狂犬病と並んで、非常に致死率の高い病気で知られる「犬ジステンパーウイルス感染症」。特に免疫力の低い犬には、注意が必要となります。また、混合ワクチンの接種でも予防することができます。今回はジステンパーウイルス感染症について解説していきます。

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ジステンパーウイルスとは

「ジステンパーウイルス」という病名、犬の病気の中でも、聞いたことがあるのではないでしょうか。
犬ジステンパーウイルスというウイルスに感染することで発症してしまう「犬ジステンパーウイルス感染症」は、「狂犬病」などと並んで、非常に致死率の高い病気で知られる感染症の一つでもあります。その致死率も50%〜90%にも及ぶ数字となっており、さらには完治した後も後遺症が残るほどに強力なウイルスなのです。
また、ジステンパーウイルスは犬だけではなく、「猫」や「フェレット」など、一般家庭でペットとして飼育される多くの動物にも感染してしまう恐れもあります。そのため、ジステンパーウイルス感染犬と一緒にこれらの動物を飼育している場合には飼育場所を分けるなど、特に注意が必要になります。

ジステンパーウイルスに人は感染する?


このように様々な動物にも感染を拡げるジステンパーウイルスですが、人間にも感染することはあるのでしょうか。
実は全く感染しないわけではなく、「麻疹(はしか)」に対しての免疫力がない場合には注意が必要となります。麻疹を経験したことのない飼い主さんは、念のため注意するようにしましょう。
この他、ジステンパーウイルスは「キツネ」や「イタチ」などの野生動物からも感染する場合もあります。中でも有名なのが「ニホンオオカミ」で、すでに絶滅してしまったニホンオオカミは、このジステンパーウイルスの蔓延によって絶滅したとも言われています。
近年においては、2015年に中国でジャイアント・パンダ数頭がジステンパーウイルスに感染してしまい、犠牲になってしまったという事件もありました。

ジステンパーウイルスの潜伏期間

このように、世界中で猛威を振るう事もあるジステンパーウイルス。ジステンパーウイルスは、感染後、おおよそ3日〜6日の潜伏期間を経た後、発熱や咳といった初期症状を発症し始めます。
参考までに、同じく犬の命を脅かす感染症に挙げられる「パルボウイルス」は、感染後、おおよそ2日〜12日間ほどの潜伏期間となります。このように、ジステンパーウイルスはパルボウイルスよりも早く初期症状が現れる場合があるため、より高い致死率を誇っていいるわけです。
ジステンパーウイルスの大きさは約20mm〜22mm、自然環境下でも2〜3日間は感染力も維持しているため、散歩中等でも注意が必要となります。とはいえ、しっかりと予防接種を行い、免疫力をしっかりと維持していれば感染しても、ここまでの心配は必要ありません。

ジステンパーウイルスの症状とは

ジステンパーウイルスは、ワクチンを接種することでほぼ予防することができます。しかし、予防していても免疫力が極端に下がっている場合や、ワクチン未摂取の場合には、ジステンパーウイルスに感染する可能性が高いです。免疫力の下がっている、もしくは低い子犬や老犬、病中の犬においては、特に注意が必要です。
ジステンパーウイルスに感染すると、初期症状では食欲の減退や元気の減退、発熱、咳といった症状が現れます。また、下痢や嘔吐といった症状も見られるでしょう。こうした症状は感染後、約1週間程度で現れはじめます。
こうした症状が重篤化していくと、やがては神経系へと進行し、麻痺や痙攣といった症状を引き起こします。また、てんかんの症状も現れはじめ、こうした症状が現れている際に2次感染を引き起こし、肺炎などの病気も併発してしまいます。また、状態によっては死に至る場合もあるでしょう。

ジステンパーウイルスの後遺症


ジステンパーウイルスの致死率は50%〜90%ほどとも言われており、特に免疫力のない犬においては、ジステンパーウイルスの犠牲となってしまう場合が多いようです。
また、ジステンパーウイルスの感染から完治しても、そのほとんどに後遺症が残ってしまうというのも、ジステンパーウイルスの特徴となります。その後遺症とは、歯のエナメル質形成不全によって歯がボロボロになってしまうというもの。他にも、失明してしまったり、神経症状が現れたりと言った、ジステンパーウイルス特有の後遺症が見られるようになります。
3ヶ月以内の致死率50%以上というのは、他の感染症と比較しても圧倒的に高い致死率であるため、いかに予防接種が大事であるかわかる病気でもあります。

ジステンパーウイルスに感染する原因

犬ジステンパーウイルス感染症の原因となるのは、「犬ジステンパーウイルス」というウイルスに感染してしまうことが原因となります。
前述の通り、ワクチンを接種していない犬はよりジステンパーウイルスに感染するリスクが高くなり、なおかつ免疫力の低い状態にある犬は、特に感染するリスク、命を落としてしまうリスクが高くなります。
ジステンパーウイルスの感染経路は、飛沫感染や経口感染という感染経路のため、感染犬が同室にいるだけでも、感染はあっという間に拡大していってしまいます。
ですので、犬を多頭飼育をしている場合においては、爆発的に感染が拡大してしまうおそれがあるため、感染犬とは部屋を分け、感染犬は隔離して飼育するなどといった方法を取る必要があるでしょう。

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ジステンパーウイルスの感染経路

ジステンパーウイルスの感染経路は飛沫感染や経口感染ですが、具体的にはどのような状態・箇所が危険にさらされるのでしょうか。
具体的な感染経路としては、ジステンパーウイルスに感染している犬の、「唾液」や「排泄物」「目やに」「鼻水」など。これらを未感染犬が口にしてしまうことで、簡単に感染が成立します。
また、感染犬の「咳」や「くしゃみ」も同様に感染を拡大させてしまう行動となり、周辺にジステンパーウイルスが大量に飛散してしまいます。こうして飛沫したジステンパーウイルスを吸い込んでしまった場合においても感染が成立してしまうのです。
このほか、感染犬が使用している「食器」や「クッション」といった物にも唾液などが付着してしまっているため、これらを未感染犬が口を付けてしまっても、経口感染してしまうのです。

ジステンパーウイルス感染症の治療について

ジステンパーウイルスを発症した際には、二次感染を防ぐために抗生物質の投与が行われるでしょう。肺炎等の症状が見られる場合には、肺炎の症状を軽減させるための対症療法が行われ、犬の体力を戻し、自然治癒を促します。
残念がら、ジステンパーウイルスに対する治療薬は存在しません。そのため、こうした対症療法や自然治癒での回復による治療が行われるのです。
しかし、こうしたウイルスに対するワクチンは存在します。子犬であれば4ヶ月まで、成犬であれば年一回接種を行う「混合ワクチン」には、ジステンパーウイルスを始めとした恐ろしいウイルスを予防するためのワクチンが含まれています。混合ワクチンを接種することで、ジステンパーウイルスを治療することはできませんが、防ぐことは出来るのです。

「混合ワクチン」とは


「混合ワクチン」とは、犬の様々な伝染病を未然に予防するため、伝染病に対しての「免疫」をつけるための注射です。
1つの伝染病に対して、1種類のワクチンでしか有効ではありませんので、数ある伝染病に対して一度の予防接種で済ませるため、複数のワクチンを組み合わせて混合ワクチンと呼ばれています。
ワクチン接種のタイミングは、子犬の産まれたタイミングによって変わりますが、通常であれば生後2ヶ月〜4ヶ月の間に3回のワクチン接種をします。こうして、子犬が伝染病に感染しないように免疫力を与え続ける役割をしているのが、混合ワクチンなのです。

予防接種の値段はいくらくらい?

愛犬のジステンパーウイルスの脅威から守ってくれるワクチン。前述の通り、混合ワクチンと言うかたちで、様々なウイルス・感染症から守る事が可能となりますが、ワクチンの種類によって値段も変わってきます。
病院によっても変わりますが、2種混合であれば3,000円〜5,000円ほどとなり、一般的となる6種混合ワクチンですと6,000円〜7,000円程といった値段となります。
ただし、予防接種したといってすぐに安心とは言えません。ワクチン接種後、おおよそ2週間程度の期間を経てからでなければ、ワクチンの効果が現れませんので、ワクチン接種したからといってすぐに安心してはいけません。
ワクチン接種後は体調を崩す犬も少なくありませんので、愛犬の体調管理も含め、ワクチン接種後の2週間程度はドッグランなどに遊びに行かず、安静を心がけるようにしましょう。

ジステンパーウイルスの蔓延を防ぐためにも

ジステンパーウイルスの感染を防ぐためにも、子犬の混合ワクチンは、まさに生命線となるものですので、必ず接種するようにしてください。また、成犬に関しても、ジステンパーウイルスに感染するリスクはあります。万が一感染した場合にも、ウイルスを拡散させないためにも、毎年の予防接種は非常に大事なものなのです。
特に、多頭飼育をしている場合や、子犬が生まれたばかりの状態は危険が多いです。母親からの移動抗体がある内は比較的安心ではありますが、ジステンパーウイルスに限らず、他のウイルスも蔓延してしまうと、一気に感染も広がり、ウイルスが常に飛散しているため、治療するにも大変困難な状況になってしまいます。
手に負えない事態になる前にも、こうしたウイルスを事前に予防するようにし、万が一に備えて飼育するようにしましょう。

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