ズーノーシスであることでも知られる「ブルセラ症」。聞いたことも無い方も多いかと思いますが、実は狂犬病等と並ぶ危険な感染症でも知られる病気です。犬には繁殖能力に影響が及ぶ病気で、注意が必要となります。今回はブルセラ症について解説します。

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ブルセラ症とは

「ブルセラ症」という病気をご存知でしょうか。あまり聞き馴染みのない病名ですが、「ブルセラ菌」と呼ばれる菌に感染することによって、生殖器系に影響を及ぼす感染症で、ズーノーシス(人畜共通感染症)である事でも知られる病気です。また、ブルセラ症の呼び名の他にも「マルタ熱」と呼ばれる場合もあります。

このブルセラ症は、生命を危険にさらす病気とまではいきませんが、オス・メス共に繁殖を考えている場合には、深刻な病気となるでしょう。また、万が一感染が確認された場合には、診断した医師が保健所に届け出なくてはいけない「四類感染症」の対象となっている病気の一つでもあります。

この四類感染症には「エキノコックス症」や「狂犬病」も対象となっており、犬がブルセラ症を発症しても命の危険は伴わないものの、人が感染してしまうと脳炎や骨髄炎といった重篤な症状を引き起こす場合もあり、生物兵器として扱われた事もあるほどに恐ろしい細菌なのです。

ズーノーシス(人畜共通感染症)

「ズーノーシス(人畜共通感染症)」という言葉をご存知でしょうか。ズーノーシスとは、犬に限らず、猫やうさぎ、鳥といったように「ペット」として飼われる動物はもちろん、人間にも感染する感染症の総称です。

現代社会では、こうした様々な動物をペットとして飼育しているシーンが多いですが、犬の散歩中や、猫が外を徘徊中、何らかの理由で感染し、飼い主にも感染が拡がる恐れがあるもので、感染症の種類も様々な病気が存在し、日本国内では約80種もの病気が確認されています。

その中でも特に有名なズーノーシスと言えば「狂犬病」です。狂犬病は、犬・猫・人にかかわらず、猛威を振るう感染症で知られますが、中には犬には症状が無くとも、人には重篤な症状がある場合や、その逆の場合もあるなど、病気によって症状も様々です。

ブルセラ症の感染

このように非常に危険な細菌であるブルセラ菌ですが、現在においても安心のおけないものです。1970年代には日本国内において、ブルセラ症はほぼ撲滅されたと思われていましたが、検疫が不十分だったためにブルセラ菌が入国してしまい、2000年代においても届け出が出されるなど、密かに定着しているようです。

犬がブルセラ症に感染した場合には、オス犬は精巣に炎症が起こり腫れ上がり、次第に腫れが萎んでいきますが、精巣の機能も破壊されてしまい、無精子症となってしまいます。また、メス犬が感染した場合には、妊娠45日〜55日頃に流産してしまうようになり、感染以後も流産を繰り返すようになるため、結果、不妊体質となってしまうのです。

このように犬がブルセラ症を発症した場合には、繁殖能力に影響を与えてしまい、子孫を残すことは絶望的となるでしょう。そしてズーノーシスであるブルセラ症ですが、犬がブルセラ症に感染し、さらに人に感染した場合においては軽症状である場合が多く、次なる人への感染は見られません。

人に感染するブルセラ症と、犬に感染するブルセラ症では、その症状は異なっているのです。しかしながら、危険な病気であることには違いありませんので、注意が必要といえます。

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ブルセラ症に感染する原因とは

2000年代における犬のブルセラ症は、2005年〜2008年の間では静岡、東京、千葉、愛知、大阪、沖縄で発症が認められました。いずれも繁殖施設やペットショップといった、犬が集団で生活しているような場所で感染が認められているため、こうした環境下ではブルセラ症が蔓延し易いということがわかっています。

ブルセラ症は、ブルセラ菌と呼ばれる細菌に接触することで感染してしまいますが、主には、ブルセラ症に感染しているメス犬が流産した胎子や、排泄物、糞尿などから経口感染します。またこれらの排泄物が、タオルなどに付着してしまうことで、未感染の犬が口にしてしまうことでも感染が成立します。

こうしたため、ブルセラ症が見つかった場合には、それ以上の蔓延を防ぐために、獣医師が迅速に届け出する必要があるのです。多頭飼育している場合には、注意が必要になるでしょう。

ブルセラ症の治療

ブルセラ症に感染してしまった場合には、抗生物質の投与による治療が行われ、約2週間〜1ヶ月の期間を要することでしょう。しかし、一度感染してしまうと完治は見込めず、再発する恐れもあります。
それ以上の蔓延を防ぐためにも、避妊・去勢といった処置が必要になるとともに、多頭飼育されている場合には、未感染犬と部屋を分けて治療を行う必要があり、注意が必要になります。

また、飼い主も感染する恐れがあるため、ゴム手袋等を履いて掃除をしたり、観戦犬が排泄物によって汚したクッションなどがある場合には、破棄したほうが安全と思われます。感染が確認された場合には、部屋をくまなく掃除するようにし、清潔な環境を保つようにしましょう。

ブルセラ症を予防するために

残念ながらブルセラ症に対するワクチンは存在しません。万が一、飼っている犬が妊娠しており、流産してしまった場合には、念のため動物病院に行って検査を受けるようにしましょう。また、汚してしまった物の掃除も必ず行いましょう。

ブルセラ症に感染するルートは定かではありませんが、海外からもペットが輸入されてきている現代では、いつ感染してもおかしくはありません。多頭飼育をされている場合には、飼育環境は常に清潔に保つようにしましょう。

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