肉食動物の猫であっても少量の野菜を摂取することは、整腸作用によい効果を得る場合もあるのです。猫に野菜を与える必要はないというのが常識ですが、野菜の種類によっては与え方や量を守れば、猫の健康維持にも繋がるのです。今回は野菜と食物繊維について解説します。
猫と野菜の消化に関して
猫は本来、野菜を必要としない完全な肉食の動物ですが、微量ながら「食物繊維」を摂取することで、整腸作用に良い効果を持たせる事ができます。
野菜から摂取される食物繊維は、猫の栄養に変わることはありませんが、微量の野菜を摂取する事は猫の腸内に良い作用をもたらし、便秘がちな猫や毛玉の問題に悩まされている猫にとっては、サプリメント変わりにもなる食物なのです。
とはいえ、野菜をたくさん取れば良いというわけではありません。猫は野菜等の食物繊維を消化することが苦手なために、大量に摂取してしまうと下痢を引き起こしてしまいます。これは、肉食動物と草食動物の「腸」の長さに関係するものです。
野菜等の食物繊維は、消化するのに時間を要するため、猫のように肉を消化するのに適した短い腸を持つ動物は、食物繊維をそんなに必要としないのです。
小動物が消化した食物繊維を摂取
本来、野生化における猫達は、獲物となるネズミなどが食べていた食物繊維を、ネズミを食べることで少量の食物繊維を摂取していました。食物連鎖の厳しい環境下では、こうして自分の必要な栄養を摂取しているわけです。
小動物の「エサ」となるものには食物繊維も含まれます。そして、小動物が摂取した食物繊維は、小動物の体内で消化されます。猫は野菜などの食物繊維を消化する能力が弱いですが、こうして小動物を捕らえることで、小動物が消化していた食物繊維を摂取しているわけです。
こうした行動から、特に体に問題のない猫であれば、ネズミの胃袋に収まっている程度の食物繊維を摂取するだけで良いという事がわかります。ほんの微量ながら、猫も食物繊維を摂取する必要があるわけです。
猫に野菜は必要?
病院食などのキャットフードでも、食物繊維が多く含まれるものでも割合は20%ほど。日常的に野菜を摂取させる必要はなく、かつ、野菜を直接与える際にもフード中の5%も締めていればいれば多いくらいの量になるでしょう。
猫に野菜は必要?という疑問も多いですが、このように微量ながら猫も野菜を摂取しているので、猫に野菜が必要かというよりも、猫は全く野菜が必要ないわけではないということが言えます。
また、猫が食物繊維を必要とするタイミングというのも関係してきます。毎日のように野菜が必要なのではなく、猫は自分の体の状態を自ら判断して、食物繊維を摂取しようとするのです。主に猫が必要とするのはタンパク質ですので、食物繊維に関しては「たまに」与える程度でも全く問題はないでしょう。
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食べてはいけない野菜を把握しておきましょう
野菜の中には猫が食べてはいけない物もあります。その代表的な野菜が「ネギ類」の野菜です。
ネギ類の野菜には「たまねぎ」や「長ネギ」「ニラ」「にんにく」等がありますが、猫がこのネギ類の野菜を食べてしまうと、ネギ類の野菜に含まれる「アリルプロピルジスルファイド」と呼ばれる成分が赤血球を破壊し、「ハインツ小体性貧血」などの貧血状態を引き起こしてしまいます。
玉ねぎ中毒とも呼ばれるこうした症状は、重症化してしまうと血尿や胃腸障害が起こり、命を落とすこととなります。
致死量に関して明確な量は数値化されておらず、個体差によるものもありますので、万が一与えてしまったり、口にしてしまった場合にはすぐに動物病院に行くほうが良いでしょう。
猫にとってアボカドは危険な野菜
また、ネギ類と同じように命にかかわる恐れがある野菜に「アボカド」も挙げられます。
アボカドには「ペルジン」と呼ばれる成分が含まれており、摂取してしまうと下痢や嘔吐といった中毒症状に加え、胃腸にダメージが加わってしまい、痙攣や呼吸困難などの症状を引き起こしてしまい命を落としてしまう場合もあります。
誤って食べてしまった場合はすぐに動物病院に駆け込み、すぐに解毒して貰う必要があります。自宅内で様子を見すぎず、すぐに駆け込んだほうが安全と言えるでしょう。猫に限らず犬もアボカドに対しては中毒症状を引き起こしてしまいますので、十分に注意しましょう。
このように命に直接危険が及ぶ野菜もありますが、すぐではないにしろ、猫の体にダメージを与える事になる野菜もあります。
尿路結石の元となるシュウ酸
膀胱炎や尿路疾患の原因となる「シュウ酸」を含む「ほうれん草」や、消化不良を引き起こし、胃腸に悪影響を与えることとなる「トウモロコシ」等は、与える際には注意が必要な野菜となります。そのため、猫にこれらの野菜を頻繁に与えるのは避けるようにしましょう。
栄養素に関しては非常に良い野菜ではありますが、デメリットになる要素も多いので、仮に与えるのであれば十分に下処理した状態で与えるようにしましょう。
ほうれん草で言えば、下茹ですることでシュウ酸を除去することができますので、猫に与えるのであれば、こうした下処理は必須の作業となります。また、与える量にも注意しましょう。
ほうれん草はカルシウムの量が多い野菜ですが、デメリットとなる部分もしっかりと理解しておきましょう。
猫にも与えやすい野菜「ニンジン」
貧血予防や目の健康にも効果が期待できる「ニンジン」。人参と言えば「βカロチン」を摂取できる野菜としても知られていますが、残念ながら猫の体ははβカロチンからビタミンAに変換することができません。
しかしながら、にんじんは先にも挙げたような貧血予防や目の健康維持の他にも、豊富に栄養を含む野菜なので、猫であっても効率よく野菜の恩恵を受けることの出来る野菜の一つです。
にんじんを与える際には、しっかりと芯がなくなるまで茹でてみじん切りにするか、すりおろしたものを与えるようにしましょう。そのまま与えてしまうと消化に悪いため、にんじんの良い効果を得ることができません。
また、にんじんの与えすぎにも注意が必要です。にんじんは、ビタミンCを分解する性質もありますので、適量を守って与えなければビタミンCを別に補う必要も出てきます。
あくまでも適量に留めておけば問題はありませんので、猫に野菜を与える際にはニンジンがオススメの野菜と言えるでしょう。
毛球症予防にも効果が期待できる「白菜」
白菜は、毛球症予防にも効果的な「猫草」を食べる感覚と同じで、猫に多く見られる「毛玉」の問題を解消するためにも効果が期待できる野菜です。
日頃から愛猫が毛玉を吐き出せないような仕草や、これまでにも毛球症を引き起こしたことがあるのであれば、白菜を取り入れてみても良いかもしれません。
こうした場合には、猫草を与えた経験もあるかもしれませんが、なかなか猫草を食べてくれない場合もあります。このような場合に白菜を取り入れてみてはどうでしょうか。白菜を与える際には、しっかりと茹でてから、猫が食べやすいように少量にみじん切りにして与えるようにしましょう。
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便秘がちな猫には「芋類」という選択も
普段、愛猫が便をしにくそうにしていたり、便の回数が少ないことは無いでしょうか。こうした便秘がちな猫には「イモ類」を与えるようにしてみてはいかがでしょうか。
繊維質を多く含む「じゃがいも」や「さつまいも」などのイモ類の野菜ですが、しっかりと「芽」を取り除き、消化しやすいように茹でて柔らかくしてあげることで、便秘予防の解消に役立つ場合もあります。
一方、イモ類にはデメリットも。それは、カロリーも豊富なために与えすぎると「肥満」を引き起こす場合もあることです。猫に与える際にはみじん切り等で少量に刻むようにし、ほんの少しのおまけ程度でキャットフードに混ぜてあげるようにしましょう。
まとめ
猫は根本的に食物繊維を必要としていない動物ですが、サプリメントとしてや、消化不良のための対処法として野菜を利用するのは問題ありません。
説明してきたとおり、毎日のように与える必要はないと思いますが、愛猫の弁の状態をしっかりと確認し、問題がないようであれば大丈夫でしょう。
野菜を与える際には便の状態を把握するのは大事です。また、野菜を与えてから12時間は様子を確認するようにし、状態を確認するまでは食物繊維を含む食べ物は控えておきましょう。それで問題がないようであれば、しっかりと消化できている証拠ですので、愛猫の体調を考え、しっかりとケアしてあげましょう。
結論から言うと、猫に無理して野菜を与える必要はありません。毛球症など、消化が必要な場合には効果的かもしれませんが、それよりも質の良いタンパク質を与えるほうが大切です。
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