遺伝的な要因が多い「肺動脈狭窄症」。気がつけない訳ではありませんが、普段の生活で肺動脈狭窄症の症状を見分けることは非常に難しいでしょう。そのため、定期検診などでの発見が多い病気でもあります。今回は肺動脈狭窄症について解説します。

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肺動脈狭窄症とは


遺伝的な要因が強いと言われる病気「肺動脈狭窄症(はいどうみゃくきょうさくしょう)」。未だに原因が解明されていない病気のひとつですが、その症状は非常に発見しにくく、発見が遅れることも少なくありません。

遺伝的な要因が多いため、症状に気づかずに飼育していき、症状が重くなってから気がついてしまい、症状が重症化することで心不全を引き起こしてしまい、命を落としてしまう場合もある、怖い病気です。

肺動脈狭窄症の症状

軽症であれば、カッと言うような乾いた咳や元気の減退、疲れやすい、活動的でなく運動を避けるようになるといった症状が見られます。しかし、このような症状は意外と見落としがちな症状でもあり、それ以上悪化しないこともあるため、一生気がつかないと言うこともあるようです。

また、腹水によってお腹が膨れてきたり、四肢がむくんでくるといった症状の他にも、失神したり、不整脈や心不全を引き起こすこともあります。

そして、このような症状が悪化してしまうと、呼吸困難といった症状も見られるようになり、うっ血性心不全によって突然死を招く場合もあります。また、生まれつき症状がひどい場合には、生後すぐに命を落としてしまう事もあります。

心臓の役割とは

肺動脈狭窄症を理解するためには、まずは心臓の作り・作用について理解する必要があります。

心臓はご存知の通り、生命を維持するのに無くてはならない臓器の一つですが、心臓の役割は簡単に説明すると、血液を全身へと届けるポンプの役割を果たしています。

心臓へと届けられる血液には、全身を流れてきた老廃物を含んだ「全身から戻ってきた血液」と、肺から流れてきた「酸素を含んだ血液」が届けられます。心臓へはこの2つの血液が届けられ、回収した血液を再び酸素を加え、全身へと新鮮な血液を送り出しているわけですね。

そして、心臓内ではこの2種類の血液が混ざらないよう、4つの部屋に別れ、タイミングよくそれぞれの場所へと送り出しています。

心臓内の4つの場所


心臓内に分けられる4つの部屋は、「右心房」「左心房」「右心室」「左心室」に分けられます。

全身から戻ってきた血液は「右心房」へと流れ、次に「右心室」へと流れた後に肺へ送られます。肺では血液の循環が行われ、血液に含まれる二酸化炭素は呼吸から排出、そして呼吸から取り入れられた酸素は、肺を介して血液に含まれます。

その後、肺から「左心房」へと血液が送られ、「右心室」を通過した後に全身へと送られるのです。このように、心臓は汚れた血液を回収し、肺を介してきれいな血液を全身へと再び送り込むために必要な臓器なのです。

簡単に順を追うと、

1. 全身から右心房へ
2.右心房から右心室へ
3.右心室から肺へ
4.肺から左心房へ
5.左心房から左心室へ
6.左心室から全身へ

という流れになります。

逆流を防ぐ弁の役割

当然ながらこの4つの部屋がなければ、汚れた血液ときれいな血液が混同してしまい、酸素をたくさん含んだ血液を全身へ届けることができなくなるわけですね。また、それぞれの部屋には血液が混ざらないよう「弁」と呼ばれる扉の役割を果たしているものが付いています。

この弁があることで、血液は一方通行に流れ、血液の逆流、つまり血液の混同を防いでいるわけです。

上記のように、心臓は血液を送り込むために必要不可欠なものとなりますが、肺動脈狭窄症は、「肺動脈」と呼ばれる箇所にに異常が発生し、血液の流れが一定でなくなってしまうことで、様々な悪影響が発生してしまう病気です。

血液は心臓を介してタイミングよく排出されなければ、体は健康な状態を維持することができなくなります。このタイミングを狂わせてしまうのが肺動脈狭窄症です。

肺動脈狭窄症を引き起こす原因

肺動脈は、心臓の右心室から肺へと血液を送り出す、非常に重要な役割を持つ動脈で、上記で説明した順番で行くと、赤字で記した3番目の箇所になります。

この肺動脈の入口にある「肺動脈弁」、もしくはその付近の箇所が狭まってしまうことで、肺動脈狭窄症を引き起こします。

こうして、肺動脈の入り口付近が狭まってしまうことで、右心房から送られてきた血液は右心室に溢れてしまうことになり、結果として右心室に負荷がかかってしまいます。

さらに、肺動脈弁の異常によって、上手く肺へと血液を流すことの出来ない右心室は、やがて右心房から送られてきた血液によって肥大化してしまい、収縮力も低下してしまうことで、ポンプの機能が弱くなってしまうのです。

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肺動脈狭窄症から全身へと悪影響

また、肺動脈狭窄症によって肺へと上手く流れていかない血液は、次第に肺にも悪影響を与えるようになります。

肺動脈へと流れる血液の量が低下してしまい、肺は次第に血圧が低下し、呼吸困難などの症状を引き起こす結果となるのです。

このように、心臓内の一部屋で起きてしまった異常により、次第に他の部位へと悪影響を与えてしまうことになってしまうのです。また、心臓の機能がスムーズに行われていないことで、やがて全身に回る血液にも異常が発生してしまい、全身の機能にも悪影響を与えることとなります。

心臓の異常であったはずが、次第に肺の異常を発症し、やがては全身に異常を発症してしまうことになりますので、小さな一箇所の以上であっても油断することは出来ません。

肺動脈狭窄症の治療について

肺動脈狭窄症の治療に関しては、症状の重さによっても変わっていきます。

肺動脈狭窄症の症状が軽度の症状である場合は、特に治療の対象とはなりません。しかし、中度から重度の症状がある場合は、内科治療か外科治療が必要になります。

内科治療が施される場合は、現在引き起こされている症状を緩和するための治療が行われます。具体的な治療方法としては、強心剤や利尿剤を投与し、症状を落ち着かせていく、対症療法が基本となります。

また治療だけではなく、家庭内においても心臓に負担のかかるような行動は避けなければなりません。そのためには、無理な運動をさけるようにするなど、できる限り心臓に負担のかからないような生活を送らせることも重要になってきます。

運動を避け、食事の管理も


このほか、食事療法として、心臓に負担をかけないような食生活を送らせることも必要です。塩分過多では高血圧を招いてしまいますので、塩分を抑えた食事や、ハイカロリーな食事を避けます。また、肥満体質になっても心臓に負担をかけることとなりますので、カロリーや塩分を抑えた、体にやさしい食事を摂ることが必要になります。

症状が悪化している場合には、緩和治療として開胸せずに行うバルーン弁口拡大術か、根治治療として開胸して右室流出路再建術という外科手術が行われます。
しかし、心不全を引き起こしている場合は、術後の経過はあまり良くないようです。

いずれの場合にしても、肺動脈狭窄症を発症している場合には、完治することが難しい病気なので、この病気と一生上手に付き合っていく覚悟が必要となるでしょう。

肺動脈狭窄症を発見するために

どの病気も早期発見・早期治療が望まれますが、肺動脈狭窄症の場合は遺伝的な場合が多いため、発見するためには、病院の検診を受けるなどして発見される事が多いようです。通常の生活を通じては、病気の判断がつきにくい症状なので、このように検診を受けることで、早期発見に繋がることでしょう。

また、幼少期からも発症している場合が多いので、通常の販売業者であれば、子猫の段階で心雑音等が認められ、発見される事もあるでしょう。こうした場合には、販売先からの説明もあるはずです。実際に飼育してからの発見には、非常に難しい症状なので、年に1回の定期健診を受けるなどして発見することが望まれます。

まとめ

犬の肺動脈狭窄症に関しては、先天性の病気では2番目に多い病気と言われていますが、猫ではあまり見られることがなく、珍しい病気です。しかし、中には発症してしまう子もいると思いますので、先述した症状に見に覚えがある場合は、早期発見・早期治療を望むためにも、動物病院で診察を受けることをお勧めします。

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