猫の心臓に異常が起きることで発症する「僧帽弁閉鎖不全症」という病気。いつもなら元気に飛んだり走り回ったりするのに、僧帽弁閉鎖不全症を発症すると、運動することを拒むようになります。今回は僧帽弁閉鎖不全症の症状と原因について解説していきます。

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僧帽弁閉鎖不全症とは?


愛猫が室内を走り回ったり、キャットタワーを飛び回ったりしていると、最近咳き込んだり、疲れやすいなどの症状が見られることはないでしょうか。

こうした症状が見られる場合には、もしかすると「僧帽弁閉鎖不全症」と呼ばれる、心臓の病気である事も考えられます。

僧帽弁閉鎖不全症の原因となる「僧帽弁」とは、心臓内の、左心室と左心房と呼ばれる4つの部屋を区切っている2枚の薄い弁の事を指しますが、この僧帽弁が血液の逆流を防ぐ働きをしています。

この僧帽弁に異常が起きることで、元気の減退や呼吸が苦しくなると言った症状が発生し、呼吸困難などの症状を引き起こしてしまうのです。

僧帽弁閉鎖不全症の症状について

僧帽弁閉鎖不全症を発症してしまうと、走ったり飛び回ったりなど、運動した後に咳込んでしまったり、非常に疲れやすくなると言った症状も見られるようになるため、自発的に運動をしたがらなくなるでしょう。

また、症状が重症化してくると、肺水腫を併発してしまい、そのことが原因で呼吸困難の症状も見られるようになり、常に口を開けていたり、苦しそうに呼吸をするというような様子が見られます。

肺水腫とは

生命を維持するのに、非常に重要な役割を果たしている「肺」ですが、肺は本来、血液中へと酸素を送り、また、二酸化炭素を排出させる役割も果たしています。

この酸素と二酸化炭素を交換する働きをしているのが、肺の中にある「肺胞」と呼ばれる部分ですが、肺水腫はこの肺胞などに水が溜まってしまい、本来持つ肺の機能が果たせなくなってしまう状態になる病気なのです。

特に僧帽弁閉鎖不全症などの心臓の病気を患っていると、心臓の働きが正常でないために血液の流れが滞ってしまい、肺の中の肺胞を繋ぐ毛細血管の内圧が上昇してしまいます。その結果として水分が外側に押し出されるかたちとなり、肺に水が溜まってしまうことで「肺水腫」が引き起こされてしまいます。

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肺水腫の症状について

肺水腫が引き起こされると、咳が出てきたり、息が荒くなったりと言った症状が現れはじめます。ゼーゼーとした息をするようになり、常に呼吸をすることが苦しそうになるでしょう。こうした状態が酷くなると、呼吸困難などの症状も見られはじめます。

さらに病状が進行していくと、酸欠状態になっていくために口腔内にチアノーゼの症状が見られるようになったり、泡状の鼻水が出てきたりもします。吐き気をもよおしたり、ヨダレの量も増えてくることでしょう。

こうして肺が正常に働かなくなってしまい、結果として命を落としてしまう結果を引き起こしてしまうのです。そのため、肺水腫は、早期に発見・治療を行わければ、最悪の事態にもなりかねない結果を招いてしまいます。

チアノーゼの症状について

「チアノーゼ」とは血液中の酸素濃度が極端に減少してしまうことで、猫の体の粘膜部分が白〜紫色に変色してしまう症状のことを指します。

主に歯ぐきや下にチアノーゼの症状が現れやすいですが、通常であればピンク色をしているはずの部分が、青白くなってしまう状態になるのです。これが人間ですと顔面蒼白になったり、手足の色が悪くなることがありますが、猫の場合は顔に出るというより、歯ぐきや下に症状が見られるようになります。

チアノーゼを引き起こす要因は主に酸欠状態であることが挙げられますが、心臓にトラブルを抱えている場合や、血液が関係している病気を発症している場合、身近なものでは熱中症の症状の一つとしてもチアノーゼが見られます。

僧帽弁閉鎖不全症の原因とは


先述しましたが、僧帽弁閉鎖不全症の原因となる「僧帽弁」とは、心臓内の、左心室と左心房と呼ばれる4つの部屋を区切っている2枚の薄い弁の事を指しますが、この僧帽弁が血液の逆流を防ぐ働きをしています。

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓内の僧帽弁が変性することで、僧帽弁が肥大したり、弁がしっかりと閉じなくなってしまったりします。これによって、心室の壁が厚くなる心肥大や、心室が広がってしまう心拡大といった症状を発症してしまいます。

このように僧帽弁が変性してしまうのは先天的に発症することが多いと言われていますが、5〜6歳位の中高齢期から突然発症するケースもあります。僧帽弁閉鎖不全症は年齢を重ねるとともに、症状も悪化していく場合が多いので、早期発見・早期治療が重要となるでしょう。

僧帽弁閉鎖不全症の治療に関して

僧帽弁閉鎖不全症を発症した場合の治療に関しては、外科手術によって心臓内を治療することは、非常に困難な治療となるため、投薬治療などによる内科治療が中心となるでしょう。

症状に応じて、対症療法が行われる他、体重の管理や食事の管理、生活の管理など、様々な点に関して対応していかなければいけなくなります。

残念ながら僧帽弁閉鎖不全を完治させる方法はありませんので、こうした治療や療法を中心にしていくようにし、激しい運動はさせないなどの生活上の制限も注意して行かなければいけません。

僧帽弁閉鎖不全は犬に多い病気

僧帽弁閉鎖不全症は、犬にはよく見られる病気ですが、猫では比較的発症例は少ない病気と考えられています。また、苦しくても我慢して散歩へ出掛けてしまう犬とは違って、猫は苦しいと動きたがらなくなります。

飼い主さんとしては、できるだけ早く愛猫の異変に気が付き、早期発見・早期治療を行うのが最善の方法となります。日頃から愛猫の活動量を意識的に確認しておくのはとても大事なことです。

特に年齢を重ねてくると、若い頃のように遊び回る様子も見られなくなりますが、年齢のせいかなと思ってしまうのも珍しくありません。飼い主さん自体も愛猫が動いたり、寝ていたりする様子はいつもの風景でもあり、見慣れてしまうことが当たり前です。今一度、愛猫の様子をしっかりと見守るようにしたほうが良いでしょう。

食欲や体重にも変化が


僧帽弁閉鎖不全にかかわらず、愛猫の健康チェックはこまめに行うようにしましょう。ポイントとなるのは、愛猫の食欲や運動量、排泄です。

猫は偏食なケースも多いですが、またいつものより好みだと決めつける前に、まずは具合が悪そうではないか、他に思い当たるおかしなところがないかを考えてみましょう。

何かしらの病気を引き起こしていると、食欲だけでなく、体重も極端に減少していきます。そのため、日頃から愛猫の体重を把握しておくことは大事です。正確ではなくとも、自宅で体重を計測することは出来ますので、こまめに体重を測る癖を付けておきましょう。

また、排泄の量も減ったり、尿の臭いが変わるなどの変化があれば、何かしらの病気を引き起こしている可能性も否めません。食事を摂らなくなる場合には、より好み以外にも何かサインを出している可能性を否定しないようにしましょう。

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皮膚や被毛にも悪影響が見られるように

愛猫が体調を崩し、食欲も低下していくと、今度は皮膚や被毛にも悪影響が見られるようになります。

最近、毛艶が悪いと感じた時や、被毛の触り心地が悪いと感じたことはありませんでしたか?こうした症状に加え、食欲も落ちているようであれば、すぐに動物病院に行って、一度検査を行ってみたほうが良いでしょう。

さらに、運動を嫌がっていたり、行動範囲が狭い、動く様子が見られないといった場合には僧帽弁閉鎖不全を始めとした、内臓系の病気を引き起こしている可能性もあります。

様子を見ることよりも、手遅れになる前にまずは動物病院で検査を行い、万が一の場合に備えておくことをオススメします。どんな病気も早期発見・早期治療がカギとなるのです。

僧帽弁閉鎖不全症を予防するために

前述の通り、高齢期であれば「年をとったから動かなくなった」と勘違いされることも多く、僧帽弁閉鎖不全症と気付くことが遅れてしまうこともあるのです。そのため、出来る限り早期発見・早期治療を行うために、定期的な健康診断を行うことが重要だと言えるでしょう。

5歳過ぎの中高齢期になってくると、僧帽弁閉鎖不全症だけではなく様々な病気のリスクも高くなってくる頃ですので、最低でも年に一回は定期的に健康診断を行うほうが安心でしょう。

また、健康に気を使った食事を摂らせるようにし、適度な運動をして体力をつけることで、様々な病気への予防にも繋がります。少しでも長生きをしてもらえるよう、健康に気を使った生活環境を整えることが大切です。

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