世界一醜い犬を決めるコンテスト「アグリエストドッグ」。非常に「醜い」犬たちが競うコンテストですが、実は大会のコンセプトには「里親探しを促進させる」という、犬たちからのメッセージと動物愛護に関する大きなテーマがありました。

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世界のドッグショー

犬のコンテストと言えばドッグショーですが、ドッグショーとは「血統」を持つ犬種達の、スタンダード=その犬種の標準とする姿・形などを、より美しい姿であるとする犬に贈られるコンテスト。そのために、ブリーダー達を始めとした愛犬家達が、必死に犬の容姿を整え、また美しく見えるように仕上げていくのです。

そんなドッグショーの、日本で最高峰となるのが「ジャパンケネルクラブ(JKC)」が開催するドッグショーです。他にも、FCI加盟国のアジア地区で開催される「アジアインターナショナルドッグショー」も有名なドッグショーのひとつです。

そして、世界で開催されるドッグショーには3大大会と呼ばれる3つのドッグショーがあり、イギリスの「ザ・ケネルクラブ」が開催する「クラフツ・ドッグショー」、アメリカの「ウィストミンスターケネルクラブ」が開催する「ウェストミンスター・ケネルクラブ・ドッグショー」、もう一つがFCI加盟国から開催地を順に回る「ワールド・ドッグショー」、これら3つのドッグショーが世界三大ドッグショーと呼ばれています。

世界一醜い犬コンテスト

コンテストと言うと、上記に挙げられたようなドッグショーや、美しい女性に贈られるミス・ユニバースなどがありますよね。ところが、世界には、ちょっと変わったコンテストや賞があります。映画界でも、その年の最高の映画にはアカデミー賞が贈られますが、その年の最低の映画に贈られるゴールデンラズベリー賞というものがあります。そんなちょっと変わった賞が、実は犬の世界にもあるんです。

そのコンテストとは「アグリエストドッグ(The World’s Ugliest Dog)」と呼ばれるコンテスト。「ugly=醜い」という事で、世界一醜い犬のコンテストと呼ばれています。優勝賞金は1,500ドル(約15万円)!

このコンテストはカルフォルニア州ペタルーマで開催される「ソノマ・マリンフェア」というイベントの中の一つで、1970年代から続く人気のイベント。現在では「アニマル・プラネット」がスポンサーになるなど、数千人を集めるほどに人気の高いイベントです。

近年では、日本でも「ブサカワ」なんて言葉も流行っていましたが、この大会の「醜い犬」という言葉に拒否反応を示す人も少なくはありません。というのも、実際に優勝を飾る犬たちは、ブサカワというよりも、不気味という言葉が合うような外見をしている犬達が多いからです。

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醜い容姿の裏にある、大切な物語

そんなアグリエストドッグコンテストですが、決して醜い犬をを笑い飛ばすような大会ではなく、大会主催者であるCEOのコメントにも「私たちは犬達の欠点や問題に関わらず、全ての犬やペットを自信を持って讃えたい」という言葉が出ています。

他のサイトでも取り上げられていますが、3連覇を成し遂げたチャイニーズ・クレステッド・ドッグのサムに関しては「ゾンビ」という言葉が躍るほど、正直な所、決してかわいいとはお世辞にも言えない犬たち。

ところが、彼らの背景を知ると、そこにはとても大切な物語があるということに気が付かされます。そして、この容姿であるからこそ、私達に伝わるものがあると言う事にも気が付かされます。

3連覇の偉業を成し遂げたサムの一生

アグリエストドッグでは2003年〜2005年の3年連続で優勝するという偉業を成し遂げた、チャイニーズ・クレステッド・ドッグのサム。その容姿も、シワとシミだらけの皮膚に鼻の下にはできものがあり、歯は不正咬合。目は白内障にかかって白くなっているため、まるでホラー映画にも出てくるような容姿。確かに「醜い」という言葉が当てはまってしまうサムですが、実はこんな過去が。

1990年にブリーダーのもとで生まれたサム。しかし、生まれた当時の姿からか、サムはブリーダーに捨てられてしまいます。その後サムは愛護団体によって保護されますが、サムのあまりにも特徴的な容姿のためか、なかなか里親が決まらなかったそうです。

ようやく里親が決まったのは1999年。里親となる男性の元でサムは愛されることになりました。その後のサムは、他の犬と何ら変わらず、飼い主のもとで幸せに暮らすことになりますが、ジョークのつもりで参加してみたアグリエストドッグで見事に優勝。そして、3連覇を成し遂げることに。

サムは残念ながら享年15歳で亡くなってしまいましたが、サムの偉業はアグリエストドッグの知名度を押し上げる物になり、多くの人々にサムの存在やサムの生い立ちが知られることになったのです。サムから学ぶべきこと、それは悪質なブリーダーの存在だけではなく、サムのような犬たちもいるという事、そして新たな飼い主を待っているという事です。

歴代の優勝犬とその背景

2010年優勝のチワワのMIX犬のプリンセスアビーは、近親交配のためか、前後の足の長さが違い、背骨も彎曲しています。2015年優勝の、ピットブルとダッチ・シェパードのMIX犬のクァジーモド。クァジーモドは、脊柱障害があるために、まるで胴が無いような体型をしており、シェルターに収容されていた犬でした。
2008年優勝のチャイニーズ・クレステッド・ドッグのガス。片目が潰れ、足も3本。また、皮膚がんを患うガスの飼い主さんは、優勝賞金をガスの治療費にあてたとのことです。

2007年に優勝した、チャイニーズ・クレステッド・ドッグとチワワのMIX犬のエルウッド。エルウッドもまた、見た目が醜いためというだけでブリーダーに安楽死させられる寸前に引き捕られた犬でした。2011年に優勝したヨーダもエルウッドと同じMIX犬ですが、ヨーダはアパートの裏に捨てられているところを、現在の飼い主さんが発見して飼うことに。

2000年〜2001年に優勝したナナ。ナナも、1992年に動物シェルターから引き取られた犬でした。2014年優勝の、チワワとシーズーのMIX犬のピーナッツ。不正咬合のためか、口を閉じることが出来ないため、歯は常にむき出しの状態で、目は斜視の状態。ピーナッツもまた、シェルターに居た犬で、里親が見つかるまでに9ヶ月を要した犬でした。

まとめ

アグリエストドッグというコンテスト。パッと見ただけだと、単に醜い犬を笑い飛ばすようなイベントに見られますが、コンテストの趣旨には「シェルターに引き取られる捨て犬達の、里親探しを促進する」というコンセプトがあります。

彼らが醜ければ醜いほど、その注目度も上がる事になりますが、それも彼らのような過去を持つ犬たちがいるという事のアピールや、今一度、動物愛護に関して考えなければいけないと立ち止まらせる為のものなのです。

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