猫の心臓が正常に働かなくなる「心筋症」。この心筋症には3つのタイプがあり、それぞれに違った症状があります。原因不明である場合が多いこの心筋症ですが、病気をよく知ることで、こうした病気に備えることも大事です。今回は心筋症について解説していきます。

スポンサーリンク

心筋症とは


生命を維持するのに欠かせない臓器の心臓。「心筋症」はこの心臓の筋肉である「心筋」に異常が起こることで発症します。
心筋症を引き起こす事で、心臓の機能が正常に働かなくなってしまい、様々な病気を併発したり、麻痺症状を引き起こしてしまったりします。

残念ながら心筋症について、何が原因で発症するかという事がわかっておらず、現在では治療を施す方法がありません。

そのため、心筋症を引き起こさないようにする予防策が非常に大事になっており、また、万が一発症した場合にも、症状をできるだけ和らげるといった方法が取られています。

心筋症を引き起こす原因は正確にわかっていないものの、心筋症には3つのタイプがあり、いずれも症状や考えられる要因が違っています。発症する原因の解明には至っていませんが、心筋症のタイプを理解することで、対処する方法が見えてきますので、しっかりと理解したいところです。

猫に最も多い「肥大型心筋症」

猫が発症する心筋症の中でも、一番に多いタイプがこの「肥大型心筋症」です。

肥大型心筋症の症状は、「左心室」の筋肉の肥大が原因となり、心室の許容量が減少することで、送り出せる血液の量が減ってしまい、やがて「拡張機能不全」を引き起こしてしまうタイプの心筋症です。

肥大型心筋症を比較的多く発症すると見られている猫種には、「ペルシャ」「メインクーン」「アメリカンショートヘアー」が挙げられます。とはいえ、これらの猫種以外でも発症する可能性はあります。

また、肥大型心筋症は主に「6歳〜10歳前後」の「オス猫」に多く発症するというデータがあります。ですので、この特徴に該当する場合には、少し用心しておいたほうが良いかもしれません。

タウリン不足が招く「拡張型心筋症」

「拡張型心筋症」は、体温の低下と脱水症状が起きる心筋症のタイプです。

何らかの理由で心臓の内腔が薄くなり、左心房や左心室が拡大してしまうという心筋症のタイプで、やがては血液を送り出す力が弱くなる「収縮機能不全」に陥る可能性のある心筋症です。

拡張型心筋症の好発猫種には「シャム」や「アビシニアン」が比較的多く見られると考えられており、その要因として、アミノ酸の一種「タウリン」の摂取不足によって拡張型心筋症を引き起こすと見られています。しかし、特発性のものも存在し、この見方もその限りではありません。

多くのキャットフードには「タウリン」が配合されていますので、根本的には拡張型心筋症の予防が行われているはずですが、突発性の拡張型心筋症に対しては予防策も取れないため、遺伝的な要因に関係しているのではとも考えられています。

「拘束型心筋症」は高齢猫に多い心筋症

拘束型心筋症は老齢の猫に多く見られる心筋症で、心臓内部を覆う繊維質が肥厚することで、心臓の壁が固くなってしまい、伸縮しなくなってしまう心筋症です。また、「中間型心筋症」とも呼ばれ、他の心筋症を併発することもあります。

本来であればポンプの要領で常に動いているはずの心臓ですが、拘束型心筋症はこのポンプの動きが停止してしまう状態であるため、心筋症の症状以前に、生命を維持することすら危険が及ぶ心筋症です。

さらに、拘束型心筋症を発症した後に、肥大型心筋症や拡張型心筋症を併発する場合もあるため、他の心筋症に比べて重症度は高いと言えるでしょう。悪いことに高齢猫に多い心筋症であるため、体力などを考えても予後としてはあまり良いとは言えません。

心筋症の症状について


心筋症の初期症状では、元気の減退や食欲の低下、活動的でなくなるといった症状が見られますが、実際のところはほとんど無症状に近い状態であるため、飼い主さんもなかなか気がつかない場合が多いようです。

ようやく異変に気がつくのが咳や呼吸の乱れが見られる症状で、初期症状からさらに病状が進行していくと、はぁはぁと口を開けて呼吸を繰り返すようになります。さらに症状が進行していくと、呼吸困難を引き起こしてしまったり、後肢不全麻痺を引き起こしてしまうケースもあります。

この他、場合によっては突発性の心筋症を発症するケースもあり、突然失神してしまったり、突然死してしまうというケースもあります。心筋症のタイプによっても症状は微妙に変わっていきますので、コレと絞るのは難しいでしょう。

心筋症の簡易的な検査方法

心筋症を引き起こすと、血の巡りが悪いために、歯肉や下の色が悪くなり、紫色に変色してしまうという症状も見られるようになるでしょう。心筋症は知らぬ間に病状が進行している場合も多く、気がついたら血の巡りが悪くなっている事もありますので、注意が必要です。

心筋症の簡易的なチェックの方法として、歯茎を白くなるまで押し、離してから赤みが戻るまでの秒数が「2秒以内」であれば正常ですが、それ以上かかっているようであれば、一度検査を行った方が良いかもしれません。

これは「キャピラリテスト」と呼ばれる簡易的な検査方法で、毛細血管を押し込むことで、血圧が安定しているかを計るものです。一つのチェック方法として覚えておいても良いでしょう。また、あくまでもこれは簡易的な検査方法となりますので、これとは別に動物病院での検診は必須です。

スポンサードリンク

血栓に注意

心筋症で気をつけなければいけないのが「血栓」による症状です。血栓とは、心臓内・血管内に形成されてしまう凝血塊で、異物などとともに血管内に詰まってしまうことで、「塞栓症」を発症します。

塞栓症を発症することで、約70%は死に至る事になってしまい、急性の場合には更に危険な状態になってしまいます。また、一度克服しても、再発しやすいというのも、ひとつの特徴となります。

この血栓を作らせないためにも、心筋症の症状にいち早く気が付くようにし、症状を抑えて、血栓予防をとることが大事になってきます。

心筋症の治療法とは

心筋症を発症した場合の治療法ですが、その多くは、心臓の機能を再生させることが困難なケースが多いようです。また、心筋症の具体的な原因もわからないため、治療というよりかは、悪化を抑えていく対症療法がメインとなるでしょう。

肥大型心筋症の場合には、血管を拡張させる薬剤の投与による治療が施されます。こうすることで、心臓を休ませ、また同時に、血栓を作らせないために、血小板の働きを抑えるアスピリン薬の投与も行われます。

拘束型心筋症では、血管拡張薬の投与で心臓の働きを助け、同時に血栓予防も行います。肺水腫や胸水と言った症状がある場合は、合わせて治療も施します。残念ながら治療後の生存確率も低く、2年持てば良い方という意見もあります。

いずれの症状も、血栓ができてしまっている場合には、血栓を溶解させる処置や、超音波をあてて、血栓を粉砕する方法、外科手術によって摘出するといった方法が行われます。

サプリメントで健康維持のケアを


心筋症はこうした処置が1日でも遅れることで、麻痺状態を引き起こしてしまい、死に至る可能性も高くなる病気です。また、残念ながら心筋症を予防する手立ては解明されていません。

ですが、食べ物は塩分値の低いものを選ぶといったことや、栄養バランスのとれたキャットフードを選択して与えるといったように、毎日の食生活に気を使うことも大事になります。

中には血栓症に効果が期待できるサプリメントや、猫の体に良い効果を与えるサプリメントはたくさんあります。出来る限りこうした健康維持を行い、予防策はないと言われる心筋症ではありますが、少しでも進行を遅らせるようなケアを行い、心筋症と上手に付き合っていくことも大事になります。

心筋症を予防するために

心筋症はストレスのかからないような環境作りをすることでも、猫は安心して生活を送ることができるでしょう。ストレスはどの病気に対してもよくありません。

そして、愛猫の毎日の生活スタイルにも注目するようにしましょう。心筋症の症状でもある、足をひきずるといった行動が見られた場合はすぐに検査しましょう。
できることならば、毎年1回でもよいので、健康診断を受けるという事も大事な予防策となります。

心筋症だけではなく、他の病気に対しても早期発見が可能になりますので、定期検診や年1回の健康診断も、一度考えてみてはいかがでしょうか。病気が出てからでは遅い場合もあります。少しでも早い段階で病気を発見できるよう、最善の策をとるようにしましょう。

スポンサーリンク