黒い毛色の被毛を持つ小型犬で知られる「スキッパーキ」。ベルギー原産のスキッパーキですが、その誕生や名前の由来にはいくつかの諸説がありました。今回はスキッパーキの歴史と特徴について解説していきたいと思います。

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王妃も愛した「スキッパーキ」

かの有名な王妃 マリー・アントワネットも魅了されたことで流行した「スキッパーキ」。スキッパーキとも「シッパーキ」とも呼ばれることがありますが、英語表記では「Schipperke」と表記されます。本文では、一般的に呼ばれるスキッパーキと表記していきます。

15世紀頃の書物からも存在が確認されるスキッパーキ。歴史も古いことから、その名をめぐる由来にも諸説あるようです。そんなスキッパーキの歴史を少し見てみましょう。

スキッパーキと「黒い被毛」を巡る諸説

西ヨーロッパのベルギーを原産国に持つスキッパーキ。前述の通り、ベルギーの古い書物にもスキッパーキは登場しており、犬種を巡る起源やその名にも、様々な諸説が飛び交っている犬としても知られています。

一つの諸説では、スキッパーキの起源・誕生の歴史には、15世紀頃に存在した「ルーベナール(Leauvenaar)」という「黒い被毛の中型犬種」の牧羊犬の存在が関係していると考えられています。スキッパーキもこのルーベナール同様に「黒い被毛」の犬種であることから、このルーベナールこそが、スキッパーキの祖先犬であるとする説があります。

因みにこのルーベナールの祖先犬には、同じく「黒い被毛」の大型犬種「ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダール」であると考えられています。が、こちらも諸説あるため、実際の所は謎のままといったところなのです。

スキッパーキの誕生を巡る諸説

スキッパーキの誕生に関して諸説ありますが、先述にもあるとおり、スキッパーキの祖先がルーベナールと言われる所以には、きちんとした言われがあるためなのです。

ルーベナールを本線とする一説には、19世紀初頭頃、農民たちは飼うことの出来る犬のサイズに制限をかけられていたために、このルーベナールを小型化するように繁殖していき、現在のスキッパーキが誕生したと言われています。

また、もう一説では、17世紀には既にスキッパーキは存在していたという説も。その説には、1690年頃の労働者たちから人気の高かった「スキッパーキ」が、特に靴の修繕屋からも人気が高く、職人が腕を奮って作った首輪をスキッパーキに付け、職人としての腕を競い合ったとされるものでした。

スキッパーキの名を巡る諸説

スキッパーキを巡る諸説には誕生に関するものだけではなく、その名もまた諸説があるようです。一つには、ベルギーのフランドル地方では船のことを「schip(スキップ)」と呼び、スキッパーキが船番として使われていたことから、小さな船長を意味する「schipperke(スキッパーキ)」と呼ばれるようになったとする、「小さな船長」説です。

もう一説には、ベルギーの当時の言葉で牧羊犬を「scheper」と呼んでおり、ネズミ駆除やモグラなどの害獣駆除のために働いていた小型の牧羊犬の事を「schipperke」と呼んだとされる「小さな牧羊犬」説があります。その誕生にも、その名にも、やはりルーベナールが関連するような説が出てくるということは・・

あくまでも諸説ですので真相はわかりませんが、1885年に開催されたドッグショーにスキッパーキが登場した際に、マリー・アントワネットが好んだことからスキッパーキの人気が上がり、それまで農民たちの飼う犬であったスキッパーキが、一気に上流階級の飼う犬に変わっていったとする話があり、またこれを機に諸外国へも広まっていったと言われています。

その後の1888年、ベルギー国内で最も歴史のある愛犬家団体によって、スキッパーキが純血種として登録されることとなり、世界的にも知られることになりました。

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スキッパーキの特徴

Photo credit: Svenska Mässan via VisualHunt / CC BY

スキッパーキの性格は非常に活動的で好奇心旺盛、そのため躾をしっかりと行わないと自由奔放な犬になってしまいますので、初心者向きの犬種では無く、飼育上級者向きの犬種と言えるでしょう。

また、番犬としても活躍していた犬種だけあって警戒心も強いために、見知らぬ人に対しては吠えたりといった行動も見られるので、子供のうちからしっかりと躾を入れるか、しつけ教室に通わせると言った対応が必要になるかもしれません。

しかし、スキッパーキは飼い主と認めた相手には忠実になりますので、しっかりと躾を入れ、上下関係がついてしまえば、立派な番犬にもなり、よきパートナーにもなる犬種でもあるのです。

日本犬にも近いことが言えますが、愛玩犬としてのペットではなく、相棒としてのペットで飼える方が向いている犬種です。また活動的で運動量も多い犬種でもありますので、子供ともよく遊ぶような家庭的な犬にもなります。

スキッパーキの運動量

スキッパーキは体こそ小さいものの、それなりの運動量を必要とする犬種です。そのため、毎日の散歩や定期的なドッグランなど、スキッパーキの運動欲求を満たすためには多くの時間を要することになるでしょう。

1日2回の散歩は当たり前で、広場で遊ばせるなど、たまには思い切り走ることの出来る環境を作ってあげると良いでしょう。また、好奇心旺盛な犬種でもあるので、ドッグスポーツや飼い主さんと一緒に遊ぶ事など、運動以外の刺激も与えてあげると、なお良い環境が整うでしょう。

ポイントとなるのは退屈をさせないことや、十分に体を動かせるタイミングがあるという点です。ケージの中で飼育していたり、散歩が無いような生活を送っていると肥満体質にもなり、ストレスが溜まって問題行動を起こしてしまう要因にもなりかねません。

スキッパーキの「尾」について

実は、スキッパーキは断尾されていた歴史もあるため、生まれつき尾の短い子が生まれる事も多い犬種でもあります。といってもスキッパーキが断尾されていたのは、はるか昔となる15世紀ころのようです。

断尾する犬種として知られているのはコーギーで、家畜に尻尾を踏まれて怪我をしてしまう前に断尾するというのが理由として挙げられていますが、スキッパーキに関しては全く意味はなく、ただ単に断尾されたスキッパーキのスタイルを皆が真似るようになり、断尾する犬種として浸透していったというもの。

こうしたスタイルが浸透していたのは、前述でも説明した15世紀の靴の修繕屋がこぞって首輪を作り合っていた時代。ただの競い合いで尻尾まで切られてしまうとはかわいそうな話ですが、こうして人気を保持していたおかげもあり、今もスキッパーキの子孫が生きているのかもしれませんね。

それから長い年月を経て、近年では尾の長い子も多くなってきているようです。

スキッパーキにはクリームの毛色が存在する?

日本の愛犬家団体「JKC」では、スキッパーキの毛色の基準を「ブラック」のみに定めていますが、海外ではブラック以外の毛色も実は認められています。

スキッパーキと言えば黒いイメージで、前述でも触れてきた黒い中型犬ルーベナールの説も揺らいでしまうような事実ですが、スキッパーキには黒い毛色以外にも「フォーン」や「クリーム」も存在するのです。この毛色に関しては、諸説あるうちのひとつ、ポメラニアンやスピッツの血が入っていると言われる説が濃厚に感じられます。

スキッパーキはブラック以外は認められないのではなく、これは繁殖に関して注意するべきポイントであるだけで、フォーンなどのブラック以外の毛色のスキッパーキでも、しっかりとJKCから血統証は発行されます。

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スキッパーキに多い疾患

スキッパーキが好発する疾患に「レッグ・カルベ・ペルテス病」という病気があります。これは、成長段階で大腿骨の一部が正常に形成されなかったために、歩くことに支障をきたしてしまう先天的な病気です。早期発見することができ、症状が軽症であれば、改善も見られることもあるようですが、重症化してしまっていると外科手術が必要になります。

その殆どが遺伝性であることから、スキッパーキを迎え入れる際には、遺伝的疾患がある血統か十分に確認する必要があるでしょう。また、実際に迎え入れた際にも、念のため動物病院で検査を行うとよいでしょう。

活発な犬種であるために、こうした疾患を抱えてしまうとストレスの要因にもなりかねません。たくさん走り回れるように、幼少期〜成長期は特に注意して見るようにしましょう。

スキッパーキのブリーダー

Photo credit: Svenska Mässan via Visualhunt / CC BY

スキッパーキは、日本国内では比較的珍しい犬種の一つでもありるため、ペットショップなどで見かける機会はまずないと言っていいでしょう。そのため、スキッパーキを迎え入れる際にはブリーダーからの直販という選択になります。

日本国内のスキッパーキのブリーダーに関しては、関東を中心に存在しているようです。出張での販売にも対応している場所もあるようですが、しっかりと犬舎まで行って、子犬の顔を確認したいという方は犬舎まで足を運んで見に行ってみましょう。

価格に関しては、30万円〜50万円といった価格が目立ちます。比較的高い犬種であるといえるでしょう。ペットショップなどに並ぶ事もありませんので、ディスカウントされることもないでしょう。そのため、しっかりと顔を確認してから迎え入れたいところです。

まとめ

様々な説が飛び交うスキッパーキの歴史。しかし、どの説にしても、スキッパーキが人々の暮らしの側に常に寄り添っていたということは明らかですね。それだけ、スキッパーキは人との生活に適していた犬種とも言えるのではないでしょうか。

非常に活発な犬種でもあるので、初心者の方が飼育するには大変かもしれませんが、実際に飼ってみると歴史からも見られるように、良きパートナーとなる犬種でもあると思います。日本ではまだまだ珍しい犬種ですが、迎え入れる機会があれば、スキッパーキとたくさん運動をして楽しんでくださいね!

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