ、狩猟犬として第一線に立って活躍していました。

狩猟犬だったアイリッシュ・セター

古くから鳥猟犬として使用されてきた、アイリッシュ・セター。獲物を見つけると、伏せをして獲物の位置をハンターに知らせるという方法で、鳥猟には欠くことができない犬種として知られています。

アイリッシュ・セターの名前の由来にも、こうして獲物の前で伏せているという姿勢から、「セッティング=セター」が付けられたと言われています。

実のところ、アイリッシュ・セターのルーツとなった祖先犬は定かではありませんが、抜群の運動神経と、引き締まった体のポインター、持久力に秀でていたイングリッシュ・セター、体の大きさと力に秀でたゴードンセターなど、これらの犬種が持つ優れた特徴を受け継ぎ、狩猟犬として適したアイリッシュ・セターが作られたと考えられています。

才色兼備なアイリッシュ・セターの能力

かつては狩猟犬として高い能力を発揮していたアイリッシュ・セター。その能力も時代と共に、狩猟犬としての評価から、ドッグショーとしての評価へと変わっていきます。

そのきっかけとなったのが1860年代に誕生した、「パルマーストン」という名のアイリッシュ・セターでした。パルマーストンは、狩猟には適さない長いマズルと、細身の体をしたアイリッシュ・セターでしたが、品評会では非常に高い評価を受けました。

ドッグショーでは、猟犬としての技術ではなく、犬の外見的な美しさが求められますが、パルマーストンは狩猟犬ながら、外見的な美しさも兼ね備えていました。アイリッシュ・セターの愛好家達は、この秀でた2つの能力を維持することを心がけながら繁殖を行い、現代に至っているのです。

現在見られるアイリッシュ・セターは、このパルマーストンが見本になっていると言われており、パルマーストンが多くの子孫を残したことから、多くのアイリッシュ・セターの先祖犬になっているとも言われています。

まさに、アイリッシュ・セターは才色兼備の犬種と言えるでしょう。

アイリッシュ・セターの性格


アイリッシュ・セターは、その見た目の気品溢れる容姿から、一見クールなイメージを持ちますが、実は陽気で愛情深く、やんちゃな性格の持ち主で、いつも家族を楽しませて、笑わせてくれるでしょう。

とにかく家族を喜ばせたり、家族と一緒に何かをすることが大好きな犬種なので、一緒にスポーツやアウトドアをすると良いでしょう。

アイリッシュ・セターは、少し落ち着きに欠けて、飽きっぽいところがあるため、しつけが入りづらい犬種と言われていますが、基本的には飼い主さんに対して従順で、一度覚えたことは二度と忘れません。

また、頑固で、興奮しやすいところもありますが、アイリッシュ・セターの運動能力を満たしてあげることと、きちんと訓練ができれば解消することが多いようです。

とてもフレンドリーな性格で、他の動物や子供とも仲良く接することができるアイリッシュ・セターですが、体が大きく、少し乱暴なところがありますので、赤ちゃんや小さい子供がいる場合は注意が必要です。

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アイリッシュ・セターの被毛

アイリッシュ・セターは、長めの直毛の被毛に全身を覆われており、この被毛は「シングルコート」と呼ばれる下毛がない被毛なので、寒さにはあまり強くありません。

耳、腹部、胸部分、尻尾や四肢の後ろ側に飾り毛があり、この飾り毛は、見た目が美しいだけでなく、狩猟をする際、いばらの棘や木の枝などから、この犬種を守る役割を果たしていたと言われています。

アイリッシュ・セターの被毛のカラーは、「マホガニー&レッド」「濃いチェスナット&レッド」などがあり、ブラックの被毛が入ることは認められていません。また、日本やアメリカではレッドのみが認められていますが、イギリスではレッド&ホワイトも認められています。

アイリッシュ・セターがかかりやすい病気

アイリッシュ・セターが遺伝的に多いと言われているのが、「進行性網膜萎縮」です。網膜が萎縮して正常に働かなくなる遺伝性による目の病気です。まず、視力が低下して夜に目が見えなくなり、そのうち日中も見えなくなり、最終的には失明します。

日頃から、愛犬が何かにつまずいている様子はないか、大好きだった散歩を嫌がっていないかなど、少しの変化にも注意して観察しましょう。

また、「股関節形成不全」という骨の病気にもアイリッシュ・セターは気を付けなければいけません。股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす病気です。

肥満体型は、股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。

アイリッシュ・セターのその落ち着きの欠ける性格から、「胃捻転」を引き起こしやすいと言われています。「胃捻転」とは、胃の内容物が発酵し、発生したガスで胃がパンパンになり、その胃が捻転してしまう病気で、大型犬に多く見られ、致死率も高い病気です。

ついさっきまで元気にしていると思ったら、急にぐったりとするなど、早急に処置をしないと、最悪の場合死に至る病気です。予防としては、食後しばらくは安静にさせることや、水のがぶ飲みは避けること、早食いさせない事など、十分に気を付けてあげましょう。

アイリッシュ・セターにとって欠かせない運動量

アイリッシュ・セターは、本来、1日100km以上の距離を走ることができる骨格や筋肉を持つ犬種で知られており、かなりの運動量が必要になります。最低でも1日2回以上、1回30分から1時間ほどの散歩が欠かせません。

アイリッシュ・セターは、運動不足が続くと、集中力が欠け、しつけが入りづらくなります。また、狩猟犬の性質からか、散歩中に猫や鳥などを見つけた途端、全速力で追っかけることもあります。

これだけの運動量に付き合えるだけの体力を持ち合わせていること、全速力で走り出した時に制しができること、これらの理由から、年配の方が飼育することは諦めた方が良いかもしれません。

アイリッシュ・セターにおすすめの運動とは


本来は狩猟犬として、森や草原を走り抜けていたアイリッシュ・セター。スピードに加え、持久力もあるので、少々の散歩では満足してくれない犬種でもあります。

ただのんびり歩くのではなく、飼い主さんも一緒にジョギングしたり、ドッグランのような広い土地での自由運動や、自転車の引き運動などで運動欲求を発散してあげることも大切です。

また、ドッグスポーツに挑戦してみるのもおすすめです。中でも、「ルアーコーシング」と呼ばれるドッグスポーツは、リールに付けられた疑似餌を追いかけ、タイムを競うという、狩猟犬におすすめのドッグスポーツです。

運動量も相当必要になるスポーツでもあり、他の犬種とも仲良く慣れる機会にも恵まれるので、日頃、なかなか満足させられるほど運動出来てないなと感じるようであれば、こうしたドッグスポーツに参加してみるのも一つの方法です。

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アイリッシュ・セターの人気は?

狩猟犬としても、ショードッグとしても、未だに人気の高いアイリッシュ・セター。1970年代には、最も人気の高い犬種にも選出されるほどの人気を誇っていました。

また、アメリカの第37代大統領 リチャード・ニクソンや、第33代大統領 ハリー・トルーマンといった方々が飼っていた犬種としても知られており、アメリカでは常に高い人気を誇る犬種でもあります。

日本国内においては、小型犬種が人気を独占している状況なので、アイリッシュ・セターのような大型犬種は、なかなか人気ランキングに入ることも珍しいですね。

アイリッシュ・セターは、家庭犬のイメージというよりかは、ショードッグとして飼われている犬種というイメージのほうが強いです。

アイリッシュ・セターの販売価格は?

気になるアイリッシュ・セターの価格ですが、相場としては20万円以上がほとんどです。

また、ペットショップ等で販売される機会も非常に稀で、日本国内ではアイリッシュ・セターのブリーディングを行っている犬舎も少なめ。繁殖頭数も少ないことから、価格が高騰することも珍しくありません。

アイリッシュ・セターを迎え入れたい場合には、ペットショップなどで入荷を待つよりかは、ブリーダーと直接取引を行うか、アイリッシュ・セターのブリーダーと直接取り引きしているペットショップを探すかの、いずれかの方法になってしまうでしょう。

価格の交渉は臨めませんので、価格交渉というよりかは、しっかりと取引内容を確認し、健康体であるアイリッシュ・セターを迎え入れられるよう、飼い主さん側も知識を付ける必要があります。

実は忠誠心を持つアイリッシュ・セター

アイリッシュ・セターは実はとても飼い主(ハンター)に忠実な犬種で、アイリッシュ・セターを使用していたハンターが、ハンティング中にこの犬を見失ってしまうのですが、数年経ってから、この犬を伏せの状態のまま白骨化していたのを見つけ、その目の前には同じく白骨化した鳥があったという伝説もあるほどです。

この犬種は「言うことを聞かない」「覚えが悪い」と言われることがあります。しかし、本来はとても忠実な犬種なのです。

先述したように、アイリッシュ・セターはかなりの運動量が必要になり、この運動欲求を満たしてあげないと、ストレスで吠えたり、噛んだり、物を壊すなど問題行動を引き起こすこともあります。

「言うことを聞かない」と愛犬を非難する前に、運動欲求をきちんと満たしてあげられているのか考える必要があります。

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