災害や事故が起きた際に、私達の命や安全を守ってくれる犬たちの仕事。実に様々な種類の仕事が存在していますが、水難に特化した犬の仕事「水難救助犬」をご存知でしょうか。今回はこの水難救助犬について調べてみたいと思います。
「水難救助犬」とは?
夏になると増えてくる海や川での水難事故。2016年では約600~700件もの水難事故が発生し、そのうち約半数近くの方が、命を落としてしまったり行方不明になったりと、決して他人事ではないものでもあります。ドラマなどでも「海猿」を始めとした、海や川での海難事故での救出を題材としたものがありますね。そんな水難事故での救出劇は人間だけでなく、犬も活躍しているということをご存知でしょうか。
「水難救助犬」と呼ばれるこの犬たちは、海や川で溺れている人を救助することを仕事とする犬たちで、溺れている人にロープや救命胴衣を渡すだけでなく、溺れている人の服などに噛みつき、安全な場所まで運んだり、意識を失ってしまっている人を探し出す等、その活動や救出方法も様々です。
2頭のペアで救助に向かうことが基本で、2頭が溺れている人の腕を咥え、安全な場所まで連れて行ったり、時には水中に潜って下から押し上げ、溺れている人が呼吸ができるように補助したりと、その働きや能力には頭が下がるばかりです。
「泳ぎ」が得意な犬種「ニューファンドランド」
水難救助犬の特徴的な資質はやはり「泳ぎが得意」という事です。犬は水かきで泳ぐイメージで、本当に人を助けられるの?と思いがちですが、犬種によっては泳ぎを得意としている犬種も存在します。その犬種が「ニューファンドランド」という大型犬です。逸話ではニューファンドランドが、あのナポレオンも救助したこともあると言われているそうですよ。
ニューファンドランドは、カナダにある漁業が盛んな離島「ニューファンドランド島」を原産にもつ犬種で、昔から海に出る漁師たちの仕事を手伝ったり、海で溺れる者を救助したりと活躍してきました。このように泳ぐことが多い地方で生まれたニューファンドランドは、ほとんどの犬種には見られない「水かき」がある犬種としても有名です。
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水難救助犬の出動
水難救助犬はこのニューファンドランドを始め、ラブラドール・レトリバーやフラットコーテッド・レトリバー、ゴールデン・レトリバーなどの犬種も水難救助犬として活躍しています。すでにペット先進国である欧米等では水難救助犬があたり前に確立されている状況で、人々の認知も高いようです。
また驚きなのが、水難救助犬は救急センター等から派遣されるのではなく、その多くが水辺のそばに住む地元の犬たちで、すぐに出動・派遣ができるように訓練されているということです。確かに、溺れてから出動していては遅いですからね。
このように水難救助犬はすぐに駆けつけられる距離にいて、溺れている人をすぐに助け出すことが仕事でありますが、そんな水難救助犬の活躍が有名となる名犬が1930年代にいました。
生涯27名もの人を救助した名犬「スウォンジジャック」
1930年代に水難救助犬として大活躍した「Swansea Jack(スウォンジジャック)」。この当時はまだ確立されていなかった「フラットコーテッド・レトリバー」に近い体型をしていたスウォンジジャックは、27名もの命を救った水難救助犬のスター的存在です。イギリスのウェールズ地方に生まれ育ったスウォンジジャックは、容姿や体格こそ普通の犬でありながら、その水泳能力は秀でたものがあったようです。
1931年6月、川で溺れている少年(12歳)を岸まで運び、助け出したことから、スウォンジジャックの活躍が始まります。しかし、この救出劇はまだ話題には上らずだったようです。しかしながら、1930年に生まれたスウォンジジャック、わずか1歳前後程でこの活躍なので、その潜在能力の高さが伺えますね。
その後、スウォンジジャックが一躍有名になるのが、少年の救出劇からわずか数週間後のことでした。2度目の救出劇となったのは、ドックで溺れていた人を救出した時で、この救出劇を多くの人が見守っていました。この救出劇は当時の新聞にも取り上げられることとなり、地元市議会からは栄誉の印として「シルバーカラー(銀色の首輪)」の授与も行われました。
今も語り継がれるスウォンジジャックの功績
スウォンジジャックの活躍はこれだけにとどまらず、その後も人々を救っていき、1936年にはイギリスの「London Star」誌から「Bravest Dog of the Year(最も勇敢な犬 大賞)」に選ばれ、ロンドン市長からはシルバーカップの授与、動物福祉の向上を目指す団体「NCD(現:Dogs Trust)」からは2つのブロンズメダルが授与されるなど、その功績が称えられました。
そんなスウォンジジャックの最期は突然訪れます。1937年、殺鼠剤(ねずみを駆除するための毒薬)の誤飲によってスウォンジジャックは命を落としてしまったのです。スウォンジジャックが亡くなった後は市民によって資金が募られ、墓碑が建てられました。享年7歳という若さでスウォンジジャックは一生を終えてしまいましたが、生涯で27名もの命を救った英雄として、スウォンジジャックの功績は今もなお称えられ続けています。
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日本での水難救助犬の
ペット先進国である海外では、水難救助犬が一般的な犬の仕事となっていますが、ここ日本ではと言うと、まだまだ水難救助犬の認知や普及が遅れているというのが現状です。
日本では「一般社団法人 日本ウォーターワーク協会(JWWA)」が水難救助犬の訓練や、競技会を開催して水難救助犬の育成・向上に貢献されており、水難救助犬になるための試験や認定なども行っています。
日本は海に囲まれた列島。水難救助犬の存在は必要不可欠なものであるでしょう。これからどんどんと水難救助犬が増えていき、1人でも多くの人が命を落としたり、事故に見舞われないように祈るばかりですね。筆者も泳ぐことができない人間のため、水難救助犬の存在は心強いものです。たくさんのスウォンジジャックのような水難救助犬が育つと良いですね!
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