猫の病気の中でも致死率の高い病気で知られる「猫伝染性腹膜炎(FIP)」。免疫力の低下している猫が発症してしまうことで、ほぼ100%の確率で命を落としてしまう恐ろしい病気です。今回は、この猫伝染性腹膜炎の症状と予防策について解説していきます。

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「猫伝染性腹膜炎(FIP)」について

猫にとって命にも関わる、非常に恐ろしい病気の一つ「猫伝染性腹膜炎」。「Feline Infections Peritonitis」という英語表記の病名にちなんで「FIP」と略される事も多い猫伝染性腹膜炎ですが、この病気は「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」というウイルスに感染してしまうことで、腹水や下痢、嘔吐、といった症状があらわれ、やがては命を落とす結果となる恐ろしい病気です。

その症状も様々なパターンがありますが、症状を発症してしまうとほぼ100%に近い死亡率で猫の命を脅かします。主にウイルスに感染し、その後に免疫力が低下してしまうことで発症する病気ですが、病気に対しての治療や予防に関してはどのようなものがあるのか見てみましょう。

猫伝染性腹膜炎の症状について

猫伝染性腹膜炎は、ウイルスに感染したからと言って必ず発症するわけではありません。発症する猫は、免疫力が落ちていたり、免疫力の低い子猫や老猫に多く見られ、免疫力の低下によって発症することがわかっています。

猫伝染性腹膜炎の症状には、「ドライタイプ」と「ウェットタイプ」の2つのタイプに分けられます。うち、その症状の多くはウェットタイプで、主な症状である嘔吐や下痢、食欲や元気の減少、発熱といった症状に加えて、腹水や胸水、胸膜炎の症状が見られるようになり、これらが原因となって呼吸困難となってしまい、命を落としてしまいます。

一方のドライタイプの症状には食欲や元気の減少の他に、脳や脊髄への炎症や神経症状、目にも症状が現れる事が多く、様々な臓器へもダメージを与えていき、腎不全などの症状も引き起こされ、命を落とすこととなります。

いずれのタイプも命を落とす結果となりますが、ウェットタイプの特徴である腹水、ドライタイプの特徴である神経症状、いずれの症状も状態が悪ければ発症後数日で亡くなる場合も珍しくなく、長くとも数ヶ月で命を落としてしまう事になります。

猫伝染性腹膜炎の原因について

猫伝染性腹膜炎は、猫コロナウイルスの一種であるFIPV(猫伝染性腹膜炎ウイルス)への感染で発症する病気ですが、この猫伝染性腹膜炎ウイルスは本来であれば自然界に存在するウイルスではありません。というのも猫伝染性腹膜炎は、猫伝染性腹膜炎ウイルスが突然変異してしまうことで発症する病気で、この突然変異は猫の免疫力に関係しているのです。

そもそもの感染には、猫伝染性腹膜炎ウイルスを保持している猫との接触によって感染してしまいますが、感染猫の唾液や糞尿、涙、鼻汁などから感染が拡がります。猫同士の喧嘩はもちろん、感染猫とのグルーミングによっても感染してしまうのです。

こうして猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染することでキャリアとなりますが、前述の通り、必ずしも病気を発症するわけではなく、キャリアのまま一生を終える事もあるのです。猫伝染性腹膜炎ウイルスを保持しているだけでは、猫伝染性腹膜炎を発症しない事は説明の通りですが、他に病気を発症している場合や子猫、老猫、ストレスなどによって免疫力の低下しているウイルス保持の猫のうち、約10%程度が猫伝染性腹膜炎を発症すると言われています。

猫伝染性腹膜炎の治療について

猫伝染性腹膜炎を発症してしまった場合、完治させる治療方法はなく、主には対症療法による処置や、症状の重症度によっては安楽死という選択肢も挙げられるでしょう。症状が初期である場合には、抗生剤・インターフェロンなどの投与によって免疫力を高め、症状に対して進行を遅らせる処置が取られます。

また、ウェットタイプであれば腹水によって溜まった水を抜くなどの処置も施されます。しかし、腹水も抜いてもすぐに水が溜まってしまうため、こうした治療も一時的な処置でしかあらず、症状もどんどん悪化していくこととなるのです。

猫伝染性腹膜炎の予防について

このように、一度発症してしまうと手の施しようのない猫伝染性腹膜炎ですが、なによりも免疫力を低下させないことや、感染しない事が一番の予防となります。多頭飼育している場合には特に注意が必要で、1頭が感染してしまった場合には、他の猫もキャリアと考えたほうが良いでしょう。そのため、1頭が感染してしまった場合にはすぐに隔離するなどの対策が必要となります。

また、猫の免疫力を低下させる病気への対策も必須となります。予めワクチンを接種することで予防できる、猫免疫不全ウイルスなどの病気を予防することが、猫伝染性腹膜炎を予防することにも繋がるのです。猫伝染性腹膜炎は免疫力が低下しなければ発症する確立も低い事がわかっていますので、このような免疫力を低下させる病気を発症することが命取りとなるのです。

しっかりと毎年の予防接種を受けるようにし、また、飼育方法も完全室内飼いをしていれば、猫伝染性腹膜炎を発症することもないでしょう。ウイルスはどういった経路で侵入してくるかわかりません。飼い主さんが、外でキャリアの猫と接して持ち帰ることも考えられなくはないのです。

まずは飼っている猫の免疫力を低下させないことが一番大事です。飼育環境を整え、常に健康な生活が送れるようにし、毎年の予防接種も必ず接種するようにしましょう。

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