「ライカ」という犬、ご存じですか?初めて宇宙船で地球を周回した犬のことです。この犬が一体何をしたのか、私たちにどんなことを残したのか、今回は、世界で活躍したヒーロー犬、「ライカ」について考えてみましょう。

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ライカとは

「ライカ」とは、宇宙船で地球軌道を周回した初めての犬の名前のことです。
そのように言うと、とても夢のある素敵な話だと思いますが、ライカは、実験動物として、地球に戻るはずのない宇宙船に乗って宇宙へ送り込まれ、そのまま帰らぬ人ならぬ、帰らぬ犬となったことで有名な犬です。

1950年代から1960年にかけて、ソ連では「宇宙犬」という犬が存在しており、人間が宇宙を飛行することは可能か否かを決定するために、実験として少なくても57回も犬を宇宙に送っています。生きて戻るのもいれば、技術的なミスなどが原因で死んでしまうこともありました。

今回はその中の1頭であるライカについてお話してみましょう。

地球周回計画

1957年、この頃のソ連は、宇宙へは弾道飛行のみで軌道を周回したことがありませんでしたが、当時の最高指導者ニキータ・フルシチョフは、世界にこの国の科学力を見せつけるため、「動物による地球周回計画」という計画を発表したのです。しかし、発表されたのは、打ち上げからわずか1ヶ月前でした。

今でこそ、宇宙飛行士として人間が宇宙へ行ける時代となっていますが、まだこの頃の宇宙は未知な部分が多く、人間が宇宙へ飛んだことはありませんでした。そこで、人間に対して警戒心を持たず、忠実で素直な性格の犬が、実験動物として最適だったと考えられており、20頭以上の犬が宇宙犬としての訓練を受けていました。弾道飛行では、犬だけでなく猿やネズミなども宇宙へ飛んでいます。

宇宙飛行犬ライカの誕生

今回の地球周回計画の偉業を担うことになったのが、「ライカ」「ムシュカ」「アルビナ」という3頭の犬でした。この3頭は、宇宙船や宇宙空間の環境に慣れるため、密封された酸素が薄い部屋に入ったり、宇宙船の出す轟音に耳を慣らしたり、遠心分離機に入ったり、高度200kmの高さに打ち上げられ、パラシュートで下降するという厳しい訓練を3週間に渡って続けられました。

そして、その中の1頭である3歳で5kgくらいのメス犬、「ライカ(別名クドリャフカ、巻き毛ちゃんという意味)」が宇宙飛行犬として選ばれました。なぜ、ライカが選ばれたかというと、オスよりメスの方が排泄が楽であったこと、また訓練では優等生で、性格も穏やかで素直な良い子であったからと言われています。そして、アルビナは補欠で、ムシュカは地上待機とされていました。

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宇宙へ向けて

1957年11月3日、ついにこの日はやってきました。カザフ共和国のバイコヌール宇宙基地で、ライカを乗せるスプートニク2号が打ち上げられるのです。ライカは特別の気密服を着せられ、スプートニク2号内部のアルミ合金でできた小さな気密室に入れられました。ロケットブースターエンジンに点火され、この瞬間、秒速8kmという人間でさえ経験したことのない衝撃がライカを襲いました。彼女の呼吸数は平常時の3~4倍に増え、心拍数は103から240毎分に跳ね上がりました。

心拍数がようやく102にまで回復したのは、大気圏から抜けて無重力になってから3時間後のことでした。このときは、まだライカはエサを食べるなど落ち着いた様子を見せていたようです。しかし、無重力状態になってから5~7時間後、ライカに装着していた計測機器から、彼女の生存反応が一切無くなってしまいました。

ライカはこれもいつもの訓練で、この訓練が終わればまた地球に戻ってこれると思っていたでしょう。しかし、彼女はもう二度と地球に戻ることのできない片道切符を手にして、たったひとりで旅立ってしまったのです。

その後

ライカを乗せたスプートニク2号は、徐々に高度を下げていきましたが、大気圏の再突入が不可能な設計であったため、翌年の1958年4月14日、地球の周りを2570回も回った後、大気圏に再突入し、破壊して燃え尽きました。破壊した場所は、カリブ海、ブラジル、及び大西洋上空を東南方に通過する線上で散乱したと言われています。

その後、1961年4月12日、バイコヌール宇宙基地から若き空軍少佐ユーリイ・ガガーリンを乗せた世界初の有人宇宙船ボストーク1号が地球を1周して、2時間後にガガーリンは無事地球に帰還しました。
このガガーリンが無事地球に帰還できたのは、有人宇宙飛行の材料としてライカの残した生態データが十分に役立ったと言われています。まさに、人類最初の宇宙飛行士は、この小さなライカの犠牲によって守られたのです。

ライカの本当の姿

とても穏やかで優しい性格で、訓練中も他の犬とケンカをすることがなかったライカは、この計画に携わった科学者にも愛され、「彼女が宇宙へ行く前に良い思い出を作ってあげたい」と、科学者の一人が自宅に連れて帰って子供たちと遊ばせてあげていました。
宇宙犬として、日々辛い訓練ばかりしていたライカにとって、唯一このときは家族らしい経験ができたのかもしれません。

【宇宙で地球周回した初めての動物】
ライカはこのような英雄犬になりたかったでしょうか。
ライカは、ただ人間の傍で生きていたかったのではないでしょうか。
また人間と一緒にいられる。
そう期待して、どんな訓練でも我慢したのでしょう。
人のために犠牲のなるのは、いつも決まって小さい命です。こうした犠牲があったからこそ、今私たちは暮らしているということを改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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